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雪だるま / rchkym

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雪だるま / rchkym

1 - 雪だるま / rchkym

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2024年08月03日

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onkn / rchkym

ずっとkymさん出したかった…

案があまり思いつかずで。

昨夜自分の唇が切れたのをいいことに思いつきました。

嫌な事があっても物語に落とせるのなら嫌なことを受け止めてみるのもありですね。

夏にリップクリーム塗る羽目になると思わなかった。

クソ平和。ほのぼの。冬設定。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「っ…、てえ…」

最悪…唇が切れた。

寒いし、乾燥するし冬っていいことないな、早く終わってほしい…

リップクリーム塗っとこ。

キスする予定なんてないけど。


自虐しながら鞄を漁り、リップクリームを手に取った。


「いてー…」

出血はしてないものの、やっぱり痛い。


「早く暖かくならないかな…」

ぼーっとしていると後ろの方から声がした。


「キャメさん、それリップクリーム?」

「ん、そうだよ」

「あ、いいなあ。借りてもいい?」

「いい…、ん!?」


いいよ。そう言いかけた時。

顎を掴まれて、軽く引っ張られた。

そのまま唇を重ねられて。


「ん、ありがと!」

「え…、え、は、はい…」

離れた後、礼を言いながら彼は部屋に戻った。


顔が赤くなった俺を置いて。


「…ええ、?」

リップクリームってそうやって借りるものだっけ。


普通容器ごと渡さない?

考えても顔が赤くなっていくだけだから、

自分で彼の中と俺の中では常識が違うと言い聞かせた。



「キャメさーん!!」

「んー?」

「寒いー!!来て!毛布!!」

「はいはい…」


単語のみが並べられた会話を聞き取る。

寒い、来て、毛布。


これだけでも伝わる日本語って凄いな、と感心しつつ毛布を近くまで持って行った。


「はい、持ってきたよ」

「ありがとー!」

にこにことした笑顔で受け取った。


「…ん?、え?」

その笑顔のまま、毛布を俺の首にまわした。


「ん?どしたの?」

「え、寒いんじゃないの?」

「寒いよ?」

「…ええ、?」


寒いと言うのに俺に毛布かけられても。


何か企んでるのかと疑う。

そこまで馬鹿じゃないだろうし…


「よっ…、」

「え?」

俺に毛布をかけた後。俺の足の間に小さく入って、毛布の端を持っている。


まあ簡単に言うと、二人でくるまった状態になった。


「あったけー…生き返る…」

「え、あ…、」

「キャメさんまだ寒い?」


小学生がよく授業中悪戯する時みたいに、首を後ろに反らせて見てくる。


顔が赤くなった俺を寒いからだと勘違いしたのだろうか…違うよ…


「ん、いや…」

「あ!」

何か思いついたように表情を変えて、首を戻して軽く立ち上がった。


「ん?」

どこか行くのかと思ったら向きを変えて向かい合わせになって。


「うわ…っ、ちょ、」

思い切り抱きつかれた。


「どう?暖かいでしょ?」

「え、っ…そうだね、」


そんな自信満々に言われても。

上目遣いで俺を見上げてくる。心臓がえぐられそうだった。


「…、うにゃ…」

軽く頭を撫でると、猫みたいななんとも言えない声が出て、眠たそうにした。


…ほんとに猫だった?


「眠い?寝ていいよ」

「…、」


声をかける頃には寝ていた。さすが最年少と言うだけある。子供を任されているような気分になった。



一応恋人なんだけどな。






「ただい…ま…?」

家に帰って、リビングに行くと、ソファで爆睡していた。


疲れてたのか、鞄などがそこら辺に投げ出されていた。

別にそれはいいんだけど。


何かかけて寝ていると思えば、俺のコートだった。


「ん…、おかえり、キャメさん」

「あ…えと、ただいま…」

起きたと思えばコートを抱きながらこちらを見ている。


「ん…?どうしたの?」

「…、」

表情でコートは返さないと訴えられる。


「ああ…、別に返さなくていいよ」

急にぱあっと顔が明るくなった。

嬉しそうで何より。


いや本人ここにいるんだけどね。


私物を片付けようとリビングを出る。



「っ、うお、っ…」

後ろから彼が飛びついてきた。


「…、?どうしたの?」

「ふふ、おかえりキャメさん」

はいコートと、丁寧に返された。


「え、うん、ありがと…」

寂しかったから構ってとぐずる彼を死ぬほど甘やかした。


犬か猫か人かなんなのか怪しくなった。





「キャメさん!!雪!!雪降ってる!」

「おー、珍しいね」

都会では雪が珍しいからか、彼の目がキラキラとしている。


「外行こ!外!!雪だるま!!」

「はいはい、手袋」

ありがとう!と大声で受け取り玄関まで走っていった。


その楽しそうな背中をゆっくりと歩いて追いかけた。




「みてー!!」

「ん?」

雪が降ってやけにテンションが高い。

いずれ雪玉でも投げられそうだ。


「俺とキャメさん!」

「おお、上手」

見るとそこには雪だるまが二個並んでいた。


「…キャメさんのだけ潰そうかな」

「怖いよ…」


嘘だよ、と笑った。

怖すぎる嘘だ。




「キャメさん、」

ん?と言い返そうとしたけど声が出なかった。


「うぐっ…!?」

「へへ、引っかかったー!」

予想的中。振り向いた途端、雪玉を投げられた。


「冷たあ…」

ちらっと彼を見ると悪い顔でもう一発玉を投げられた。


きっと遊んで欲しいのだろう。

構ってあげることにした。




「ぜー…っ、はあ…」

「体力ないなあ…」

お互いに投げあって互いに凄く濡れた。


「いや…りぃちょ君だって息切れしてるじゃん…」

「へへ…」

「戻ろっか…」

「キャメさんー…抱っこー…」

「はいはい…」


疲れた果てた彼を抱いて、家まで戻った。





「ふー、結構濡れたね…」

「そりゃそうだよ、雪に突っ込むから…」

「へへ、楽しかったなあ…」


愉快な音が家に響く。


「あ、お風呂湧いたよ。入っておいで」

「ん、」

「ん?」

風呂に入るよう促すと手を差し出された。


「キャメさんも濡れたでしょ、一緒に入ろ?」

「えっ…あ、はい…」

ぐいぐいと手を引かれ、風呂に誘導された。



「ふー、温まったー!」

「そうだね…」


湯船の中でも水鉄砲やらシャボン玉やら色々遊んでいた。

もしかしたらまだ頭の中は小学生なのかもしれない。


彼を見るとドライヤーやら色々持ってバタバタしていた。





窓の外は白く、キラキラとしていた。

そして、二個。顔もない雪だるまが、

並んでいた。

冬は寒いし、乾燥するし。いいことはあまりないけれど。




まだ終わって欲しくない。










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