『ねぇ、どいて。邪魔。』
そう言い、俺が居たところを消毒する臣くん。
(……ちょっと、、恋人の扱い酷ない??、、)
-——-キリトリ線——–
俺は臣くんのことが好きや。 やから、サムとかにも相談しながら頑張って勇気だして告白してん。
気持ち悪がられながら振られるやろなって、思とってんけど、返事は『別にいいよ。』やった。
今思ったら上から目線な返事やなって思うかもしれんけど、そんときはホンマ嬉しくて、、、
臣くんの部屋行く時も消毒とかしっかりして、臣くんが嫌な気持ちにならんようにずっと心がけとったし、臣くんがちょっとキツい言葉を言ってきても、関西人のノリでヘラヘラしとったらそこまで傷つかんかったし、俺が恋人やのに俺だけにあたり強かったりしても、牛島君や、古森君の話だと楽しそうに話し出したりする時も、付き合って3ヶ月ぐらいたっとるけど、キスとか、それ以上とか、なんなら臣くんの口から”好き”って言葉を聞いた事なくても、俺は毎日好き好き言うとるし……………
侑 『はは、 なんやこれ。 付き合っとるって思っとるのは俺だけやったんかな?、何で臣くん告白OKしたんやろ。 』
(あぁ、ちょっと、疲れたな__)
何より素の自分ではなく、
自分を作っているんだ。
そんなことを思い始めたころだった。
いつものように臣くんの部屋に行くと、最初に述べたように除菌されたのだ。
俺は思い切って聞いてみた。
『 なぁ、臣くん、 何で俺と付き合ってくれたん~? 』
いつものように明るく問いかけたつもりだった。
しかし、声は小さく、少し寂しそうな、か細い声しか出なかった。
そんな俺に臣くんは、
『別に、断る理由無かったし。 』
それだけだった。
俺の中の何かが切れた気がした。
俺を呼び止める声は無視して、
臣くんの部屋を飛び出した。
(そぉなんや。そんな理由やったんや。別に臣くん俺のこと好きやなかったってことなん? もう臣くんなんか知らん……っ)
——–キリトリ線——–
だいぶ走っただろう。
運良く、外は土砂降りの雨で
今顔をつたっているのは
雨なのか、それとも涙なのか分からなくなっていた。
けれどこれ以上外にいたら、風邪をひいてしまい、チームの皆に迷惑をかけてしまう。 そう思った俺は寮に戻ろう、と何度も思ったが足が向かなかった。寮への道を振りかえって見ても、誰かが追ってくる気配もない。自分が全否定されているような気持ちになった。、その時だ。
目の前が急激に明るくなった。
『 あっ……』
気づいた時にはもう遅い。
自分の近くに雷が落ちたのだ。___
俺は昔から雷が苦手だった。
そんな時いつも隣には治が居て、俺の頭を優しく撫でて落ち着かせてくれていた。でも今は居ない。俺はその場にしゃがみこんでしまった。
『うっ……、 怖い 。 誰か…助けて……
サム,!…………』
そんな時に思い出したのだ。
1週間前から、治が東京におにぎり宮の店を出したことを、、、
___________________
ガラガラ
治 『あ、すんませーん。もう閉店なんですわ……………え、?、つむ?』
侑 『…………さむぅ…(泣)』
治 『…とりあえず入り。話は後で聞くわ。外大雨やろ。さっき雷も鳴っとらんかったか? 、そん時は?どないしたん?1人やったん? 、大丈夫か??__
俺の一番の理解者である治。なんなら、自分より俺の事を知ってくれている治。そんな治に俺はいつも甘えてしまう。。こういう時に面倒見がいいのも昔から変わらない。
ツム、もうちょっとで試合も近いんちゃうん?風邪ひいてもたらアカンやん。 風呂、俺が今から入ろ思っとって、もうできとるから、入ってき。 後で着替え持っていくから。ご飯もう食べたん? なんか作ろか?、』
来ることを分かっていたかのように、スラスラと喋り、タオルで俺の髪や服を拭いてくれた。
いやいや、治は、俺のオカンか!!、
なんてツッコミを入れたくなったのは置いといて、 『ありがとさん。』 と述べ、先にお風呂を頂いた。
久しぶりの実家に帰ってきたような気分だった。どこか安心する。
あがったらなんて言お。臣くんの事相談した時にいつもいいアドバイスをくれていた治なら、今回のこともいいアドバイスをしてくれるだろう。
『臣くん、今何しとるんやろ……』
肩までしっかりお湯につかりながらボソッと呟く。
俺の事探したりしてくれとるんかな??、
……なんて、軽く期待する。電話がかかってくるかもと思い風呂場に持ち込んだ携帯は、
使うことは無かった。
『さむ~、あがったぁ』
俺がお風呂をあがった時には、治は俺が好きなネギトロおにぎりを作ってくれていた。
”宮選手のお気に入り” とついた看板メニューで、だいぶ早い段階で完売になるおにぎりだ。
俺はさむに目線でここに座れと言われた、さむの隣に座った。
(目線で分かるって笑、やっぱり俺ら双子やなぁ笑)) なんてことを、心の中で思いながら。
『むっちゃ美味そ〜!』キラ
『当たり前やん笑 俺が作ったからな。』ドヤ
『わー、そのドヤ顔ムカつくわァ(笑)』
『はいはい笑 ごちゃこちゃ言っとらんと、はよ食べ』
『おん〜笑 』
1口おにぎりを食べた瞬間、優しい味がした。
治が前、『飯ってな、作ってる人の気持ちが分かんねん。』なんてことを言っていた。 その時は何を言っているのか意味が分からなかったが、今ならわかる気がする。
このおにぎりは、さむが俺の為に作ってくれたもの。そのおにぎりはとても優しい暖かい味がした。何よりとても安心した気分になった。
久しぶりの、愛を貰った気がして、 嬉しくて、
寮での出来事を思い出し、 俺の目からはいつの間にか大粒の涙が出ていた。
*さむはそんな俺の背中をさすって、落ち着かせてくれている。 そんなんされたら余計に涙が止まらんってことも知らずに。俺はひたすらおにぎりを口に運んでいた。
俺がずっと泣いていたからだろうか、
治が急に抱きしめてきた。
よく考えてみたら、小さい時もこうやって、俺を強く抱きしめてくれていた気がする。だから治に、いつも甘えてしまうんだ。
俺も治の背中に手を回した。
そして臣君のことを相談しようと思った瞬間、
治がボソッと呟いたのだ。
『 俺にせぇへん? 』
治
ある大雨の夜のこと。 東京に店を出して、1週間後ぐらいのことだ。 まだそんなに知られていないのか、お客さんは少なかった。まぁ、雨の日だからこんなものだろう。
だが、風呂に入ろうかと思っていたときに、店のドアが開いた。 こんな大雨の夜におにぎり屋に来る人っておるんや。 なんて思いながら、閉店したことを伝えようと、入ってきた人の顔を見ると、今まで嫌というほど見てきた俺の片割れがいた。 雨に濡れているが、侑が泣いてることはすぐに分かった。 多分その原因も。
俺は、侑をすぐ風呂に入れ、あいつが大好きなネギトロおにぎりを作って待つことにした。
多分原因は、雷。 もあると思う。 けどこんな雨の日に傘も持たず俺のところに来るのはおかしい。少なくとも風邪を引きやすい侑は、こんな大事な時期に無意味に出歩くわけが無いのだ。
きっとこっちが本命。3ヶ月前ぐらいから付き合ってる佐久草とかいうやつだろう。
『俺は付き合った時から分かっとったで。こうなるって。 つむはアホやなぁ。』
誰もいないおにぎり宮で、独り言を呟く。
心を開いた人にはとても人懐っこい態度をとる侑。そんな侑と、潔癖症の佐久草は、どうやっても合わない。それに、あんな可愛い侑を見ても冷たい態度を取れる理由が分からない。それともそんなことを思っているのは俺だけなのだろうか…?
けどまぁ、佐久草は侑の事が嫌いな訳では無いのだろうと思う。実際好きでもないやつと付き合うようなクソ野郎ではないと侑も分かってるはずだ。 それでも心配なのは、佐久草からの愛が足りへんからやと思う。ただそれだけだ。
侑が風呂からでたらなんて言ってやろ?、
きっと『佐久草君としっかり話し合い?』とか言うたら、俺の言った通りに話し合って、本音を言い合って、今よりも距離が縮まるのは間違いない。そして俺は2人から感謝されるだろう。
俺は2人の仲直りのキューピットになるっちゅうわけや。
………
そうはさせんで?w
俺はこういう時を狙っとってん。
これでつむが、俺以外と生きていく道が崩れたようなもんやん。笑
侑には俺しか居らんっていうことを分からせて、俺だけを頼って、俺だけを見て欲しい。
大丈夫やで。心配せんでも、誰よりも侑を愛せる自信があるから。
愛が足らんかったんやろ??
つむは愛したいんじゃなくて、愛されたいんやろ??
そんなことを考えていると、ネギトロおにぎりが作り終わった。 それと同時に侑がお風呂からでてきた。 (俺の服着てんのええな……)心ではそんなことを思いながら、侑を俺の隣に座らせる。
侑はおにぎりを見た瞬間目を輝かせて、美味そうといった。
そんな侑の横顔を見ながら、『当たり前やん笑 俺が作ったからな。』 なんて言ってみる。
わー、そのドヤ顔ムカつくわァ(笑)』なんていいながらも、全然嫌そうじゃない顔をしてる片割れが愛おしい。
ほんま可愛ええな………
『はいはい笑 ごちゃこちゃ言っとらんと、はよ食べ』
『おん~(笑)』
侑の食べとる時の顔が好きやった。俺は基本嫌いな食べもん無いから、”なんでも美味そうに食べんね~” ってよう言われるけど、侑は結構好き嫌いがハッキリしとる方で、ホンマに美味いもんしか美味しいって言わん奴やった。
そんな侑が美味そうと言ってくれたら、嬉しいに決まってる。
けど、佐久草の事を思い出して泣いてるのは気にくわない。
とりあえず侑を落ち着かせることが優先だと思った俺は、侑の背中を撫でてやる。
それでよけいに涙が止まらんくなるんも、わかった上で。
俺の作ったおにぎりをひたすら口に運んでいる侑から目が離せなかった。気づけば無意識に、侑を強く抱きしめて、呟いた。
『 俺にせぇへん? 』
佐久草
『はぁ、俺、何してんだ……』
侑が俺の部屋を出ていってから2時間以上たっている。 だが2時間前と変わらず除菌スプレーを左手に持ったまま布団に座っていた。
出ていった侑を追いかけることはしなかった。
何故か自分からは離れない。という自信があったから。
さっきまで賑やかだった俺の部屋は、シンと静まり返っている。まぁ、侑がずっと喋っていただけなのだが。。
数時間前、急に部屋が明るくなったかと思うと、数秒後大きな音が聞こえた。雷が近くに落ちたのだ。
侑は雷が苦手だった。
『さすがにこんな雨の中、外には出てないよな…』
そんなことを自分に言い聞かせている。
きっとそうだ。
自分の部屋に戻って、寝て、明日になればまたいつものように好き好き言ってくるんだ。きっと。
……多分
1人で自問自答を繰り返す。
(別に俺は悪くない……)
(こんなこと今日始まったことじゃないし…)
そんなことも考えた。
だが、最後に見た侑の苦しそうな、悲しそうな顔が頭にこびりついて離れない。
そういえば、侑の本当の笑顔を最近見ていないような気がする。
侑は、本当に嬉しい時や楽しいときは、無邪気な子供みたいな顔をする。俺はその顔が好きだった。勿論本人にそんな事を伝えたことは無いけど。
ほら、あの、試合してる時とか。
美味しいものを食べてる時とか。
おに宮と話してる時とか……
俺といる時はあんな顔をしていただろうか……
嫌、していない。
唯一、俺が告白を受け入れた時だけだ。
今思えば、あの時も冷たい態度をとっていたかもしれない。…なんて言ったのかも思い出せない。
侑は毎日毎日、好きと言ってくれていた。
俺は、まだ1回も言ったことがない。
キスも、それ以上も、、
したことが無い。。
ちゃんと好きなのに………
『は は 、 俺、最低だな。……宮の彼氏
失格だろ…………』
しっかり話し合おう。 そう思った。
俺の本音を全部言って、宮の本音も聞いて…
居てもたってもいられなくなった俺は、除菌スプレーをほって、
2個隣の宮の部屋の前まで来た。
しかしノックをしても出てこないどころか、
人の気配すらない。
自分の部屋に居ないってことは…
1番最悪な事態を想像する。
なぜあの時、ちゃんと好きって言わなかったんだろう。
なぜあの時、本音を言ってやれなかったんだろう。
なぜあの時、追いかけなかったんだろう……
今になって色んな後悔が溢れ出す。
でももし外に行ったのなら、
宮の行きそうな場所が分からない。。
俺は向かいの部屋の木兎……
ではなく
その隣の日向の部屋の前まで来た。
理由は2つ。。
もし宮がこの寮からでてないのであれば、いる場所は100パーセントと言っていいほど日向の所だけだ。先輩の所に行くのは勿論、木兎の所に行く事は絶対ない。
そしてもう1つは、
もし居なかった場合。
日向なら、アイツが何処に行ったのかわかりそうな気がするから。______
コンコン)
『はぁい』
『あ、悪ぃ。こんな時間に……』
『嫌!大丈夫ですよ』
とは言いながらも少し目が閉じかけている。
ホントに申し訳ない。
『あのさ、宮と、喧嘩して、
俺が悪いんだけど、謝ろうと思っても、
寮内には居なくて、日向ならアイツが行きそうなとこ、わかるかと思ったんだが…。』
侑は居なかった。 この大雨の中、雷が鳴っている中、外に出たのだ。俺のせいで。。
その状況の深刻さ が伝わったのか、日向も真剣に考えてくれた。
『うーん……』と呻き声のようなものを出しながら。
『分からないか……』と言おうとした瞬間、日向がひらめいたように口を開いた。
『あ、そういえば侑さん、1週間前に、 治さんが東京に店を出したって、言ってました!』
と、答える。
『おに宮か…』
多分それで間違いないだろう。
居場所が分かったのだ。
なのに、何故こんなに心が苦しいのか、何故足が動かないのか、
その疑問はすぐに回収された。
宮が俺のそばから離れてしまいそうで。
おに宮の所に行ってしまいそうで。
ただひたすら、 怖かったから。
『ありがとな。』
と、日向に述べ、”侑さんとの仲直り頑張ってください! “と笑顔で言ってくれる。
良い後輩を持ったもだ。
俺はすぐ寮を出ようとした。
しかし、”この大雨の中何処に行く”と偉いさんに問われ、俺の話を聞く前に”戻れ”と言われてしまった。
無視をしてでも行けばいいのに、
理由を言って分かってもらえばいいのに、
何故素直に部屋に戻ってしまうんだろう。
きっと逆ならそうする。アイツなら怒られることなんか考えず、俺を探す。なのに俺は…………!!
そう自分を責め我に返った。とりあえず話さないことには始まらない。
明日の朝イチ、おに宮に行こう。 そう決めた。______
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
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めっちゃ好き!きになる!
最高じゃん続き気になる