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成長した姿
咲希said
「どう?似合ってる?」
くるりと一回転すると ふわりとスカートが揺れ紋章のバッチが電気に反射して光る。
アタシは中学校の制服を着て、 目の前にいるお兄ちゃんそうに聞いた。
「よく似合ってるぞ!」
お兄ちゃんは、嬉しそうな笑顔を浮かべて褒めてくれた。
そん会話をしていたら部屋からとーやくんが出てきた。
ブレザー姿のとーやくんを見て前の世界のことを昔のことみたいに思い出した。
「…」
そんな中お兄ちゃんは、とーやくんの事をジッと見て何も言わないままだった。
とーやくんは、そんなお兄ちゃんを見て悲しそうな顔をした。
「もしかしてあまり似合ってなかった?」
その言葉を聞いてお兄ちゃんは、ハッとしたような顔をした。
「ああ、悪い少し考え事をしていてな
冬弥も制服よく似合っているぞ!
流石は、オレの子だ!」
お兄ちゃんは、嬉しそうに笑顔を見せる。
良かった。いつものお兄ちゃんだ。
ふと時計を見ると後20分までに学校へ行く時間だった。
「つかさくん!アタシ達、もう行くね!」
アタシ達は、急足で玄関に向かう。
「気をつけて行くんだぞ!」
後ろからお兄ちゃんが声をかける。
「「は〜い/はい」」
アタシ達は、返事をしてすぐに家を出た。
学校は歩いて行ける距離だけど、このまま歩きで学校に行けば絶対に間に合わないと思って アタシ達は、小走りで学校に向かった。
「ギリギリ間に合った〜」
アタシが息を整えていると隣でとーやくんが辺りを見渡していた。
「あっちにクラス表が貼られていますね 」
どうやらとーやくんは、クラス表を探していたみたいだった。
アタシは、とーやくんが指を刺している方向を見た。
そこには、「入学おめでとう」と生徒用玄関に切り取られた画用紙と何枚か紙が貼られていた。
「見にいきましょう」
「そうだね」
アタシは、とーやくんと生徒用玄関の方に向かった。
「1クラス30人ほどいるんですね」
「思ってたよりも多いんだね
クラスもD組まであるみたいだし」
「そうですね」
そんな話をしながらアタシ達は、クラス表をじっくりと見つめた。
だけどなかなか自分の名前を見つけられない。
「咲希さんいましたよ」
紙に顔を物凄く近づけて探していたらとーやくんが先にアタシを見つけてくれた。
「ほんとだ! ありがとうとーやくん!
アタシのクラスは…1年B組!
とーやくんのは…あった!」
「どこですか?」
とーやくんに聞かれアタシは、クラス表の真ん中あたりを指さした。
「俺は、1年D組ですね。」
「ちょっと遠いね…」
「そうですね」
アタシ達が会話をしていると急に後ろから聞き覚えのある声がした。
振り返ってみるとやっぱりアタシの知ってる人がいた。
…朝日奈先輩
「あと5分でチャイムなっちゃうから早めに教室に行ったほうがいいよ。」
優しい笑顔で教えてくれる姿が前の世界と同じだった。
アタシが何も言えずにいるととーやくんが先に声を出してくれた。
「…もうそんな時間ですか。
咲希さん、教室へ向かいましょう
…咲希さん?」
「え〜と…先生のお名前教えてもらっても良いですか?」
びっくりして急すぎる質問をしちゃった…
内心すごく焦っていると朝日奈先輩は、優しく微笑んだ。
「私は、朝日奈まふゆ
今年から赴任してきて2年生の担任なんだ。
よろしくね」
やっぱり朝日奈先輩だ…
アタシは、また嬉しい気持ちと寂しい気持ちが入り混じったような気がした。
「はい、よろしくお願いします。」
朝日奈先輩に別れの挨拶をしてアタシ達は、教室へ向かった。
冬弥said
「とーやくん、またあとでね」
咲希さんは、そう言って手を振った。
俺も咲希さんの方を向き手を振り返した。
まあ兄妹だし離されて当然なのだろうな
そんな事を考えながら俺は、自分のクラスへ向かった。
クラスの前につき、ドアを開けると賑やかな話し声が聞こえてきた。
教室内のほとんどは小学校時代からの知人だが、何人かは知らない顔もあった。
俺は、自分の席を確認しようと黒板の前に向かった。
「俺の席は、真ん中の列の一番前か」
席に着くと左隣は、小学校時代からの友人だった。
「俺、冬弥と席隣でよかったってめっちゃ思ってるんだよ!」
「中学生になったのだから宿題くらいは自分の力でやったほうが良いと思うがな」
そう言い返すと彼、 赤松 夏樹《あかまつ なつき》は、嫌そうな顔をした。
「え〜!
せっかく隣の席になったんだし一緒に宿題やろうぜ〜!」
赤松が口を3のようにしながらブーイングをしていると教室に先生が入ってきた。
「もうすぐ入学式が始まりますから静かに待っててくださいね」
メガネをかけた男の先生がクラスの全員に声をかけると その一言でクラスは、静かになった。
そしてクラスの全員は、移動の合図であるチャイムが鳴るのを待った。
入学式が終わり、各々が帰る支度をしていた。
俺もなるべく早めに帰る支度を済ませ、B組へと向かった。
俺を見つけたのか咲希さんは、友達と手を振り合って俺の元へと駆け寄った。
「とーやくん、お待たせ!」
「いえ、俺も先ほど来たばかりなので」
「そっか。 じゃあ行こっか!」
俺と咲希さんは、そのまま玄関の方へと向かった。
外に出て 少し歩いていると校門の近くで声をかけられた。
振り向くと黒髪のカツラを被った司先輩が俺たちにだけ分かるように帽子を取った。
「つかさくん!」
咲希さんは、嬉しそうに司先輩の元へと向い 俺も咲希さんの後を追うように司先輩の元へ駆け寄った。
「またお前達と一緒に歩いて家に帰りたいと思って、 ここで待っていたんだ」
司先輩は、いつにも増して嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
しかしよくよく司先輩の事を見てみると、目元が赤くなっていた。
「司君、目元が赤い…
すぐに冷やさないと…!」
俺が慌てた様子でそう言うと司先輩は、俺を宥めながら少し恥ずかしそうな表情になった。
「実は、お前達の成長に感動して…
入学式の間ずっと泣いてしまってな。」
司先輩にそう言われ、とても嬉しくなった。
幸福感が俺を満たしていくのが分かった。
「ねぇ、アタシつかさくんに新しい友だちの話したいんだ!
だから早く家に行こう!」
咲希さんは、司先輩を早く帰らせるようにと誘導した。
司先輩もそれを快く受け入れた。
「ああ、2人とも今日はオレに学校の事を沢山話してくれ!」
そして俺たちは、司先輩に学校での話をしながら家へと歩き出した。