テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
鷹槻れん

18,004
鷹槻れん

34,728
#恋愛
水無月 京
1,300
#オフィスラブ
草原草原

1,286
「バーカ。お前、言っとくけどな。うちの会社にいるならこれくらい常識だからな。知らねーと恥かくのお前だから。教えてやる俺に感謝しろよ」
「分かってますよ。冗談です」
分かってる。
桶川さんは社長からも一目置かれるくらいの実力者。
その彼に、教えを請えることがなんて贅沢なことかも。
だけど、そんなハイスペックなイケメンから優しくしてもらうと、勘違いしちゃうんだよ。
好かれてるのかもしれないなんて、馬鹿なことを考えてしまう自分がどうしようもなく恥ずかしくて、茶化さないとやってられないっての。
イケメンは豆狸な私など相手にするはずない。だから桶川さんも遊んでいるだけ。
彼は……私とは違うところに住んでるような人だもん。
「感謝はしてます。でもお礼はもうちょっといい資料になってから言います」
「は……?」
宇宙人でも見るような視線が上から注がれる。やめて、その視線だけで小さくなりそう。
「なんで今言わねぇんだよ」
「だってっ。真の成果はまだ出せてないなって思うし」
「は、ははっ。お前ってちいせぇくせに負けん気強いな」
全開で笑うのも勘弁してよ。
イケメンは私なんて相手にしないと思えばこそ、私も思う存分観賞して楽しめるのに。
そんな風に笑われたら、手が届くと思ってしまう。
届くはずなんかないのに。並んで歩いたって絶対に恋人になんてみられるはずないくらい、あなたと私には雲泥の差があるのに。
「……明日の午前中までにこの資料完璧に仕上げて、午後には大崎さんにも説明します。絶対桶川さんを唸らせてやるから、見ててくださいね!」
勘違いして浮かれるなんてみじめだ。
だから顔を引き締めて、彼の指導に対する恩はパーフェクトな仕事で返そう。
それが、チビで可愛くもない私の、精一杯のプライド。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第19話、読み終えたよ……。 「好かれてるのかもしれないなんて馬鹿なことを考えてしまう」 この一文に全部詰まってたなって思う。 自分を過小評価しつつ、それでも期待してしまう揺れ動きがリアルすぎて、胸がぎゅってなった。 桶川さんに笑われて「手が届くと思ってしまう」とこ、めちゃくちゃ分かる。 届かないって分かってるからこそ、強がっておちょくって距離を保とうとする感じ……すごく切なくて好き。 でも最後の「パーフェクトな仕事で返す」ってプライド、かっこよかったよ。 この拗らせ感、ちゃんと見届けたいな🌙