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※実際の団体、個人とは無関係です。
※ボイドラ時空でお送りします。
※成人向けに準ずる表現があります。ご注意ください。
※その他捏造した設定が多く含まれます。
アキラは事務所の机で寝てしまっていたらしい。
起きると辺りは真っ暗で、手探りで照明のスイッチを探す羽目になってしまった。
「うぅ~、さすがにこの時間に暖房無しは寒いなぁ…」
昼間は節電として暖房を使わずにいたが、日が落ちると気温も一気に下がり、部屋はかなり寒い。
冷たくなりそうな指先でどうにか部屋の明かりとエアコンの電源を入れると来客用のソファーに誰かうずくまっていた。
一瞬、セラフかと思ったが彼が電気もつけずに寝入るはずはない。それに彼にしては一回りくらい小さい。
「…?」
おそるおそるアキラがその顔を覗き込むと、奏斗だった。
―― が、様子がおかしい。
寒いのか苦しいのか、腹を抱えるようにしてうずくまっている。
幸い血の類は見えないので怪我はしていないだろう。
「奏斗、大丈夫ですか?とりあえず毛布持ってきますから。」
そう言いながら肩にそっと触れると奏斗は驚いてしまったようで、ビクリとして飛び起きた。
「ちょっと、そんな勢いよく起きて大丈夫なんですか!?」
「…ア、キラ……」
アキラを見て、そして目を瞬かせたかと思うと、 顔を苦しげに歪ませて、 またソファーへうずくまってしまった。
「うぅ…っ」
「えっ、本当に大丈夫ですか?」
アキラが近寄るとなんとか起き上がろうと肘掛けを必死に掴んでいた。
その額には脂汗が滲んで、顔色も真っ白だ。
「無理しないの、そこで寝てて…」
背をさすってやってから毛布を取りに事務机に戻るアキラ。自分の膝掛けと昼寝する用の毛布を引っ掴んでソファーへ引き返した。
その間も奏斗は体を震わせて耐えるようにうずくまって呻いていた。
「ほら、奏斗。これ掛けてなさい。今暖房もつけたしすぐ温まると思うから。…電気毛布もいります?」
普段見ることがない弱った様子の奏斗に心配から多くを聞いてしまうアキラ。
だが、全てに答えられず奏斗はただ首を横へ振った。
ソファーの肘掛けに顎を載せて、アキラは少しでも苦しいのが和らいでくれればと思い、奏斗の背を撫でた。
病院という手も考えたが彼の性分では決して首を縦には振らないだろう。
―
―
しばらくそうしていると向かいのドアが開いてのんびりとした声と共にセラフが帰ってきた。
「たでいま〜。……あれ、どうしたの?その塊は」
「奏斗ですよ。私が起きたらもう苦しそうにうずくまってて… 」
アキラの話を聞いたセラフも心配になったのか、眉尻が下がる。
そして持っていたビニール袋から温かい紅茶を取り出して奏斗へ差し出した。
「温かいの、飲める? 」
奏斗はちらっと一瞬だけセラフと紅茶を見たが受け取れずに首を横へ振った。
「……だめかぁ。どうしちゃったの、奏斗ぉ…」
セラフは心配の色をいっそう濃く顔に浮かべて、向かい側のソファーへと腰を下ろした。
ソファーの上で小さくうずくまっている姿はいつもの悠々たる奏斗とは思えないだろう。
アキラが奏斗の背を撫で続け、セラフはそれを心配そうに見ながらも仕事の合間の食事をしている異様な光景がそこにはあった。
「……ひばり、…」
「え?」
ふと、奏斗が小さな声でその場にいない人間の名を口にした。
それを聞き逃すまいとアキラとセラフは身を乗り出す。
「たらいがどうかしました?」
「…ひばりの、せいで……腹、痛いの……」
目を丸くする2人を置き去りにして奏斗はゆっくりと体を起こし、セラフとアキラ、それぞれに醜態を晒したことをまず詫びた。
それからだいぶ痛みが引いたと笑顔を見せてくれた。
「なんで雲雀のせいでお腹痛いの?腹殴られでもした?」
とても純粋な疑問をセラフは奏斗へ投げかけた。だが、奏斗は生気のなかった頬を赤らめてうつむいてしまった。
「まさか、雲雀と何かあったんじゃ……」
毛布ですっかり顔を隠してしまった奏斗。
アキラの場所からはくすんだ金髪と毛布の合間からは赤く染まった耳が覗けた。
が、すぐに青の目をかち合い、手招きされる。
「アキラ、耳貸して…」
奏斗が何か一言二言言うと、アキラは目を見張って奏斗を見返した。
「ばっ…か!!!お前、もう、そういうことは!先に言え!!」
さっきと打って変わって奏斗への扱いが雑になったアキラをセラフは驚きの目で見る。そして、何を聞いたのかも同時に気になってしまった。
その後もずっと二人に聞くが、明確な答えがセラフに返ってくることはなかった。
「え、なに、俺にも教えてよ〜」
「聞かないほうがいいです!!まったくもう!」
「ねぇ、奏斗ぉ〜」
「……。」