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しばらくして、俯いて泣くのを辞めるまで、乱歩さんはそばにいてくれた。
敦「ごめんなさい、乱歩さん。本当に。こんなに泣いていたら太宰さんに怒られちゃいますね」
僕の貼り付けた笑顔は、とても不格好で情けないだろう。それでも乱歩さんはその事をなにも言わないでくれた。
敦「じゃあ僕、少し外にいますね」
そう言って扉に手をかけた時だった。
後ろから乱歩さんに呼び止められる。
乱「まって、敦、太宰は、…、太宰は、君のことが好きだったんだよ」
突然告げられた言葉に驚く。
敦「やだなぁ、乱歩さんに言われると、信じちゃうじゃないですか。」
いいんです。もう、乱歩さんはなんでもお見通しだから、きっと僕の恋心にも気づいていたんだ。
敦「乱歩さんが言ったら信じてしまう。もういいんですよ。もう、いいんです。」
それじゃあ、とそう言って外に出た。
蒸し暑い風に当てられて、涙で冷えた頬がほんのり温まった。
もう、あの夜桜を太宰さんと2人では見れない。
蝉の声が過ぎた春を嘆くように鳴いていた。綺麗な桜の花びらと一緒に揺れるあの癖のある髪の毛は、もう見れない。
夏があの春を塗り替えていく。