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アオハル

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アオハル

3 - 一章 第3話

♥

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2024年06月07日

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水曜日

「これ、返す。」

水曜日の放課後。今日は委員会の日だ。

俺は、この間借りた「きりこについて」を橘に差し出した。

「ああ…はい。」

3秒の、沈黙の後。

「面白かった、ですか?」

「面白かった。特に最後のとこ」

そう言うと、橘の目が見開かれた。顔が少し赤くなった。

「僕も、そこ好きです。きりこが大事なことに気づくシーンですよね。そこで、文のテンポが良くなってく感じとか、その後のラムレス二世の語りとか」

そこまで語って、ぴたりと話すのをやめる。

「あ、ごめんなさい…長々と喋って…」

「いや、良いよ別に。むしろ面白いし。橘って、そんな喋れたのな」

そう言うと、橘は笑って

「そうですか?ありがとうございます」といった。

可愛い…いやいや、まて、またか。おい俺!そんな、でも、確かに、可愛い。

照れ隠しをするかのように、俺は喋る。

「なあ、これのちせってさ、AV女優じゃん?お前そうゆーのわかんの?」

橘の顔が、かぁぁぁっと赤くなる。そして、ふっとそっぽを向いてしまった。向こうを向いていても、耳の赤さでかなり照れているのがわかる。

「わかりますけど…けど…」

からかったろ。ガキの頃の魂が蘇る。

「ふーん、じゃあ、どー言う意味?」

そして、俺は橘を体ごとこっちに向かせる。

「こっち向いて、説明してみ?」

橘は、赤くて、驚いたような顔をしていた。

「えっと…えっと…」顔だけぷいと別の方向を見ようとしている。

そこで俺は、顔を両手で軽く挟んでこっちに向かせた。顔が熱いのが、手に伝わってくる。

「セックスを、する、女優さんです…」

目線を、下にしながら、言葉を発する。

うぶってこいつのことを言うんだと思う。最近習ったけど、意味はよくわからん。だけど、多分使い方は合ってる。

「かわいい。」気づけば、この言葉が出てきた。

赤い頬。これ以上赤くなれないのだろう。その分、手にどくどくと脈の音が伝わってくる。

きーんこーんかーんこーん

その時、なんだか間抜けに聞こえるチャイムが鳴った。

「僕、この後、用事あるので」

橘は、逃げるように去ってしまった。

そして、さっきの俺の行動を思い出す。

頬が熱い…

俺も帰ろうかと思ったが、また会うかもしれないと思ってやめた。

5分後に、俺は図書室を出た。

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