テラーノベル
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とある朝……
すちはまだ半分眠ったまま、布団の中で身じろぎをする。
「……ん?」
胸元で、かすかな温もりが動いた気がした。
視線を落とすと、そこにいたのは――
「……小鳥?」
手のひらにすっぽり収まるほどの、ふわふわの小さな小鳥。
淡い色の羽毛に、つぶらな瞳。
そして、その小鳥はすちを見上げるなり、
「ぴぃ、ぴぃ」
と、嬉しそうに鳴いた。
「……みこと?」
名前を呼ぶと、小鳥は「ぴっ」と短く鳴いて、ぴょん、と胸元を跳ねる。
その仕草があまりにも見覚えがあって、すちは思わず笑ってしまった。
「やっぱり、みことだよね」
小鳥のみことは、安心したように羽をふるわせ、すちの指先にすりっと頭を擦りつけてくる。
その仕草があまりに甘えん坊で、すちの胸がじんわり温かくなった。
「可愛すぎでしょ……」
指でそっと背中を撫でると、羽毛は信じられないほど柔らかい。
さらさら、ふわふわ。
「ぴぃ……」
撫でられるたびに、みことは とろけたような声を出して、目を細める。
それが可愛くて、すちはつい何度も撫でてしまう。
頭、背中、ちいさな胸元。
みことはそのたびに、ぴぃ、ぴっと返事をするように鳴いて、ぴょんっと跳ねて喜んだ。
「はいはい、そんなに動いたら危ないよ」
そう言いながら、すちは小さな器に餌を用意する。
差し出すと、みことは一生懸命くちばしでついばみ、
「ぴっ、ぴぃ」
と、満足そうに鳴く。
水を替えてあげると、羽をちょんちょんと濡らしてはしゃぐ。
その様子が愛おしすぎて、すちは何度も「可愛い……」と呟いてしまった。
気づけば、みことはすちの肩や胸元がお気に入りの場所になっていた。
撫でられると、必ずそこに戻ってきて、安心したように丸くなる。
「……鳥吸い、してもいい?」
もちろん返事は言葉じゃない。
でも、みことは「ぴぃ」と鳴いて、さらに近づいてきた。
すちは小鳥をそっと両手で包み、顔を寄せる。
ふわっと、羽毛の匂い。
温かくて、やさしくて、どこか懐かしい。
「……落ち着く」
そのまま、すちは小鳥のみことを胸に抱いたまま、ゆっくりと眠りに落ちていった。
「……ん」
次に目を覚ましたとき、胸元の感触は少し違っていた。
ふわふわだけど、羽毛じゃない。
すちは無意識のまま、顔を寄せる。
すぅ、と吸い込んだのは、柔らかな髪の匂い。
「……あ」
目を開けると、そこには小鳥ではなく、眠っているみことがいた。
すちの腕の中で、穏やかな寝息を立てている。
すちは、自分がみことの頭に顔を埋めて、髪吸いをしていることに気づいて、思わず苦笑した。
「……夢、だったんだ」
でも、胸の奥は不思議と温かいままだった。
さっきまでの、ぴぃぴぃと鳴く小鳥の感触が、まだ残っている気がする。
すちは起こさないように、もう一度だけ、そっとみことの頭を撫でる。
「……どんな姿でも、可愛いよ」
その言葉を聞いているかのように、みことが小さく身動ぎして、すちの服を掴んだ。
すちはそのまま、再び目を閉じる。
夢の余韻を抱いたまま、静かな朝の中で、もう少しだけ一緒に眠るのだった。
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