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「あら、神さま! パートナーがみつかったのですか!?」
受付嬢は、巨大ヒマワリのような笑顔で、少年と千代里を迎え入れる。
千代里の横にいる少年の姿を確認した受付嬢は、どこか嬉しそうだ。
「え? キミは神さまなの?」
少年の問いかけに、千代里が黙ってうなずく。
そんなバカな……。
まさかと思いながら、少年が受付嬢を見やると、全力で首を縦に振っている。
「証明する。口を動かさないでおはなしできる……」
自信があるらしい。
千代里は得意気な表情だ。
「もしかして、直接心に訴えかけてくるテレパシー的なやつ?」
期待値の上がった様子の少年が千代里に視線を当てるも、自称神さまは無言。
神技は、すでに始まっていたようだ。
なぜか苦笑いをしている受付嬢。
少年もまた同様の顔をしている。
「試しに神様の自己紹介をしてみてよ」
少年の言葉に、千代里は無言でコクリとうなずく。
千代里が眠そうな目を少年に向ける。
「アナタのなまえ、『畑田耕司』。16歳。高校2年生のドーテー男子」
口を全力で動かしたかと思えば、千代里が少年にむけて爆弾を放り投げた。
「なんで僕の名前を知ってるの?」
「神さま。こってり野菜ジュースくれたドーテー男子。何でも知ってる」
千代里の発言に、受付嬢は赤らめた顔を後ろに向ける。
やがて肩を大きく揺らし始めた。
「野菜ジュースなんてあげた覚えはないな……。そんなことより、お姉さんにメッチャ笑われてるんだけど……。あのね、キミの自己紹介をして欲しいんだよね」
「なまえは千代里。ちよがみ・ちりがみ・ハシビロコウ。ドーテー。すきに呼んでいい」
「無難な“ちより”にしておくよ」
あれ?
受付のお姉さんが目を合わせてくれないんですけど……。
「で、では……決定戦の説明をしますね」
受付嬢のひと声で、微妙な空気が一変する。
「予選はゆるいですが、決勝は厳しいです」
笑顔だった受付嬢の表情が険しくなる。
肝心の千代里は遠くを見つめ、出場できることに喜びを噛みしめている様子。
受付嬢の話しは上の空だ。
「大事なお話しなので、シッカリ聞いてくださいね。言うこと聞かないと、このアホ毛を引きちぎりますよ?」
受付嬢は、たゆたう千代里のアホ毛を力いっぱい鷲づかむ。
その光景は雑草を引っこ抜く鬼のごとし。
目が笑っていない受付嬢の笑顔は、かなり怖い。
あまりの迫力に、千代里は「あう」と一言だけ発した。
「このアホ毛、まだ出てくるんですか……」
とめどなく出てくる艶やかなアホ毛を手で巻き取りながら、受付嬢は強めの口調で続ける。
「もう一度いいます。予選はゆるいですが、決勝は厳しいです」
「勝ち抜くのが大変ってことですよね?」
名だたる猛者が全世界から集まる決勝大会だ。
やすやすと突破できないことは、耕司でも分かっているつもりだった。
「決勝では死人がでるかもしれません。競技は、まだ公表されていませんが、厳しい戦いになると思います」
え?
ひとことだけ発すると、耕司は石像と化した。
一方、千代里の表情は変わらない。
「死人が出るというのは冗談です。なんにせよ、神さまたちの力の根源は、信者の信仰心です。神さま。大会までに、ひとりでも多くの信者を獲得してくださいね」
決勝は、予選とは別の競技になるかもしれないとのこと。
ひとつ言えるのは、地方大会(予選)を勝ち抜いた七柱の女神でチームを作り、全国の猛者たちと激しいバトルが繰り広げられるということだ。
私有地で運転するから、免許は要らないよな。
何はともあれ、トラクターを借りないと……。
信者の獲得って、どうすれば?
すでに、耕司は競技のことで頭がいっぱいだった。
受付嬢からの追加説明を、耕司は話半分に聞いていた。
「決勝会場は、神奈川県横浜市にある『横浜国際総合競技場』です。通称:日産スタジアム。決定戦全国大会の期間中(3日間)に限り、『オッサンスタジアム』と呼称を変えるんですよ!」
「ねえ、千代里。聞いた? オッサンスタジアムだって」
受付嬢の『オッサン』発言で、我に返った耕司が千代里を見やる。
「ふんす!」
当の千代里は、大会に出場できることに喜びをかみしめているようだ。
アホ毛が楽しそうに揺れているのが証拠だ。
相変わらず、表情は変わらないが……。
「なにか分からないことはありますか?」
受付嬢からの問いかけに、耕司の頭に疑問が湧き上がる。
「なんで、競技が『女スト』なんですか?」
「いい質問ですね。テキトーです!」
受付嬢が、全開の笑顔で言い切った。
耕司は愛想笑いでしか返答できなかった……。
その他、受付嬢から大会の注意事項などの説明を受けた耕司と千代里。
正式な申し込みを済ませた2人は、1週間後に迫る予選の準備に取り掛かるのだった。