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私はまり。
ごく普通の女性として、ごく普通に働いて暮らしてる。
そんな私には同僚にも言えない秘密があった。
なんと彼氏が一緒に住んでいるのです。
と言っても内緒にするつもりは無かったのに彼が秘密、と言ったので、秘密の彼氏。
見た目はすごく綺麗。
白髪に毛先が赤く染まってて、目の縁なんかも赤く艶っぽい。服装もなんて言うか和洋折衷って言うのかな、とにかくゲームとかの言葉を借りると妖艶な見た目の彼だ。
私は本当に普通…。瞳が紫がかってるくらいかな。
コンプレックスなのは体型。胸が少しだけ大きいから恥ずかしい。童顔の私には不釣り合い。
さて、彼と私の紹介はこの位にして朝の支度をしなくちゃ。仕事にも行かなくちゃね。
「おはよう、まり」
柔らかい声がキッチンから聞こえてきた。
彼が日課の朝食を作ってくれてる。
「おはよー、触手さん」
触手さんは、彼の名前。少し変わってる。
触手さんを見てると離れがたくて仕事に行きたくなくなっちゃう。
でもサボったりとかしたら叱られそうだから行くのだけれど。
「どうしたの?まり」
顔を覗き込んでくる触手さん。
整った顔に、頬が染まってしまう。
「ううん!今日のご飯も美味しそうだなぁって」
「本当?嬉しいな。沢山食べてね」
彼と私はまだキスもした事ない。
世間的にはどうなのかな?
そろそろ一年になると思うんだけど…
もしかして魅力無いのかな
そういえば、彼氏彼氏って言ってたけど実は告白されてないかも。もしかして付き合ってないのかな。
触手さんはどう思ってるんだろう?
「まり、今夜も帰りは18時?」
「え?あ!うん!そうだよー」
今、聞いてみようかな。
「ねぇ、触手さん」
「ん?どうしたの、まり」
「私たちって、…その…」
ああ、何だか恥ずかしい。言葉にするのが恥ずかしすぎる。
でも確かめなくちゃ、だよね。
「私たちってお付き合いしてる、のかな?」
「え?」
嘘…、え?って聞き返されちゃった。
私だけが思ってたの?
何だかそれって凄く悲しい…。
「まり…
俺はずっとそのつもりだったけど、まりは違ったの?」
寂しそうに眉を下げて触手さんが私を見つめてきた。
触手さんも付き合ってるって思っててくれたみたい。
私は安堵の溜息を漏らした。
「ううん!私もそのつもりだったから…
良かったよ、変なこと聞いてごめんね?」
「本当?それなら良かった。驚いたよ」
大きな手で頭を撫でられる。
とても心地良い。
やっぱり今日はお休みしちゃおうかな。
「まり?何だか体調悪そうだけど大丈夫?」
「…ん、今日はお家に居ても良いかな…」
「勿論だよ、まりは真面目だからね。たまには息抜きしないと」
真面目じゃないって今日分かったけど…
会社サボっちゃった。
でも熱を測ったら少し体温高かったから理由にはなった。
「おいで?ベッドまで抱っこしてあげる」
「えっ!!!だ、抱っこ!?」
ひょいとお姫様抱っこされてベッドへ運ばれた。初めてこんなに密着してしまって心臓がうるさかった。
「触手さん、ありがとう」
「うん、
ねぇ、まり」
伏せ目がちに彼が私の手を握ってくる。
「今日、何の日か知ってる?」
今日?
それは…同じこと考えてるなら…
「私たちが出会って一年の、日?」
「良かった…!覚えててくれたんだね」
嬉しそうに笑う触手さん。
私も嬉しくなってくる。
「突然だけど…俺、秘密があるんだ…」
「えっ、秘密?」
何?秘密って…
「俺…異世界からこの世界に来たんだよ。」
確かに人間離れしてる容姿だなぁとは思っていたけれど異世界って?
「信じられないって顔してるね…
じゃあこれでどうかな?」
彼の背からピンク色の触手が何本も、うねうねと現れた。
「怖い?まり…」
怖いどころか…
「つるつるしてそうで、綺麗だなって思ったよ…」
頬赤らめ、そう言った私に彼は、触手も使って私を抱き寄せた。
やっぱりつるつるしていて気持ち良い。
それに触手さんの体温が心地良い。
「まりと出会えて良かった。嬉しいよ、受け入れてもらえて。大好きだよ、まり」
近くで微笑む触手さん。
こんな間近で…心臓もたないよ。
だけど、一年目にして初めて大好きって言って貰えた。
私も嬉しくて抱き締め返した。
「私も大好きだよ、触手さん」
今、この瞬間から新しく私たちの時間は進んだように感じた。