灯 り と 踊 る 。
作 , 初 楓 .
# し の コ ン
# ︎🤍 🥞
#恋 愛 部 門
# 長 め ⚠
春の午後。
新学期のざわめきがまだ残る音駒高校の廊下。
黒尾鉄朗は、掲示板のクラス表を眺めながら、ある名前に目を留めた。
「識月けい……?」
つぶやいた瞬間、隣から静かな声が返ってきた。
「“ほたる”だよ。」
振り向くと、薄い茜色で肩で二つ結びに結った、女子生徒が立っていた。
制服は同じでも、どこか空気が違う。
転校生だろうか。
「あ、ごめん。読み間違えた。俺、知り合いに、 “月島蛍”ってやつがいてさ。そいつ、“けい”って読むから、つい……。」
「へえ。“けい”って読むんだ。」
「うん。そいつ、バレーやってる。ちょっと無愛想だけど、まあ、悪いやつじゃない。」
彼女は、ふっと笑った。
「褒め方下手すぎでしょw。」
その笑顔に、黒尾は一瞬、言葉を失った。
笑われたのに、なぜか得した気分になるのが不思議だった。
「改めて、私、識月蛍。よろしくね」
「黒尾鉄朗。バレー部の部長やってる。……“ほたる”って、なんか、名前からして光ってる感じだな。」
「それ、ちょっと恥ずかしいw」
「でも、似合ってるよ。」
彼女は、少しだけ目をそらした。
その仕草が、妙に印象に残った。
昼休み。
校庭のベンチに並んで座るふたり。
春の風が、制服の袖をやさしく揺らしていた。
「蛍ってさ、なんで“蛍”って名前なんだろ?」
「母がつけたんだって。“暗いところでも、自分の光を見失わないように”って」
「…… かっけぇな、それ、」
「黒尾くんは?」
「俺?鉄朗。“鉄のように強く”って意味らしいけど、 正直、ちょっとゴツくない?」
「ううん。強いって、悪いことじゃないよ。……優しさも、強さのうちだと思う」
「……それ、今、俺のこと褒めた?」
「さあ、どうだろう」
蛍は、パンの袋をくしゃっと握って、笑った。
その笑い方が自然で、黒尾は少しだけ胸があたたかくなるのを感じた。
無理してない感じが、なんだか安心する。
放課後。
図書室の窓際。
夕陽が差し込む中、蛍は静かに本を読んでいた。
黒尾は、練習の合間にふらりと立ち寄る。
「またここか」
「うん。静かで落ち着くから」
「俺、静かなの苦手だけど……蛍がいるなら、悪くないかも」
「……黒尾くんって、時々ずるいよね。」
「?、なにそれ、どこが?」
「...そうやって、自然に距離を詰めてくるところ。」
「じゃあ、もっと詰めてもいい?」
冗談のつもりで言った。
「……考えさせて」
その言葉に、黒尾は少しだけ笑った。
冗談で言ったつもりだけど、そんな返し方されるとは思わなかったからだ。
“考えさせて”って、こんなに期待させる言葉だったっけ//
ある日、黒尾は少しの期待心が走り、ある質問をした。
「蛍って、俺のことどう思ってる?」
彼女は、本を閉じて、少しだけ間を置いた。
「...名前を間違えた人?」
「ふはw、なんだよそれ、」
「でも、」
「でも?」
「今は……“識月蛍”として、ちゃんと見てくれてる人。」
黒尾は、少し息をのんだ。
彼女の言葉は、いつも静かで、でもまっすぐだった。
「じゃあさ、俺だけ“けい”って呼んでもいい?」
「何それw、変なの。 」
「だからいいんじゃん。俺だけの呼び方って、なんか、いいだろ?」
蛍は、少しだけ笑って、うなずいた。
「…… まぁ。黒尾くんなら、いいよ。」
と彼女はニヤリ。と笑った。
“けい”と呼ぶたびに、彼女が自分だけに許してくれた気がした。
名前って、こんなに大事だったんだ。
ただの読み間違いが、こんなにも心に残るなんて。
「......まぁ。黒尾くんなら、いいよ。」
蛍がそう言った日から、彼女の名前を呼ぶたびに、 黒尾の胸の奥が少しだけ熱くなるようになった。
ある日の放課後。体育館の隅で、練習を終えた黒尾がタオルで汗を拭いていると、研磨がスマホをいじりながらぼそっと言った。
「……最近、黒尾、識月さんの話ばっかしてる」
「え、してるか?」
「してる。昨日も“蛍ってさ”って三回くらい言ってた」
黒尾は苦笑した。
研磨はいつも淡々としているけど、意外とよく聞いている。
「だって、気になるんだよ。名前の話から始まったのに、なんか…… 気づいたら、毎日話してる。」
「ふーん。……でも、識月さん、黒尾のこと好きだと思うよ」
「え、マジで?」
研磨は画面から目を離さずに、静かにうなずいた。
「目、見ればわかる。……俺でもわかるくらいだから、たぶん本当」
その言葉が、妙に響いた。
黒尾はその日の放課後、蛍を図書室の前で見つけた。
彼女はいつものように本を抱えていて、黒尾に気づくと、少しだけ笑った。
「今日も来たんだ。」
「うん。蛍がいるかなって思って」
「……そっか。」
ふたりの間に、少しだけ静かな時間が流れる。
黒尾は、ポケットの中で手を握りしめた。
「蛍」
「なに?」
「俺さ、最初、名前間違えたじゃん。“けい”って」
「うん。覚えてるよ。 」
「でも、あれからずっと、“けい”って呼ぶたびに、なんか特別な気がしてた。……俺だけが、そう呼べるの が、なんか、なんて言うか、嬉しくてさ、」
蛍は、黙って黒尾の言葉を待っていた。
「最初は名前が気になって、次に声が気になって、気づいたら、蛍のことばっか考えてた。……だから、ちゃんと言う」
黒尾は、まっすぐ彼女を見た。
「俺、蛍のことが好き。…… 付き合ってほしい。」
蛍は、少しだけ目を見開いて、それからゆっくりと笑った。
「…… 黒尾くんって、やっぱりずるいね。」
「え、またそれ?」
「でも、そういうとこも、好きだよ。」
黒尾の胸が、ふっと軽くなった。
名前を間違えたあの日から、こんな日が来るなんて思ってもいなかった。
「じゃあ、これからも“けい”って呼んでいい?」
「うん。……黒尾くんだけ、ね。」
「っ~/、〝けい〟ずるいんだけど。」
「ふふ、わざと!」
春の夕陽が、図書室の窓から差し込んでいた。
ふたりの影が、静かに重なっていた。
長くてすみません~!!!😖🙏🏻
「灯りと踊る。」楽しんで貰えたら何よりです!
ちなみに、これは、しのコンに出させて頂く作品です!✨
ということで、設定どぞ!↓
識 月 蛍 (しきつき ほたる)
音駒高等学校。高校3年生。
趣味 読書
苦手 走る事 。他はだいたい完璧○
秘密話(・×・)↓
黒尾とは、小さい頃会ったことあるとか!ないとか!
黒 尾 鉄 朗 (くろお てつろう)
高校3年生
~~原作通り!
「灯りと踊る。」の名前の由来は、〝灯り〟は蛍ちゃんです。考えてみると色々共通点?はあります!
蛍ちゃんの髪色は茜色だったり、〝蛍〟は灯りを照らしていたりと、〝灯り〟は蛍ちゃんだと分かります!
蛍ちゃんと踊る。-› 一緒に歩む。 見たいなイメージです!
てことで、ばいち!
紫 乃 .さん、いつも応援してます!