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「そうそう!オレもビックリしちゃって」
なにやらリビングが賑やかだ。
「あ、怜ちゃん出てきた」
「ん?」
「ルームツアー!始めたてだけど」
「は?え?もうなに?ビデオ?」
「そだよー」
「怜夢さんこんばんは」
鹿島のスマホから妃馬さんの声が聞こえる。
「あ、あぁ妃馬さん?こんばんは」
「おぉ〜初めて姿形見た」
森本さんの声。
「あ、ども。こんばんは」
「こんばんは。意外とイケメン」
「おすー暑ノ井くん」
「お、おすー音成さん」
「じゃあ、オレお風呂行ってくるわ」
「え、家主不在でルームツアーしていいん?」
「ん?別にいいよ。じゃ」
そう言って2階へ行く匠。僕は即座にリュックに下着のパンツを入れ
Gジャン、Tシャツ、ジーンズを畳み、ソファーの脇、リュックの隣に置く。
「じゃあ、とりあえず庭?」
「あぁ、まぁいいんじゃない?」
ガラスのスライドドアを開き、裸足で縁側のようなところに出る。
春の夜の微風。春の香り。ジージーという虫の鳴き声が聞こえる。
「え!?庭!?公園じゃん」
「すごー。ひろー」
音成さんと森本さんの驚きの声がする。
「ね!オレもそう思ったんすよ」
その後もサンダル履き、庭を歩く鹿島と森本さんの掛け合いが続いた。
僕は縁側のようなところに座り、ポケットからスマホを出す。
電源をつける。妃馬さんからのLIMEの通知。
「小野田さんの家めちゃくちゃ広いんですね!?めちゃくちゃ驚きました!」
そのメッセージの後に猫が驚いているスタンプが送られていた。
「そうなんですよ。桁違いの豪邸でw僕も最初来たときは「は?」ってなりましたよw」
その後に僕もフクロウが驚いているスタンプを送った。
「ねぇ、次どこに行く?」
隣に楽しそうな鹿島が座る。
「んー。2階とか?マンガのとことか、ゲストルームとか」
「そうね。あ、お風呂は」
「今匠入ってるから」
「あ、そっか」
ガラスのスライドドアを閉め、階段を上る。
まずはマンガのスペースに行って、嬉しそうに紹介する鹿島と驚く声を出す森本さん。
それがゲストルーム2部屋でも同じだった。3階に上がるための階段のある広場で座る。
「え、脳が追いつかないんですけど」
「ですよね。オレも初めは「はい?」って感じでした」
壁際のソファーに座り、スマホを取り出し、電源をつける。妃馬さんからの通知あり。
「ですよね?wてかどんだけ広いんですか!w1階だけでもめちゃ広だったのにw」
そのメッセージの後にまた猫が驚いているスタンプが送られていた。
「めちゃ広ですwまだ屋上がありますんでw」
その後にフクロウが「えっへん」と胸を張って自慢げなスタンプを送った。
「あぁ、ここにいたんか」
部屋着姿の匠が顔を出し、通り過ぎ、一回自分の部屋に入ってもう一度こちらに来た。
「匠ちゃんの部屋は?」
「ダメ」
「なーんでー」
「屋上は?行った?」
「まだー」
「じゃ、行くか」
匠が階段を上がり、鹿島と僕も後をついていく。
卓球台に驚く森本さんをスルーし、匠が屋上への扉を開け、外に出る。
僕と鹿島もテキトーにサンダルを履き、外に出る。
「え、ヤバすぎ」
初めて匠邸に来たときの鹿島のように驚く森本さん。
「ですよね。目を凝らせば…星も見えますね」
「まぁ23区内だからしょーがないんじゃない?」
「10個くらいは見えるね」
3人で夜空を見上げる。
「え、小野田さんの親御さんって石油王だったりします?」
森本さんの発言につい笑ってしまう。鹿島も匠も笑っていた。
「森もっさん、石油王ならたぶん日本にいない」
「あ、そうか。まぁ石油王はさすがに冗談ですけど、そのレベルでしょ」
「匠ちゃん言っちゃっていい?」
「父母のこと?」
鹿島が頷く。
「別にいーよ」
「匠ちゃんのご両親、2人とも社長なんだって」
「マジっすか!?」
「母はBTPの社長で父は文房具の会社の社長です」
「マジ!?っすか!?」
「まぁ、あんま女子に言うのはあれだけど、鹿島に言ってもわからんだろうからな」
「びーてぃーぴー?なにそれ。ん?なにー?なんなの?」
「私使わせていただいてます」
「あぁ…えぇ〜なんて言ったらいいんだろ。母も喜びます。ありがとうございます」
「なになに?」
わかっていない鹿島に耳打ちで
「BTP、Become The Princessの略で、匠のお母さん、女性用の下着メーカーの社長なの」
と教える。
「あ…あぁ〜」
まぁ反応に困るだろう。僕もそうだった。
別に森本さんの着けている下着のデザインや色などが判明したわけではないのに
なんとなく聞いてはいけないことを聞いてしまったように気まずくなる。
「はぁ〜だからこんな豪邸に…なるほどなるほど」
納得する森本さん。
「じゃ、じゃあ、そろそろ下りよっか」
と鹿島が言い、3人で屋上を後にする。3階に上がるための階段がある広場で寛ぐ。
「とまぁ、オレたちはこの匠ちゃんの豪邸で2泊3日ですよ!
これからあのリビングのテレビで怖いやつでも見るかって話出たんですよ」
「わぁ〜いいですね。ちなみに〜…」
「ん?」
「私たちもお泊まり会なうなんですよ〜」
「マジっすか!?」
マジっすか!?僕も心の中で驚いた。
「どうも〜こんばんは〜」
「あぁ!妃馬さんこんばんは〜!」
と鹿島がスマホに手を振る。一瞬体が鹿島の方にピクッっと動く。
「鹿島さん初めまして。音成です。こんばんは」
「あぁ!どうも!初め…まぁ顔見るのがね?
初めまして、鹿島です。こんばんは。あれ?森もっさんは?」
「私は写してる側なので、スマホのこっちにいます」
「おいぃ〜森もっさんの顔が見たいのに〜」
「なにいちゃついとんねん」
口を挟む。
「あ、怜ちゃん。ほれ」
と鹿島が自分のスマホの画面を僕に見せる。
そこには妃馬さんの家のリビングで寛ぐ妃馬さんと音成さんがいた。
妃馬さんと音成さんも僕に気づいて
「あ、怜夢さん。こんばんは」
「暑ノ井くん〜ばんは〜」
と2人とも手を振ってくれた。
「あ、妃馬さん。こんばんは。音成さんもばんは〜」
「姉さんばんはぁ〜」
本当に小声で呟く匠。ん?と思ったが触れずに続ける。
「暑ノ井さんこんばんは〜」
スマホの近くから森本さんの声がする。
「あ、どうもこんばんは」
鹿島が今度は匠にスマホの画面を向ける。
「小野田さん。こんばんは」
「あ、どうも。こんばんは」
「ほんとに髪白い…。あ、こんばんは」
「こんばんは」
「小野田くん。おす」
「おぉ、音成、おす」
鹿島は自分にスマホの画面を向け
「はい。全員顔見せましたので、お次は森もっさんっすよ」
「いやいや。ちょっと美人すぎてスマホの画面割れるかもしれないので」
「スゲェー美人じゃん」
「お!なにしてんの?」
姫冬ちゃんの声が聞こえる。
「怜夢さんたちとテレビ電話」
「あ!ほんとだ!鹿島先輩ちゃーす!」
「おぉ!姫冬ちゃんちゃーす!」
「てか、フィンちゃんはなにしてんの?」
「フィンちゃんカメラ役とか言ってスマホの画面こっちに向けてるだけー」
「えぇ〜なんで〜?お披露目しなよぉ〜」
「あ、姫冬様ダメっ、やめ」
鹿島の表情が変わった。正確に言えば、表情は変わっていないが雰囲気が変わった。
「かわいっ…」
鹿島が息を漏らすような消えそうな声で呟く。恐らく森本さんの顔が写ったのだろう。
「どうですかー?写ってますー?」
姫冬ちゃんの無邪気な声が聞こえる。
「あぁ…うん…」
いつもの鹿島ではない鹿島が呟く。
「暑ノ井先輩もいるんですか〜」
「あぁ、うん。いるよー」
「この前は誕生日プレゼントありがとうございました!まさかお姉ちゃんとお揃いとは」
なにか含みのある言い方に聞こえたが、そこには言及せずに
「喜んでもらえたようで良かったよ」
と言う。
「そこはー…えぇ〜っと」
「匠…小野田匠の家ね」
「あぁ!小野田先輩小野田先輩」
「鹿島鹿島!」
と足で鹿島の足を突っつく。
「あぁ!え!あ、なに?」
と我に返ったようにハッ!っとなる鹿島に
「匠にスマホ渡して」
と言う。
「あぁ、うん。はい」
鹿島からスマホを受け取る匠。
「あ、どうも小野田先輩です」
とスマホに向かってお辞儀をする匠。
「えっ…めっちゃイケメンじゃん」
ドストレートな褒め言葉。
「いやいや。姫冬…ちゃんも可愛いですよ」
「いやーん!イケメンに可愛いって言われたぁー!言われたよお姉ちゃん!」
「ん。聞いてたよ。良かったね」
「姫冬ちゃんは可愛いよ。可愛いサキちゃんの妹だしね」
「やめてよ〜」
「すいません。フィンちゃん意外と照れ屋なもんで」
なんとなく盛り上がりが欠けてきたし、鹿島がいつもの鹿島っぽくなくなったので
「じゃ、僕らはそろそろ恋バナの時間なので」
と実際は恋バナする予定はまだないが電話を切る口実として使う。
「えぇー!イケメン先輩達の恋バナ聞きたーい!」
姫冬ちゃんが元気に残念がる。
「じゃあ、そちらの恋バナも聞かせてもらおうかな?」
「あ、ちょっとそれは〜…」
「でしょ?なら男子の花園も内緒です〜」
「くっ…。じゃあ、こっちもこっちで内緒の恋バナしますのでー」
「お互い楽しみましょう」
「じゃ!おやすみ?なさーい」
「まぁまだ寝ないけど、とりあえずおやすみなさい」
「鹿島先輩も小野田先輩もとりあえずおやみなさーい」
その後各自がそれぞれみんなに「とりあえず」のおやすみを言い合い
匠が鹿島のスマホの通話終了ボタンをタップし、通話を終わらせた。
先程まで賑やかに聞こえてた女子の声がなくなり、シーンとする。
「鹿島ぁ〜鹿島ぁ〜」
いつもの鹿島っぽくない鹿島にいつもの鹿島になるよう声をかけ起こそうとする。
「あ。うん。なに?」
「ガチで恋バナしてもいいけど」
「あぁ〜…」
鹿島が僕と匠を交互に見て
「遠慮しときまーす」
と言う。ほんの少しだけいつもの鹿島が戻った気がした。
「なに?森本さんそんな美人だったん?」
「あぁ…うん。めちゃくちゃ」
「うん。スゴい美人だったよ。さすがハーフって感じ」
「の割に匠、全然リアクションしてなかったじゃん」
「あぁ…」
匠が僕に少し寄って口元を手で隠し、内緒話をするように
だけど鹿島に聞こえるくらいの声の大きさで
「京弥のリアクションには勝てないでしょ」
と言う。鹿島がピクッっと動き
「匠ちゃーん?わざと?ねぇわざとなの?」
と匠に近寄る。
「へー?なにがー?」
「なにがー?じゃねーよ」
と言い、鹿島が匠をくすぐる。
「バッ!やめろ!」
「んー?ほれほれ」
鹿島のイタズラするような声と匠の暴れる音、笑い声が響く。
鹿島もだいぶいつもの鹿島に戻ったようだった。スマホの電源をつける。
妃馬さんからのメッセージが来ており
嬉しく、ニヤけそうになるが堪え、時刻に目をやる。11時16分。
「どーするー?マジで恋バナするか…」
お化けのポーズと言われて、大半の人がイメージするであろうポーズをし
「こえぇ〜の見るか」
と提案する。
「京弥の恋バナ聞いてもー」
「こえぇーので!」
匠の言葉の先を遮るように鹿島が言う。
「じゃ、ホラー上映会しますか」
3人で1階のリビングへ下りた。