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⚠️ワンク
sxxn様のnmmnです。
後編。
前編、中編を読んでからお楽しみください。
紫、緑、水 先天性女体化
桃×紫、黄×緑、赤×水
当作品はご本人様に全くもって関係ございません。
急展開注意。
↑地雷に入っていない方のみお進みください
数分前に見た光景が頭から離れないでいる。
檻の中で倒れている…いるまの姿。
俺は乱れる呼吸も整えず、転がり込むように部屋へと入った。
心臓はバクバクと鳴り響き、脳の奥までも木霊する。
ここまで焦ったのは、いつぶりだろう?
いや…こんなに心が乱されたのは人生で初めてかもしれない。
「いるまっ!!」
本当は、夜に檻の鍵を開けることは禁止されてるが。
俺は規則を破り、横たわる彼女の身体を揺さぶった。
少しだけ冷たくなった身体。
白くて華奢な肌がより危うさを感じさせる。
けど、俺が久しぶりに触れた彼女には…確かに生命の温もりがあった。
「はぁ…」
そこに安堵すると、俺はため息を付く。
全身の力が一気に抜けた気がした。
「…よかった、」
本当に、いるまって子は。
こんなにも心配したのにも関わらず、ただスヤスヤと寝息を立てている彼女。
ただ寝ていただけのようだ。
頬にかかる髪をそっと耳に掛けてあげると、少しだけ笑った。
全く…どんな夢見てるんだかね?
「…いるま」
そんなことを思いながら、俺はまた名前を呼んでみる。
呼びながら、思った。
ここまで失うのが怖いのは、きっと彼女だけだ。
半身を求め続ける桃色の蝶は、もう隠すことができないのだと。
…しばらくして。
目の前の長いまつ毛が、揺れた。
檸檬色の美しい瞳が、ゆっくりと…開いた。
「おはよう」
寝惚けているのか、そう声をかけてみてもいるまは中々答えなかった。
けど少し経って意識が戻ってきたのか…綺麗な形の唇が動く。
「ら…ん?」
「うん、そうだよ」
優しく頭を撫でると、少しだけ驚いたように身を震わせる。
「なんで…檻、開けちゃ駄目だろ」
「しょうがないじゃん。監視カメラ覗いたら死んだみたいに倒れてるんだもん。そりゃ心配するよね」
「監視カメラって…変態」
「おい、変態とは何だ。こっちは心配したのに」
堪えるようにしてから吹き出して笑ういるま。
久しぶりに見た…その笑顔。酷く安心した。
けど…笑い終わってこちらを見つめると、いるまはスッと無表情になって。
どこか怯えたようにこちらに聞いてきた。
「おまえ…私を捨てたんじゃないの?」
「え…?」
「話聞いてくれんかったし。どう考えても、避けてたし。嫌われたって…思うじゃん」
確かに…そうだ。
どうしようか、この選択をするのか。
迷っている間…俺はずっと彼女を避けてきていた。
一緒にいたらより想いが強くなるだけだと。
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研究者として…自分なりに抗って。
この先もしいるまが俺といるとして、幸せになれるのかって、ずっとずっと考えていた。
けど、今日が。
もしかしたら今日が…その答えを出す日なのかもしれない。
俺はやっと心に決めると、ひとつ息をついて。彼女に向き合った。
そして…その白くて小さな手を取って、ゆっくりと告げる。
「嫌いじゃない」
「は…」
「嫌いじゃないよ、いるまのこと。いや、むしろ…」
〝好き〟
俺は腕を伸ばしてその身体を包み込んだ。
一瞬見えたいるまの顔は、ほんのり赤く染まって見えた。
初めての温もりを知って、実感する。
目の前に。近くに、今いるのは…研究対象じゃない。
俺の、好きな子。大切な子だ。
「ねぇ、最低なこと言ってもいい?」
「らんは…いつも最低だろ」
「ははっw 確かにそうだね。じゃあ代わりないか」
腕を優しく引っ張って、今度は立ったまま彼女を抱き寄せた。
抵抗しない。
無防備すぎるって…だから、こんな奴に捕まっちゃうんだよ。
そう言いたい気持ちはグッと抑えて、素直に。
やっと…気持ちは言葉になった。
「いるまと、逃げたい。俺のこと嫌いだったとしても…それがいるまにとっての幸せとは言えなかったとしても。絶対逃したくないから、好きにさせて見せる。だから、」
「……っ、」
「俺のこと、番にして?」
みこともこんな気持ちだったのかな。
番にしてって…簡単に言えることではない。
永久に人生を奪うことになるのだから。半身から離れられなくなるのだから。
「ら…ん、」
「ゆっくりでいいよ」
いるまは、俺の名前を呼んだ。
一歩ずつ。確かめるようにしながらこちらを見た。
そして…息を呑むと、躊躇わずに言い切る。
「奪うなら…全部。私の全部、奪え」
「っ!」
手を伸ばされ、俺の背中に細い腕が回った。
「…攫って欲しい。今まで閉じ込めてた分、責任取ってよ」
その瞬間。
無数の紫の蝶が、俺を包み込んだ。
いるまを中心として。
星の様に瞬くそれは…俺の桃色の蝶の周りをひらひらと舞い始める。
そして、互いの一匹の蝶同士が結びついたとき。
「うっ…」
「っ……、」
心の底に、確かに熱が籠った。
心臓が先ほどよりも荒れ狂う様な。何か発作が起きる様な感覚。
呼吸は荒くなり、視界がぼやけてくる。
知ってはいた。
番になるとき、一種の副作用があるのだと。
……副作用?
と、いうことは。
「いるまっ、大丈夫…?」
「…うん」
ゆっくりと、熱が治ってきて冷静になったのを確認してから目を開ける。
「俺のこと、番してくれたんだよね?」
「……そうだよ」
その姿を見た途端。言葉を聞いた瞬間。心臓が高鳴った。
「っ…」
突然の感覚にまた息を呑む。
離れたくない。
絶対に、離れたりしない。
触れたい。この子が…欲しい。
そんな想いが沸々と込み上げてくる。
そうか…これが、番になるということ。
桃色の蝶と紫の蝶は…俺らの周りをひらひらと舞い踊っていた。
絡み合う様にしながら光るその光景は、目に焼き付けておきたいほど綺麗だった。
「ありがとう、」
俺はそう言いながら、彼女の唇に人差し指を置いた。
「今は、これだけで我慢するから…いい?」
いるまはこちらをトロンとした表情で見つめながら、頷いた。
それを確認すると…熱が触れ合う。
優しく。でも、深く、
お互いの存在を確認し合う。
初めてのキスは想像以上に甘く…なにより。幸せに満ち溢れていた。
「一緒に逃げよう、いるま」
いつの日かのように鳴り響くサイレンの音。
厳しくなった警備を何とか掻い潜り、走り続けた。
その間も周りには蝶が光りながら舞っているので、容易に研究者たちに見つけられる。
「いたぞ!!」
「止まれ桃井!黄瀬と同じことをするつもりか!?契約違反だぞ」
「そんなことわかってますよーだ」
「ははっ…w」
いるまを背負いながら、追手を巻き続けた。
人気が少ない場所。通路。 全部把握してる。
これも全ては…みことのおかげ。
彼が逃げる数日前。
俺が見つけた一枚のメモ。いつのまにか資料の中に挟まっていて、自然と目に止まった。
そこに書かれていたのは…ある住所と、この研究所の穴。所謂外に出るための経路。
らんらんはいつか使うことになりそうだから残しておくねって。
そう書き殴ってあった。
まさか…本当に使うことになるとは。
今思えばずっとすちを想っていたみことには、俺の思考は丸見えだったのかもしれない。
俺も恋をしてるって気づいてたのかも。
天然で放って置けない奴だったのに…そういうところ鋭いんだから。
友人の顔も思い浮かべながら。
やがて…研究所の外に出ることに成功した。
研究所には基本籠りっぱなしだったから…実質俺も、久しぶりの外。
「らん…」
「ん、どうした?」
「重くない?私」
「軽いって。ちゃんと出されたご飯食べてた?」
「食べてた」
「心配になるくらいだから…これからは好きなもんいっぱい食べよ」
嬉しそうに笑ってくれるいるまにホッとした。
杏仁豆腐にラーメン、ピータン。
お姉さん意外なもの好きですね?
一つずつ好きだった食べ物を言ってから、奢って?と冗談混じりで言われる。
逃亡しているとは思えない会話。
でも未来が見えているそんな会話が、幸せと言えるのだろう。
これからもずっと。
きっと。そんな何気ない会話をしながら、生きていくんだ。
遠ざかっていく研究所の姿を最後に。
俺らは研究者と研究対象ではなくなった。
メモに書かれていた住所に着いたのは、数週間後の朝だった。
例え数週間だったとしても、長い道のりだった気がする。
山の奥。研究所から遠く離れた場所にある隠れ家。
そこで…迎えてくれたのは。
「お前らも、よく頑張ったな」
「おいで?こさめたちのお家に!」
半年後。
心地よい森の朝。小鳥たちの囀りで目が覚めた。
すっかり馴染んで来たその環境で、俺は目を擦りながらリビングへと向かう。
「おはようございまーす…」
「おはようらんくん〜!」
「お前…また寝るの遅かっただろ」
「だってしょうがないじゃーん、考え事してたんだもん」
後で仮眠取れよ?と心配してくれる声。
そんな会話も…もう日常茶飯事だ。
ここには、俺といるまの他に…二組の番が住んでいる。
俺らとは違う…別の研究所から逃げてきたのだというなつとこさめ。
数年前。先例もない中、初めて研究所から逃亡者が出たというニュース。
だいぶ前のことだったから話を聞くまで忘れていたが…彼らは間違いなく、俺とみことの道を切り開いた人たちだった。
希少種であるこさめを連れて逃げた研究者のなつは、ここに小さな拠点を作って政府から隠れて暮らしていた。
逃げてここで暮らすようになってからは、希少種を何とかして解放する方法を探り続けているのだという。
すべての希少種の解放。
それが誰よりも想い合い、最初に逃げた番の目的。
今は俺も、その方法探しの手伝いをしている。
そして…もう一組。
「らんらん…っ? らんらん!!」
「みことっ!!」
「無事に逃げれたんやねっ…」
「うん…ありがとう、本当にありがとう」
なつやこさめとコンタクトを取ることに成功し、ここに逃げ込むことに決めたみこと。
俺をもここへ導いた友人でもある。
久しぶりの再会には、涙を流しながら抱き合った。
「いるまちゃんも希少種なんだよね…らんらんの番さん?」
「そうだけど…いるまちゃんって、呼び方」
「…嫌だった?」
「別に…好きにしたら?」
「! うんっ!」
そして番であるすち。
境遇が同じだったからなのか、すちといるまはすぐに仲良くなっていた。
素直じゃなかったけど。
友達ができたのが嬉しかったのか…こっそり報告してきたときは、微笑ましさに笑みが溢れた。
そんな二組と共に暮らす六人での今の生活は、間違いなく幸せだ。
いつ研究所…政府側に見つかるかわからない。
でも、今は。普通に過ごせるようになった日々が…こんなにも輝いている。
「歩かないと体力戻らないよー、いるまさん」
「いいだろ…もう自由に走れるくらいになったんだし。らんも嫌じゃないだろ?」
「そりゃあ…好きな子の温もり背中に感じれてますので」
「言い方キモいけど…まぁ、らんらしいかw」
洗濯物を外に干しにいくついで。
いるまをおんぶしながら、木漏れ日が溢れる森の中を歩いた。
こうしてここを二人で歩くと、森の中に蝶が舞って…また美しい光景が見れる。
それがまた楽しみだったりする。
ゆっくりと歩いて進んでいく中で。
不意に…いるまが俺の肩に回す腕の力が、少し強くなったのを感じた。
「ねぇ、らん」
「んー?なに?」
トンと。頭が肩に置かれたので…俺はピタリと足を止める。
「…ありがと」
「! 急にどうしたの?」
「言いたくなった」
急に素直になるんだから、心臓に悪い。
番となる前もなった後も、本当にこの子はずるい子だ。
「言っとくけど…今はあるから」
「?」
「らんから、一生。どうしようもないくらいの愛をうける覚悟」
「それっ…覚えてたのかよ」
「私の記憶力舐めんな」
いつの日か。
すれ違った日に言った、そんな俺の弱い言葉。
…ちゃんと覚えていたみたいだ。
「はぁ…」
わざとらしくため息を吐いてから、俺はいるまをその場に優しく下す。
そして…力一杯抱き締めた。
「俺だってあるよ…いるまを、」
「私を?」
「一生。どうしようもないくらい、愛し抜く覚悟」
桃色の蝶と、紫の蝶は。
二人を祝福するように…ひらひらと舞った。
きっとこれからも。
その命が朽ちるときまで…離れることはないだろう。
沢山の勇気が連鎖して。
この国はゆっくりと変わっていく。
研究なんてする必要は…なくなるかもしれない。
そんな、幸せの断片の中で。
_____番の蝶は、飛び立った。
番の蝶が飛び立つ時 𝒇𝒊𝒏
完全自己満足、突発で書いた作品完結です🙌
早く終わらせたかった関係で時系列諸々分かりにくいので、質問等あればコメント欄にお願い致します。
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました🙇♀️