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夜は、静かだ。
街灯がぽつぽつと光っているだけで、人通りもほとんどない。
こういう時間が、一番やりやすい。
「……逃げるの?」
目の前の男が、震えながら後ずさる。
別に追いかける必要も無いけど―――
まあ、素材が歩いてくれるなら、そのほうが楽だ。
一歩踏み出す。
それだけで、距離は一瞬で詰まる。
「ひっ……!」
顔を掴む。
たったそれだけ―――それだけで。
男の体から何かが崩れる。
目には見えないはずのそれが、私にははっきり分かる。
温度も、重さも、全部。
「……やっぱり、この感覚、嫌いじゃない。」
吸い上げたそれは、手の中で形を変える。淡く光る粒子が集まって、やがて一つの形になる。
剣。
細く、しなやかで、無駄のない剣。
「今回は、これか」
軽く振る。
空気を割く音が、闇に溶けた。
後ろで、男が倒れる音がする。
……死んでない。多分。
どれぐらい削れたなんて、いちいち気にする必要も無い。
どうせ、人は、いつか死ぬ。
それが早くなるか、遅くなるか。それだけの違いだ。
「弱いな……」
ぽつりとつぶやいて、武器を消す。
役目はもう終わり。
さて、次は―――
「そこまでだ!」
聞きなれた声。
いや、よくある、声。
振り返ると、数人のヒーローがこちらを囲もうとしていた。
遅い。
ヒーロー「その個性、危険すぎる。大人しく―――」
最後まで聞く気は無い。
一歩、後ろへ。
それだけで、距離は開く。
「別に、あなたたちには、関係ないでしょ?」
ヒーロー「人の命を奪っておいて何を―――」
「奪う?」
少しだけ、笑う。
「最初から減るものだよ?」
空気が張り詰める。誰も、動かない
いや、動けないの方が正しいのかもしれない。
触れれば、終わる。
それが分かっているから。
「……つまらない。」
種を返す
追ってくる気配はあるけれど、問題ない。
この程度、撒くのは簡単だ。
屋上へ飛び、闇に紛れる。
風が、羽を撫でた。
―――ああ、そういえば、
背中のそれを、少しだけ広げる。
白い羽。
頭上には、淡い光の輪。
「天使、ね」
誰が言い出したのかは知らないけど、笑える。
奪うだけの存在が、天使?
「……馬鹿みたい」
羽を閉じる。
そのまま、夜の街を見下ろす。
どこにでも人はいる。
どこにでも寿命はある。
つまり―――素材には困らない。
「次、どこ行こう」
その時だった。
「―――その力、無駄にしていますね」
背後から、声。
気配はあったはずなのに、気づかなかった。
振り返る。
黒い霧のような男が、そこに立っていた。
黒霧。
「……何?」
黒「もっと有効な使い道がある、と言っているのです」
「興味ない」
即答。
関わる理由がない。
黒「そう言わずに」
黒霧の後ろ、闇の中に、もう一つ影。
ゆっくりと現れる。
手を首元にあて、気だるげにこちらを見る男。
死柄木弔。
「……お前、その力」
視線が絡む
「壊す側に来いよ」
沈黙。
数秒。
――どうでもいい。
「別に、どっちでも同じでしょ?」
死「は?」
「奪うだけなら、一人でもできる」
くるりと背を向ける。
「あなたたちに従う気もないし。」
一歩踏み出す。
そのまま――消える。
残されたのは、夜の静寂だけ。
ただ一つ。少しだけ。ほんの、少しだけ―――
「無駄にしてる…ね」
その言葉が、頭に残った。