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#兄弟パロ
杠
128
#ご本人様には関係ありません
ぬん
105
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ーーこの世界は獣人たちの世界である。草食動物も肉食動物も共存しているそんな世界ーー
といっても獣人たちはかなりの進化を遂げておりほとんど人間に近づいている。違うところといえば耳と尻尾、翼などが出し入れでき、少しだけ獣の特性が残っているだけである。
そんな世界で起きた大きくも小さな物語。
****
その日、超特急の楽屋はいつもより少しだけ賑やかだった。
理由は単純だ。同じテレビ局で、後輩グループのM!LKとの収録を控えていた。といってもアロハにとっては先輩だが。
最近、M!LKの勢いは目覚ましい。楽曲がヒットし、テレビで見かける機会も増えた。超特急のメンバーたちも、その活躍はよく知っていた。
「M!LKって、めっちゃ最近人気出てきてるよね」
ソファに腰掛けていたハルが、感心したように口を開いた。
「しかも、オオカミとライオンの獣人がいるらしいよ。すごいよね」
ふわふわとした髪の間にくるりとした角と耳がのぞくヒツジの獣人であるハルは、興奮気味に話す。そんなものだかは隣にいたユーキも興味を示した。
キツネの耳をぴんと立て、ハルのほうへ顔を向ける。
「オオカミとライオン?勇人と柔太朗のことだよな?」
「うん。佐野勇人くんがライオンで、山中柔太朗くんがオオカミなんだって」
「会ってみたらびっくりすると思うぞ。あいつら、オーラがすごいからな笑」
事務所の古参であるカイは何度か会ったことがあるのだろう。
ラブラドールレトリバーの獣人であるカイは、柔らかな雰囲気の持ち主だ。けれど、周囲をよく見ていて、自然とみんなをまとめる頼もしい存在でもある。
「あーあいつらな。そりゃ話題にもなるよな」
リョウガも頷いた。
ヒョウの獣人である彼は、超特急のリーダーとして、そしてエビダンの1番の古参として芸能界に詳しい。
この世界では、獣人の種類が人気や評価に影響することが珍しくなかった。特にライオンやオオカミといった、力強さや威厳を象徴する肉食獣は、芸能界でも好まれる傾向にある。
その血筋や特徴を公表することが、一種のステータスになることさえあった。
「やっぱり肉食獣って強いよね。存在感あるし」
ハルがしみじみと呟く。
その会話を、少し離れた場所でアロハは聞いていた。けれど、特に口を挟むことはなかった。
そもそも、アロハにとって獣人の種類を話題にすること自体、あまり気分のいいものではない。
アロハはネコの獣人だった。
そして、この世界でネコの獣人は忌み嫌われている。
原因は遠い昔に行われていた獣種差別政策である。
職業や居住地、結婚相手など多くのことが獣種によって制限されていた時代があった。
そしてその差別種の一緒が猫である。
しかし、猫種ではないのは滑稽な話だ。ヒョウやチーターといった種は優遇されていた。少し違うだけでこの差別。つくづく世界とは理不尽なものである。
もちろん今の時代差別などない。そしてそんなことを口に出す者もいない。
ーーだが、
気まぐれで、狡猾で、信用ならない。
そんな偏見が根強く残っており、特に獣人としての個性が商品価値にも結びつく芸能界では、ネコであることは致命的な弱点になりかねなかった。
だから、アロハは自分の正体を隠している。
耳も尻尾も決して表に出さない。獣人の種類を聞かれても、曖昧に笑って誤魔化す。どんなに親しい相手にも、明かしたことはなかった。
一度でも知られてしまえば、今まで積み重ねてきたものが崩れてしまうかもしれない。
それだけは、絶対に避けたかった。
壁に貼られた獣人が笑顔で手をつなぎ合っているポスターが目に入る。「みんなの世界」そんなスローガンが書かれている。
猫の獣人は「みんな」には入っていないんだろうななどと考えながら「ふうん」とアロハは興味がなさそうに相槌を打った。
「まあ、同じ番組に出るだけだし」
挨拶をして、収録をして、帰る。
それだけのことだ。
わざわざ自分から関わりにいく理由もない。
そう思いながら、ポスターから目を離して、手元のスマートフォンに視線を落とした。
そのとき、楽屋の扉がノックされた。
「はい、どうぞ」
リョウガが声をかけると、扉が開き、M!LKのメンバーが顔を覗かせた。
「超特急さん、今日はよろしくお願いします!」
先頭に立っていたのは佐野勇人だった。
百獣の王であるライオンの獣人らしい堂々とした佇まいに、明るい笑顔。そして整った顔。人懐っこく挨拶をしながら楽屋に入ってくるだけで、自然と視線が集まる。金髪の下、鋭さを感じさせる目元。それでも笑うと一気に親しみやすい雰囲気になるのだから、不思議なものだった。
「こちらこそ、よろしく」
リョウガをはじめ、メンバーたちも笑顔で応じる。
続いて入ってきたのは、ハヤブサの獣人である塩崎太智。愛嬌があるが、どこか力強さがある。頭を下げる太智の後ろからトイプードルの獣人である曽野舜太が顔を出した。人懐っこそうな表情の舜太は、超特急のメンバーを見つけると嬉しそうに笑う。
最後に、ウサギの獣人である吉田仁人が入ってきた。M!LKのリーダーらしく、落ち着いた様子で丁寧に挨拶をする。
互いに自己紹介を交わし、握手をして、簡単な雑談をする。
楽屋には自然と和やかな空気が流れ始めた。
ただ、一人だけ姿が見えなかった。
「すみません、柔太朗がちょっと遅れてて。もうすぐ来ると思います」
勇人が申し訳なさそうに言った。
「全然大丈夫」
カイが笑って答えた、そのときだった。
ガチャリ、と扉が開いた。
「遅れてすみません」
落ち着いた声とともに、一人の青年が楽屋に入ってきた。
山中柔太朗。
その姿を目にした瞬間、何人かが思わずそちらを見た。
整った顔立ちに、透き通るような白い肌。茶色の髪がさらりと額にかかり、すっと通った鼻筋が目を引く。
白く美しい毛並みの尻尾が軽く揺れていた。
どこか目を離しがたい雰囲気があった。静かで、凛としていて、近寄りがたいほど美しい。けれど、表情には柔らかな優しさも感じられる。
白オオカミの獣人。
「うわ、すご……」
ハルが小さく声を漏らし、隣のアロハに顔を寄せた。
「本物の白オオカミだ」
「聞こえるって」
アロハは呆れたように返した。
それでも、視線は一瞬だけ柔太朗に向いた。
確かに、綺麗な顔をしている。
けれど、それだけだった。
白オオカミなんて、自分とは住む世界が違う。
芸能界で好まれる獣人の代表格。きっと、正体を隠す必要も、誰かに怯える必要もないのだろう。そんな相手と、自分が親しくなることなどあるはずもない。
アロハはすぐに視線を戻した。
その一方で、シューヤは目を輝かせて立ち上がっていた。
ハイイロオオカミの獣人である彼にとって、同じオオカミの獣人はやはり気になる存在らしい。
「待って! 俺と同じオオカミじゃん!」
思わず声を弾ませるシューヤに、柔太朗は少し驚いたように目を瞬かせ、それから微笑んだ。
「そうですね。よろしくお願いします」
差し出された手を、シューヤが嬉しそうに握る。
「いや、嬉しいな。同じオオカミって、なんか親近感湧くー!」
「俺もです」
柔太朗は穏やかに答えた。その後も、順番に挨拶を交わしていく。
そして最後に、柔太朗はアロハの前で足を止めた。
「アロハくん、だよね?」
柔太朗が声をかける。
アロハは顔を上げた。
「うん」
少し素っ気ない返事になったのは、いつもの癖だった。
初対面の相手には、必要以上に踏み込ませない。相手がどんな獣人なのか、どんな人間なのか。それを見極める前に、自分から距離を縮めるつもりはなかった。柔太朗は気にした様子もなく、自然な動作で手を差し出した。
「山中柔太朗です。今日はよろしく」
「よろしく」
アロハは腰を上げ、差し出された手を握ろうとした。
その瞬間だった。
柔太朗の表情が、ふっと変わった。
目がわずかに見開かれる。ほんの一瞬のことだったけれど、アロハにははっきりとわかった。
――何だよ。
胸の奥に、嫌な感覚が広がった。
またか。
耳も尻尾も出していない自分を、不審に思ったのだろうか。それとも、何の獣人なのかと疑っているのか。
正体を隠している以上、こういう反応には慣れている。
慣れているはずなのに、何度経験しても気分がいいものではなかった。
アロハは表情を硬くした。
けれど、次に柔太朗の口から出てきた言葉は、予想していたものとはまるで違った。
「あ、ごめんなさい」
柔太朗は、どこか照れくさそうに笑った。
「アロハくん、かっこよくて」
「……え?」
思わず、間の抜けた声が出た。
かっこいい?
今、何て言った?
アロハが呆気に取られている間に、柔太朗は何事もなかったかのように、その手を握った。
温かい手だった。
指先が触れ、手のひらが重なる。
ほんの数秒。
それだけで、柔太朗は「よろしく」ともう一度微笑み、ほかのメンバーたちのところへ戻っていった。
取り残されたアロハは、しばらくその場に立ち尽くしていた。
「……何だ、あいつ」
ぽつりと呟く。手のひらには、まだ微かな温もりが残っている気がした。
まさか、あんなことを言われるとは思わなかった。
しかも、相手はあの白オオカミだ。
自分とは正反対の、誰からも好かれそうな獣人。
そんな相手に、いきなりかっこいいと言われるなんて。
アロハは小さく首を振った。
ただの挨拶だ。
初対面だから、気を遣ってくれただけ。きっとそうだ。
深く考えることじゃない。
そう自分に言い聞かせ、再びソファに腰を下ろす。
けれど、スマートフォンの画面を見つめても、文字はなかなか頭に入ってこなかった。
あの一瞬、柔太朗が見せた表情。そして、照れたような笑顔。
どうしても、それが頭から離れなかった。
アロハは小さく息を吐き、今度こそ考えるのをやめようとした。
どうせ、もう関わることなんてない。
同じ番組に出演するだけの相手なのだから。住む世界も違う。
そう思った。
そのときは、本当にそう思っていた。
****
一方、M!LKの楽屋では、収録前の準備が着々と進んでいた。
超特急の楽屋から戻ったメンバーたちは、それぞれ衣装を確認したり、スタッフと打ち合わせをしたりしている。
そんな中、柔太朗だけは鏡の前に座ったまま、ぼんやりと自分の顔を眺めていた。
「……」
鏡に映るのは、いつもと変わらない自分の顔。
けれど、頭の中に浮かんでいるのは、まったく別の顔だった。
茶色がかった黒い髪。
印象的な目。
少しだけ挑発的にも見える、涼しげな眼差し。
それなのに、ふとした瞬間に儚さを感じさせる、不思議な顔。
アロハ。
超特急のメンバーの一人。
耳も尻尾も出しておらず、何の獣人なのかもわからなかった。
普通なら、それほど気に留めることもないはずだった。
獣人の種類を明かすかどうかは本人の自由だし、芸能界には、あえて特徴を隠して活動する者だっている
答えはまだ、見つからない。
それでも。
「……また会いたいな」
気づけば、そんな言葉が口から零れていた。
「ん? 何か言った?」
撮影の段取りを確認していた仁人が聞く。
「何でもない」
柔太朗は小さく笑って誤魔化した。
自分でも気づかないうちに、尻尾がユラユラと動いていた。
そして、もう一度だけ思い浮かべる。
黒髪の青年の顔を。
まだ名前しか知らない、その人のことを。
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お読みいただきありがとうございます!
新シリーズです!✨
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コメント
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こうゆうの初めてみました!色々凄いです続ききになります!