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おかえりらびっと
※医者組(左右無)
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kr, side
彼との出会いは正に運命的で
それでいて二度と思い出したくもない出来事だった。
それは真冬の凍てつくような夜だった。
仕事帰りで今にも倒れてしまいそうな体に鞭を打って足を進めた。
海が良く見える海岸沿いの歩道を歩いている時に、今にも車に轢かれてしまいそうな箱を見た。よく、漫画で見るような捨て猫なのかな…って、少し哀れに思えたから箱の中を覗いた。
そこには真っ白な兎が1匹、苦しそうに横たわっていた。
kr, 「へッ…うさぎ、?」
予想外の動物に驚きの声を上げる。
捨てられたのかな…とか、いつからだろう…とか考えていた時に、やっとその子が弱っているのに気がついて、思わず箱ごと持ち上げて記憶を頼りに病院に駆け込んだ。
さっきまで動かなかった足は嘘みたいに地面を蹴って、溜息しか出てこなかった口からは酸素を求める息継ぎが行われた。
その後、ちゃんと獣医に診てもらって、治療もされた。
そう、
最善は尽くされたんだ
だけどその子は亡くなった。
あれだけ走ったのに。
あれだけ必死に記憶を巡らせて、周りの目なんて気にせずに大声を上げて助けを求めたのに。
もうあの子が亡くなって1ヶ月が経つ。
あの一夜だけだったけれど、どうしてか何よりも大切なものを失った気がする。
まだ世界は暗く寒い。
あの時のような仕事帰り。
あの時みたいに、彼を見つけた場所で、満月が綺麗に俺を照らしてくれた。
ずっと月を見ていると
彼が月に誘拐された気がして、
もう届きはしないんだなって、
思ったらなんでか手を伸ばしていて
どれだけ伸ばしても空を切る自分の手が恨めしくなった。
あぁ…やめよう
そう思っていた。
その時
あの夜嫌という程耳に入ってきていたアスファルトを蹴る音が近ずいてきて
俺の視界から月が奪われた。
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nk, side
彼に会いたくてただ走った。
ずっと走って、それでも勢いを落とすことなく地面を蹴る。
どうして今走っているのかとか、
なんで自分はこの世界に生きているのとか、
そんなのどうでもよかった。
こんな道歩いたこともないけれど、なんでか彼が居るって確信していた。
そして、彼との運命的な出会いを果たしたあの場所で、彼を見つけた。
彼はなぜか月を見ていて、
月に手を伸ばしていて、
きっと俺を思ってなんだろうけど、
俺よりも先に月が求められているのを見て、嫉妬心が心を染めた。
でも、会えた嬉しみもおっきくて、
歪む視界の中、彼の視界から月を奪った。
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kr, side
歩道と浜辺を隔てるガードレールに1人の少年が苦しそうな顔で立っていた。
少し俺を睨んでいる気がして、それでいて今にも泣き出しそうだった。
まるで、月じゃなくて俺を見ろって、
言われてるみたいだった。
あの時、あの子を抱きしめてあげられなかったから、
彼を抱きしめた。
彼が苦しいよって言っても絶対に離してやらなかった。
kr, 「ごめんッ…ごめッんね、ぇ」
nk, 「なんであやまるの、ッ」
nk, 「…ね、ただいま」
kr, 「おかッえりぃ、」