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春野亜矢、16歳。マンションで一人暮らしをする、ごく普通の女子高校生。
彼女の住むマンションに今日、お隣さんが引越して来た。
「よお、今日からよろしく頼むぜ」
亜矢の部屋に挨拶に来たお隣さんの第一声が、それだった。
「は、はぁ……春野です。こちらこそ、よろしく」
初対面なのにその馴れ馴れしくて乱暴な口調に亜矢は唖然としたが、その相手の容姿を見て一瞬、思考を止めた。
銀色の髪に、紫の瞳。整った綺麗な顔、亜矢と同じくらいの歳の少年だった。
たいていの女子なら一目惚れでもしそうな、いわゆる美少年。
目つきは鋭く、どこか相手を見下しているかのような。いわゆる、立場が上の目線である。
不思議なのは、春なのに、黒いコートを着ていたのだ。
「今日は挨拶までだ。じゃあまたな」
それだけ言うと、その少年はドアから離れ、自分の部屋の方へと向きを変えた。
亜矢は玄関で立ち尽くしていたが、ふと何か思い出したかのように少年が振り返った。
「それとあんた、もうすぐ死ぬぜ」
「はッ!?」
亜矢は訳も分からず、ついそんな声を出した。
(な、何、何なのかしらあの人は!?)
それに、挨拶に来たはずなのに、あのお隣さんは自分の名前すら名乗っていない。
亜矢は相手が部屋に入ったのを確認すると、自分もその人の部屋の前に立つ。
ドアの前に立ち、お隣さんの表札を見て名前を確認する。
表札には、『死神』と書かれていた。
「……コレ、本名なのかしら……」
冗談にしか思えないその名字に、亜矢はさらに疑問を膨らませた。
それが、亜矢と死神との出会いだった。
「それでね、その人ってどこかおかしいのよ」
下校途中、亜矢は親友の美保に向かって、先日のお隣さんの事を話していた。
「引越して来たと言っても、荷物が運ばれて来た様子もないし……」
思い出しては不審に思う亜矢に対し、美保はキョトンとしている。
「亜矢、何言ってるの? 亜矢の隣の部屋にグリアくんが引越してきたのは随分前の事じゃない」
「え?」
亜矢は美保の顔を凝視した。
純粋な視線を向ける彼女の表情からは、嘘や冗談を言っている様子は伺えなかった。
「み、美保こそ何言って……。それに『グリア』って誰…………」
そう言った時、道路を挟んだ向こう側の道に歩く一人の少年の姿が目に入った。
銀の髪、その身長。忘れるはずもない、『彼』だった。
「あーーーっ!! あの人ッ!!」
指さして叫ぶ亜矢だったが、美保の方は相変わらず落ち着いている。
「噂をすればグリアくん、ね」
そんな美保を見て、亜矢が増々訳が分からなくなってきた。
『グリア』なんて人は、知らない。
ただ、あのは人は自分の隣に引越して来た人。それだけ。
なのに、何で———
「何で、ウチの高校の制服着てるのよッ!?」
「あ、亜矢ッ!?」
もはや美保の声も耳に届かず。
亜矢は我を忘れ、道路に飛び出した。
そんな事などに気付きもせず、どんどん歩いて行く彼に向かって亜矢は走り出した。
別に、彼を追いかける理由も、必要も今はない。彼は隣に住んでいるのだから。
でも———何故かその時は、身体が動いた。
「亜矢!!」
美保の叫び声が聞こえた。
「亜矢、危ないッ……!!」
—————え?
『彼』の方にしか視線を向けてなかった亜矢には、自分に迫り来るものすら見えなくて。
鳴り響く、ブレーキの音。
状況を頭で把握しても、すでに身体を動かすには遅い。
その瞬間、目に映っていた『彼』が、ふとこちらを向き、
…………微かに笑っていた。
それからの亜矢の意識は…………ない。
コメント
1件
わあ、第1話からすごい引き込み方をされましたね…! 死神を名乗る美少年が隣に引っ越してきて「もうすぐ死ぬぜ」って、しかも直後にトラックが迫る展開。親友の「グリアくんは前からいる」発言も気になるし、時間認識のズレが示唆されている感じがして、設定の伏線が巧みだなと。亜矢の感情の動きも自然で、これからどうなるのかすごく気になります。続きが待ち遠しいです〜!