テラーノベル
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鬼狩りという職は、
孤独なものだと思われがちだった。
実際、多くの者はそうなっていく。
任務は危険で、判断は速く、
間違いは許されない。
その積み重ねが、
人と人の距離を少しずつ広げていく。
それでも暁月には、数人だけ“仲間”と
呼べる存在がいた。
訓練場で最初に声をかけてきた男。
軽口ばかり叩くが、
戦場では一度も遅れたことがない。
もう一人は、細身で寡黙な女。
言葉は少ないが、観察眼だけは異常に鋭い。
そしてもう一人。
任務報告のたびに、必ず茶化してくる男がいた。
「またお前かよ、仕事しすぎだろ」
そう言いながら、いつも笑っていた。
彼らは“鬼狩り”でありながら、
完全に鬼狩りになりきれていない者たちだった。
それが良いことなのか悪いことなのかは、
誰にも分からない。
任務のない日は、彼らはよく集まった。
訓練場の隅で、乾いた地面に座り、
他愛もない話をする。
「最近の鬼、動き早くなってないか?」
「いや、お前が鈍くなっただけだろ」
「は? それ言う?」
そんなやり取りに、わずかな笑いが生まれる。
それはこの世界では貴重なものだった。
暁月は、その輪の中心にいることが多かった。
だが自分から話すことは少ない。
ただ聞いている。
時々、短く返す。
それだけで十分だった。
ある日、軽口の男がふと言った。
「なあ、暁月ってさ」
皆の視線が集まる。
「もし鬼狩りじゃなかったら、何してたと思う?」
その問いは、場の空気を少しだけ変えた。
暁月は少し考えた。
すぐには答えが出なかった。
刀を握る自分以外の姿。
想像しようとしても、輪郭が曖昧になる。
やがて、ぽつりと言った。
「分からない」
それが正直な答えだった。
誰かが笑うかと思ったが、誰も笑わなかった。
代わりに、寡黙な女が静かに言った。
「それでいいんじゃない」
その言葉は、慰めでも肯定でもなかった。
ただ事実のように落ちた。
その瞬間だけ、暁月は少しだけ肩の力を抜いた。
鬼を斬る仕事は変わらない。
明日も、明後日も続く。
それでも、
この小さな時間だけは確かに“日常”だった。
夜になると、彼らはそれぞれの家へ帰る。
別れ際、軽口の男がいつも言う。
「また明日な、生きてたら」
冗談のようでいて、冗談ではない言葉。
それに対して暁月は、いつも短く返す。
「生きていればな」
そのやり取りが、妙に現実的だった。
そしてその夜も、村は静かだった。
静かすぎるほどに。
暁月は気づいていない。
この“何も起きない日常”が、
あと少しで終わることを。
そして、それを壊す存在がすでに
彼のすぐ近くまで来ていることを。
コメント
1件
おお…第4話、めちゃくちゃ沁みましたわ。鬼狩りって孤独なイメージあるけど、暁月にはちゃんと仲間がいて、あの軽口の応酬とか「生きてたら」の別れ際とか、何気ない日常の尊さがにじみ出てた。特に「分からない」に「それでいいんじゃない」って返す寡黙な女の一言が刺さりすぎた…。でもラストの不穏な伏線が怖すぎる。この平穏、壊されんのか…続きが気になりすぎる🔥
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