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血液
1:本能
*…───…*
🎈「ん…」
起きたと自覚した瞬間、吸血本能が襲ってきた。そのせいで吐き気もする。今日は、週に3回の頻度で来る吸血本能が暴走する日。この日は食事も喉に通らなくなり、毎回奏たちの血か、自分の血を飲まなくてはいけない。もし、間違えて食べてしまったら吐いてしまう結果だ。何回も経験したからわかる。きっとこれは、自分が吸血鬼なのに血を求めないからという罰だろう。
🎈(全く求めないというワケではないのにねえ)
そんな下らないコトを考えていると吐き気が激しくなり、布団から手を伸ばし、袋を取る。そして自分の口元に寄せて嘔吐した。
🎈「お゛え…ッ゛、う゛…え゛、っ゛、ッッ゛」
ぼたぼた、と袋の中に自分の吐き出したモノが落ちていく。血液が混ざった胃液しかない液体が。僕のからっぽな身体の中から出されたモノが。そして全て吐き出す。そうしても、出てくるのは胃液だけ。そうして、僕の中には何も残らなくなる。からっぽに。
🎈(…こんな身体、イヤだ…)
弱音を吐いてもこんな身体に生まれた以上、変えられない。母さんには、申し訳ない。お腹を痛めて産んだ子がこんな身体なんて。そのせいで、父も母も交通事故にあって死んだんだから。全部僕の呪い。僕が吸血鬼に産まれた呪い。
🎈(血、ほしいなあ…っ)
こんなことを言えば奏たちは絶対に血をくれるだろう。今までもそうだったのだから。でも、もうダメだ。頼りすぎている。週に3回で血を貰って、僕の世話にも迷惑をかけて、頼りすぎた。これからは、もっと独りでも生きれるような生き方をしなくてはならない。勿論、奏たちのコトを信用していないワケではない。けれど、頼りすぎてしまっているから、離れないと、と思うだけだ。
そして、薬に手を伸ばす。蓋を開け、15粒程度飲み込む。別にこれは、僕たち吸血鬼にとっては、多い方ではない。吸血鬼は人間とカラダの造りが違うから薬が効かなくなっている。だから、吸血鬼は薬を7、8粒程度飲まないと効かない。僕は、ただ吸血本能を抑えるだけじゃなくて、感情も抑えないとだから多めに飲んでいるだけだ。だから15粒程度の薬を飲むのが普通になっている。それだけ。
***
薬が効いてきて、吸血本能は治まっていないが、吐き気が無くなった。けれど、吸血本能を治まらせるためには血を飲まなければならない。だから、僕は自分の腕に噛み付いた。噛み付けば真っ赤な血がすう、と流れた。がり、と痛みに耐えるため、唇を噛んだ。けれど、僕の歯は牙で尖っているから痛みが増してしまった。
🎈(う゛…、ッいたぃ゛…っ、ッッ゛)
そうして数分経つと吸血本能が治まってきた。腕から口を離すと、リスカ痕が目に映った。何度も何度も傷付けた僕の身体。口でも、刃物でも、色んなもので傷付けた。けれど僕は死ねない。
🎈(結局は僕は、報われないモノ)
***
とんとんとん、と音を立て階段を降りる。そして扉が見えてきた頃、扉が開きまふゆと目が合った。きっと僕を起こしに行こうとしたトコだろう。
❄「あ…、おはよう、類。起きてこれたんだ」
長い、紫の髪を揺らし、こちらに視線を向けてくれる。くせっ毛の髪は、ゆらゆらと何をしてもなびく。1本に纏めているから、尚更だ。挨拶をしてくれたが返そうにも返せない。僕は、血を飲んだあと必ず喉が痛くなる。だから声を発するコトも難しくなる。だから、そんなときは手を振って挨拶するしかならない。
❄「…? …類、血を飲んだあと…?」
僕のことをよく知るまふゆには、すぐにバレてしまう。まふゆじゃなくてもニーゴの皆ならすぐに分かってしまうだろう。そもそも、隠しているワケではないけれど。心配はさせたくないから、誤魔化そうとは、する。
🎈「ふふ、けほっ、ッッ、うん。少し、ね、ッ」
❄「類、無理はしないで…、 」
🎈「…う、ん。ありがと、っ、ッッ…」
***
扉を開け、リビングに入る。そしたら、瑞希しか居なかった。きっと奏と絵名は、作業して寝ているのか、もしくは作業中だろう。少しは、休んで欲しいけれど。言っても休んでくれないだろう。2人は意志が強いから。
🎀「おはよーっ! 類!」
❄「瑞希…類、血飲んだあと」
🎀「え、!? そっかーっ、それじゃ、ムリしなくていいから! この瑞希ちゃんにお任せを! 」
少し、瑞希のノリの良さに笑ってしまう。やはり、瑞希はみんなを笑顔にしてくれる。まるで、
🎈(司くんたちみたいに)
そして、瑞希たちに視線を向ければぽかん、と口を開けていた。
🎈「えっと、どうしたの…、?」
❄「類が笑ってるの久しぶりだから…、」
🎀「ホントだよ、!! 類、いつから笑ってなかったっけ、!?」
❄「私たちと会ったときはもう、感情なかったよ」
🎀「じゃあ、中学のときからってコト、!?」
❄「うん…、」
🎈「…、そんなんだったかなあ…、」
❄/🎀「そんだったよ/、!」
🎈「2人が言うならそうだったんだ…、」
🎈「なんでかわかんないんだけど…、あんまり覚えてないんだよね…、」
*…───…*