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「隕石でも降ってこねぇかな」

深夜2時 丑三つ時

光を全て吸収してしまいそうな暗闇の中を今にも倒れてしまいそうに、両腕を垂らしながら歩くヒョロガリ男がいた。

その様子はホラー映画のゾンビのようだ

彼の名は芦原理久アシハラリク

短い黒髪に丸メガネ、薄茶のジャケットが印象的な、 どこにでもいるなんとも冴えない大学院生だ。

毎日毎日同じ作業の繰り返し、そんな生活は理久が求めていた生活ではなかった。

「つまらない教授の授業を聞き、バイトでは先輩の彼女の浮かれた話に無理矢理笑顔作って… 」

築35年のボロいアパートの錆びた階段を手すりを掴みながら、最後の力を振り絞り登った。

「今頃、計画では彼女がぁ…」

大学入学祝いに母から貰ったボディバックの奥に手を伸ばし、ガサゴソと家の鍵を探す。

数分たっても一向に鍵が見つからない。

ムカつきと焦燥感で発狂してやろうと思った時、ふとパーカーのポケットに手があたる。

手を突っ込むとあんなに探した鍵が、すんなりと出てきたのだ。

「はぁ、だっる… 」

「ただいまー」

ドアノブに鍵を差し込み、ドア開ける。

その瞬間の謎の違和感を感じた。生活感の中に異物が混じっているようなそんな気がした。

玄関には小さな黒のレースアップシューズが綺麗に揃えて置かれている。

さらにヴァルハザクの鳴き声がかすかに聞こえた

俺の頭を膨大すぎる情報を処理できず、フリーズしてしまった。

ーー明らかに俺のではない、人など呼んでいないし周りに中のいい女友達など…当然いない。

異様の正体を確かめるため、俺は少し怯えながら扉を少し押した。

「おかえり、芦原理久」

つやのある大人の女性の声が聞こえた。

長く艷やかな黒髪、切れ長でミステリアスな目、古い着物にレザージャケットを羽織った女性がソファに横たわりながら、俺の3DSでダブルクロスに興じているという、明らかに異様すぎる光景が自宅の一室に広がっていた。

何より恐ろしいのは、俺の楽しみにとっておいたビーフシチューの残骸がテーブルの上に置かれているのだ。この女が食べたのだろうな、

うん、それ以外あり得ない

女は目を細め、怪しげにこちらに微笑んだ。

「君の家は楽園だね。」

不法侵入者は俺のマグカップを当然のように使いコーヒーをすする。まるで不法侵入者とは思えない程の余裕ぶり、俺が家を間違えているのかと錯覚するほどだ、

この女には、倫理観が備わっていなのだろうか。

「私の欲しいものが大体揃っている。後は書籍が欲しいな、他には…」

なんだこの女、人の家に不法侵入し、私の家だがと言わんばかりにくつろぎ、挙句の果てには家のレビューをご丁寧に言うのだ。いつもは感情を出さないのが、ポリシーだがこの時は頭にきた。

「はぁ?!

さっさと引き渡して、一刻も早くふかふかの布団様で寝るという使命があるんだ。

ダイヤル画面を開き、警察に連絡しようとすると

「待て、芦原理久」

不法侵入者が俺のスマホを持った手を持ちあげ、低く、冷静な声で言った。

「なにするんですかっ、」

手を振り払い、不法侵入者を睨みつけるが、残念ながら間接攻撃は効かないらしい

女はまたもや余裕そうに笑みを浮かべた。

「あっ、名乗るのを忘れていたね」

どれだけマイペースなんだよ、と怒りを通り越して呆れていると、

ん?何処かでこの顔を最近見たような…

突然頭の片隅からこの女の名前が、呼び覚まされたのを感じた。

あっ、思い出したこいつは確か、 最近問題を起こして訴訟された…

「奇才民族学者の霧島夜凪だ」

なんで犯罪者がここにいるんだ!!早く警察を呼ばないとっ…

床に落ちたスマートフォンを一刻も早く取ろうと手を伸ばすと、横から可憐な女性の手がそれを奪い取ってしまったのだ

「君がすることはわかっている。私を警察に引き渡すつもりだろう?」

「あぁ、そうだよ。何か文句でも?」

霧島は不気味に口元を緩めた。

「困るのよ、今晩この街で大事件が起きるの」

こいつ自分の地位を利用し、適当いって見逃してもらおうとしているのだろう。その顔が何よりの証拠だ。ビーフシチューにかけて、女の思惑通りにいくわけにはいかない

「あなたも知ってるでしょう?最近立て続けに犯人不明の不審死が報道されているのを?」

(ビーフシチューには申し訳ないが

彼女の言う通りだ、 この街では一般人、芸能人、政治家と役職、年齢問わず無差別殺人が立て続けに起きている。

この事件の不可解な点は、被害者が原因不明の不審死であり、犯人の痕跡が残されておらず、世間では幽霊の仕業では?と半都市伝説化している。

その影響で不穏な空気で街が包まれている。

「芦原理久、あなたの卒論の内容は都市伝説と民間信仰の相関だったかしら?」

「あぁ、そうだが」

なんで冴えない大学院生の俺の卒論を知っているのかが不思議に思いつつも、今重要なことではないと判断し、流した。

霧島は真剣な眼差しで続けたのだ。

「あなたの力を貸して欲しい。」

俺は鼻で笑った。

「あんたみたいな頭脳の持ち主に、惚れられる程の頭は残念ながら持ってないが?」

霧島も鼻で笑い返した。

「論理で動き、冷静な視線を持っている、非常識を信じない。現実的な思考の持ち主だ」

「君のその褒められる程の頭は、私にとって重要な鍵になるんだよ」

霧島は買いかぶりすぎだ、冴えない生活を送る大学院生だ。言う通りだとしたらもっと違う生活を送っているだろな

「俺は大学院生だ、それも冴えないな」

俺は面白くない自虐をかます

「十分だ」

霧島は周りの大人と違う、汚れのない純粋な目で静かに言った。

「芦原理久、私の助手になれ。私と君でそこにある”揺るがない真実”に手を伸ばせる

その言葉はなぜだが無性に心に響いた。

目の前にいるのは不法侵入者なのに、訴訟されて報道されていたのに、危険人物なのは頭ではわかっているのに、なぜだろうか…

霧島夜凪について行きたいと思ってしまう頭のおかしい自分がいる。

この世界の謎に首を突っ込んでしまいたいのだ。

「……一つだけ言っておくぞ」

霧島はまた怪しげな微笑みを浮かべている。

「あぁ」

「次勝手に俺の食べ物を食べたら、許さないからな。あと不法侵入しないこと!!」

「わかったよ。よろしくな理久」

彼女は満面の笑みで答えたのだ

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