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「…はあ」

月明かりがオレ…いやぼくを煌々と照らす。今日も1日、ニンゲンやら魔物やらを処刑して、好きでもない人間達に愛想を振りまく。正直、この仕事は好きじゃない。全身に返り血を浴びるのも、気持ち悪い視線を送られるのも、狂っている”フリ”をするのも。でもこれが魔王としての役目だから。そう言い聞かせて頑張る日々。いっそのこと普通のニンゲンになりたい。普通に産まれて、普通に生きて、普通に死ぬ。そうできたら、らくだよねー。

「…はぁぁ」

本日2度目のため息。「ため息は幸せが逃げる」って誰が言ったか知らないけど、もしそうならぼくは幸せとは一生サヨナラかもしれない。いや、あの日の地点でもうサヨナラしてたか。じゃあいいや。

重い腰を持ち上げて、家に帰るか、と決意して歩き出そうとしたその時、路地裏から物音が聞こえた。いつもなら気にしないけど、なんとなく気になったからそっと音のした路地裏 に入る。

「…猫、だったのかな。」

本日3度目のため息をつきそうになったその時、物陰からヒョコッとなにかが出てきた。

「…とーや?」

あの日の記憶が頭の中を駆け巡る。淡い思いを抱いてしまう。

もしかして、いや、あのこは、でも…












“とうや”が小さくなって帰ってきたのかも…

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