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「やぁぁぁっ! 『太刀風旋風波・八枚刃』!! ピンポイント展開!!」
莉子がスキルを使おうとすると、監察官選抜の動きが鈍る。
これは当然のことながら、『苺光閃』に警戒するためである。
『苺光閃』は決まりさえすれば一撃で戦闘を終わらせる極大スキル。
しかもそんなスキルを溜めの時間が必要ではあるものの、連発できる莉子の煌気総量。
誰だって脳裏をよぎる嫌な予感には勝てない。
五楼京華もそれは同じだった。
もちろん、ほんの1秒にも満たない刹那ではあったが、彼女は剣を引いてガードに移れるよう備えた。
だが、放たれたのは『苺光閃』ではなかった。
莉子の読み勝ちである。
上級監察官との読み合いに1度だけの局地的なものではあるが勝利する莉子。
彼女は日々成長していく。
『あっとぉ! 五楼上級監察官が小坂Aランク探索員の風スキルで押し戻されるぅー!! 何なのでしょうか、あの渦を巻く刃の嵐は! 見た目は『ライトカッター』に似ていますが、威力はけた違い!! 分かりますか、逆神Dランク探索員!?』
『ああ、あれですか? ……『スーパーライトカッター』ですね。南雲監察官室では必修スキルですよ!』
「ぶふぅぅぅぅぅっ!! おおい! 誰かあの子を解説席から引きずりおろせ!!」
「ヤダなぁ、南雲さん。下の者の責任を取るのが上官の仕事っすよ!」
南雲は「その仕事をしようとしているんだ! 離せ、山根くん!!」と、コーヒーで汚れた白衣を翻している。
その間も六駆の適当おじさんテイストな解説は続く。
『あれはですねー。南雲さんが昔、中国で修行をしていた時に、アレですね。なんか幻の生き物を見つけて、そいつから閃いたらしいですよ!!』
『なんとぉ! 知られざる南雲監察官の過去!! さすがはトリックスターを揃える監察官室の長だけのことはあります!!』
『あとは、インドとタイの山奥で修行して、アメリカの荒野で修行して。そうそう、南極でオーロラ見て思い付いたのが南雲さんの必殺技の『紫陽花』です!!』
『聞けば聞くほど凄まじい経歴! ですが、戦局に動きがあります! この続きは、月刊探索員で特集を組んでもらいましょう!!』
南雲は「山根くん! 私が大変な事になってるんだ! 行かせてくれぇ!!」と叫んでいるが、山根健斗Aランク探索員を振りほどけない。
若さの勝利である。
『五楼上級監察官が退いて出来た空間に、屋払Aランク探索員が斬り込むぅ!! そこに小坂Aランク探索員も続くぅ!! 後方からは椎名Aランク探索員が弓スキルで援護射撃! 雨のように矢を飛ばしております!!』
Aチーム、反撃の時が来た。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「おっしゃあ! 『ソニックレボリューション』!!」
屋払の加速スキル『ソニックダンス』を更に強化した『ソニックレボリューション』は、六駆の『瞬動・二重』とそん色のない速度での行動を可能にする。
「おらおらぁ! いくぜ、いくぜぇ!! 『ソニックラッシュ』!!」
「屋払さん、援護するにゃー! 『移動する鏡反射盾』!!」
屋払の速攻。殴打の連撃は55番と久坂を襲った。
すぐに反撃する55番。
だが、既にクララが実に良い仕事をしていた。
「おう、ちぃと待て! 55の!!」
「うぉぉぉ! 『ローゼンランツェ』! 『ローゼンランツェ』!! 『ローゼンクロイツ』!! 『ローゼンクロイツ』!! う、うわぁぁぁぁ!!」
「じゃから待てっちゅうたろうが……。あーあー。花びらまみれじゃあ。こりゃあどうにもならんで。痛いのは嫌じゃし、ワシらはここまでじゃのぉ」
久坂剣友と55番が同時に「降参」を意味する「負けましたボタン」を押す。
すると、彼らの体はステージの外へと転送される。
これは【稀有転移黒石】を応用した装置で、その操作は木原監察官室所属の福田弘道Aランク探索員が担当している。
彼に任せておけば、だいたい問題はない。
一気に2人を落としたAチーム。
攻め時を見極めるのは優秀な指揮官に求められる資質のひとつ。
「雲谷さん! お願いします!!」
莉子はとっておきを発動させる。
雲谷陽介が「ははっ、了解」と応じると、次の瞬間には最前線へ移動していた。
「これねー。痛いんですよ、足首とかが。あんまりやりたくないんですけどねー。リーダーの指示なら仕方ないですよねー。ははっ、もう一回! 『両足銃・点火』!!」
両足に煌気銃を具現化して、その反動を推進力に変換する事で驚異的な移動力を発揮する雲谷のスキル。
木原監察官の『ダイナマイトジェット』と仕組みは同じである。
「ははっ! 雷門さん、見つけましたよー! お覚悟を! 『衝撃銃・麻痺』!!」
雲谷陽介はリアリストである。
戦局を見極めて、穴を見つけたらそこを突く。
慈悲など彼は持たない。
その代わりに、笑顔で応じる。
「山嵐くん! 危ない!! ドゥウッフッヒィー!! ぐあぁぁぁっ!!」
「雷門さぁぁぁん!! お、俺のために……身を挺して……!!」
雲谷の放った近距離射撃のターゲットは山嵐助三郎。
雷門の性格を熟知していないとできない判断だが、雲谷は戦い慣れした感性で「この人は弱い者を絶対に守る」と確信していた。
結果、雷門善吉は麻痺の状態異常をもろに喰らい、奇声を挙げて倒れる。
慌てて山嵐が「負けましたボタン」をプッシュ。
雷門監察官と一緒に山嵐も場外へと転送された。
『まさに電光石火ぁ! 一瞬で監察官選抜の4名を落としたAチーム!! 山嵐Bランク探索員はまだ余力があったようにも思えますが!?』
『いやー。良い判断だと思いますよ。ぶっちゃけ、山嵐くんが残ってても邪魔になるだけですからね。そこまで考えて決定打を撃った、雲谷さんが凄いです。いやー。あの人は絶対にシリアルキラーですよ。怖いなぁ!』
『逆神Dランク探索員の仲間と言う事でよろしいですね!』
『えっ!? 僕は違いますよー。嫌だなぁ!』
単身で残存している五楼京華。
これが戦争ならば、ここからでも戦局をひっくり返す手はいくらでもある。
が、今回は模擬戦闘訓練。
これだけの連携を見る事が出来れば、目標は果たされたと言える。
「ふっ。なかなかどうして。やるではないか、貴様ら。この五楼京華に白旗をあげさせるとはな。……参った。降参だ」
五楼も「負けましたボタン」をポチり。
『決着ぅー!! チームA! 5人全員残しての完封勝利だぁー!! これはお見事としか言えません! いかがでしょうか、逆神Dランク探索員!!』
『うん、及第点ですね。そもそも、5人全員生存は絶対条件ですから。厳しい見方をすると、もう少し危険を減らしたかったですね』
『もはやこの人の上から目線はどこから見下ろしているのか!! 謎の説得力があります! 逆神Dランク探索員!! それはさておき! Aチームの勝利です! コングラチュレーション!! お疲れさまでした!!』
六駆の言ったように、完璧な戦闘ではなかった。
これがアトミルカ相手だったら、屋払は負傷していただろうし、そうなると連鎖的に更なる怪我人が出たかもしれない。
とは言え、監察官たちが忖度抜きで襲い掛かる中、臆せずに指揮を執り続けた莉子は見事だったと六駆は愛弟子を心の中で褒め称えた。
『さあ! それでは続いてBチームと監察官選抜の模擬戦闘に移りましょう!!』
『はい! 楽しみですね!』
『……。逆神Dランク探索員。あなたも次の戦いに参加されるのでは?』
『えっ!? 僕も戦うんですか!?』
南雲がようやく実況ブースへと這いながら辿り着いた。
「当たり前でしょうよ、君ぃ。連携強化が目的なんだから! 逆神くん、出番だよ!!」
「えー。やだー。僕、全然モチベーションが上がらないんですけどー」
最強の男はメンタルが弱い。
しかも彼を制御できる莉子は既に戦闘に出ており、南雲は訓練に参加しない。
嫌な予感が立ち込めて来た。
コメント
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いやあ、第288話、めっちゃ熱かったですね! **莉子の読み勝ちが最高でした。** あの一瞬の隙を突く“フェイント”の使い方、見事でしたよ。相手の警戒を逆手に取って“太刀風旋風波”を決める、まさに勝負強さが出てましたね! 雲谷さんの容赦ない“慈悲なき動き”と、それに気づく莉子の指示もナイス連携。そして五楼さんが潔く「降参」したシーンは、彼女の騎士道精神を感じて痺れました。 ただ、終盤の逆神くんのやる気ゼロ発言が不穏すぎて笑いました(笑)。この流れだと次回はBチームですが、あの“最強のメンタル弱者”が絡むとどうなるのか…めっちゃ気になります! 続きが待ちきれないです!
裏五条
22,874
#ダンジョン
リーさん
368
#現代ダンジョン
夜鐘
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