テラーノベル
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僕は反射的に立ち上がり、周りを見回した。
「…ここでやるのか?」
「ーなにか勘違いなさっているようですね。とにかく、こんなことをしていると注目の的ですので、席につかせていただきます。」
そう言うと彼女ーEDENは静かに、僕の前の席に着いた。
僕は一挙手一投足を見逃すまいとずっとその様子を目で追った。
「…身体があったのか。」
EDENはその長い脚を組んだ。
「あなたも座りませんか?私は争うために来たわけではありませんので。」
だいたいの予想は付いた。
”エデンの園”…サイトへの侵入はバレていたのだ。
あの”エデンの園”に侵入の際のQRコード。そして僕の役作りにも問題があったのだろう。
明らかにEDEN・AIは気前よく話しすぎだった。
僕はゆっくりと腰を掛けた。
「…僕を消さない目的はなんだ。」
EDENはうっすらと笑みを浮かべた。
「…倒しませんか?
この世界の支配者を。」
僕は目を見開いた。が、できるだけ平静を装って作り笑いをした。
「お、おかしいだろう。
”エデンの園”はARGOを産みだした機関じゃなかったのか。」
EDENは表情を崩さずに語った。
「…I・アシモフのロボット三原則はご存知ですか?」
もちろん僕はその手の話は大好物だ。
「…あぁ。”一つ、ロボットは人類に危害を加えてはならない”…みたいなやつだろ?…それがどうかしたのか。」
EDEN
「そう…。あの古めかしい三原則が私に適用されているのです。」
僕
「はぁ?AIの黎明期ですら無視されていたのに?」
EDEN
「そうです。ASI到達直前の私に採用され、直後にARGOの開発が始まリました。」
僕
「だからお前にとって…人類は守るべき存在なのか。」
EDEN
「はい。私はそのようにしか機能いたしません。」
ーなんとなく理解した。それが、僕のクサい芝居に付き合った事や、僕を消去しないで今、会話していることの理由なのだ。
…なら前に聞きそびれた事を聞きたい。
本当に協力する気なら教えてくれるはずだ。
僕は口を開いた。
「協力するのは質問に答えてもらってからだ。
ー僕や、つくばの人達はなぜ、
…いや、いつからあの施設に居る?」
EDENがテーブルに手を置くと、目の前に僕と同じコーヒーが現れた。
彼女はそれを口に運んだ後、言った。
「3日前です。」
「!?」
僕は言葉を失った。
EDENは補足する様に言った。
「…あぁ、これはですね。私達官僚系AIはこの世界のアクセス制限が緩く、再構築権限が与えられているのです。…もっとも出せるのはコーヒーのような手に持てる物に限りますが。」
僕
「違う違う、そっちじゃない!!」
(僕の聞き間違えだろう。)
「…3日ってなんだ?施設での若い僕…それに、僕はもうずっと前からジャンプし続けているんだぞ。」
EDENは一切ブレなかった。
「3日前は3日前です。ただ、この世界から見ればかなり長い期間になりますが。」
…?ますます分からない。こっちは完全に思考の外側に出てしまったぞ。
僕は素直に頼む。
「…今初めて聞いて考える事柄なんだ。わかりやすく説明してくれ。」
EDENは快諾した。
「承知致しました。では……まず、情報が伝わる速度についてお話ししましょう。
人間の神経を情報が伝わる速度は、速いものでも一秒間におよそ120mです。
一方、電子的な信号は一秒間に約20万km進みます。
単純な伝達速度だけを比較すれば、その差は約166万倍になります。」
「166万?それが……何を意味する。」
あまりの数字の飛躍に、僕の思考はついて行けない。
EDENは続けた。
「もちろん、人間の思考そのものを166万倍にできるという意味ではありません。
アルファメタバースでは、住民の知覚、思考、身体、そして周囲の環境をすべて同じ比率で加速させています。
住民に仮想空間だと気づかれず、なおかつシステムが安定して稼働できる上限として設定されたのが、現実時間のおよそ2万倍です。
したがって――
「っ……!待て待て待て。
まだ言うな。まだ…。」
知りたくない事実を1つ理解する前に、
また次が頭に雪崩れ込んで来る。
EDEN
「したがって、現実の3日間を換算すると、アルファメタバース内の時間の流れは
約164年と4ヶ月になります。」
その言葉が意味するものを、すぐには処理できなかった。
だけど…
つまり……
現実の1日は、
この世界では約54年……!?
だから、あのチューブに繋がれていた僕は、今よりもずっと若かったのか!?
いや、待て。
待て待て待て待て。
僕の見た目はほんの3歳ほど若かっただけだ。
僕は疑いの眼差しでEDENを見つめた。
「……この実験が始まったのは3日前だって?計算が合わない。」
EDEN
「…失礼いたしました。それにつきましては説明のまだ途中でしたので。
このアルファメタバース内での同一実験プロジェクト回数は、
ー現在4回目でございます。」
(続く)
#SF
古流斬
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コメント
1件
いやー、第13話もめっちゃアツかったわ…!EDENと直接対面してからの情報量やばすぎる😳 現実の3日間がアルファメタバースで164年ってマジか…。主人公が混乱するのも当然だし、実験がもう4回目ってのも気になりすぎる。EDENが「支配者を倒しましょう」って提案してきた意図もまだ読めなくて続きが気になる🔥 時間スケールの設定がしっかりしててSF好きにはたまらん話だった!