「シャワーしてくるね」
「ん、行ってきな」
パタパタとバスルームへ駆け込む。
シャワーを全開にして備え付けのボディーソープで念入りに体を洗った。
無理やり捻じ込まれた部分は違和感がありジンジンするような気がする。
洗っても洗ってもその違和感は消えない。
(これが処女を捨てるってこと?)
綾音たちが『捨てる』と表現したとき嫌悪感を抱いたリカだったが、『捨てる』で合っている気がした。
まさに今日、リカは処女を捨てたのだ。
漫画やドラマなんかにあるドキドキした行為は、現実にはないのだ。やはり二次元の世界とは違うのだということを嫌というほど実感させられた。
「またしたくなったらいつでも誘ってよ」
「うん、今日はありがとう」
当たり障りのない言葉で淳志と別れる。
貼り付けた笑顔が剥がれないうちに、リカはバイバイと手を振って駅まで走った。ありがとうだなんて微塵も思わなかったけれど、そう言うしかないと思った。
もう二度と淳志とは会わない。
心にかたく決めた。
綾音からも「どうだった?」と感想を求めるメッセージが送られてきていたけれど返す気にならなかった。どうもこうもない、ショックでしかない。
もう、綾音たちとも距離を置こうと思った。
楽しく遊べる友達だと思っていたけれど、何か違う気がした。
どこでずれていたのだろう。リカはもっと普通の女子高生をしたかったことに、今更ながら気づいてしまったのだ。
綾音たちから誘われることに体よく断るために、バイトのシフトを増やした。
勉強なんてそんなに好きではないけど受験のためと理由をつけて塾にも通うことにした。
進路なんて決まっていないけれど、とりあえず進学を目指す。
そうしてリカは二度と過ちを犯さないために、用心深い大人になっていった。
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