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今や、日本には戦争を続けるだけの力は底を尽きていた。宣言が無いだけの敗北。


「祖国は、この現状をどう思う?」


この国で唯一私に命令出来るこの男は、死傷者数の書かれた報告書から目を離さないまま、そう聞いた。


「貴方が意見を求めるのなんて、一体いつぶりでしょうかね」


彼は、血と火器が飛び交う前線からずっと遠く離れた所に居た。だから真の惨状に気付けない。

残忍で成果の少ない作戦など、やめた方がいいはずだ。そう何度も提言しようとしても、いつも口を塞がれてきた。


「綺麗事でしょうが、私はこの戦争に将来性を感じません」


我が指導者は全く驚いて居なかった。それどころか、予想通りといった表情だ。彼も頭の何処かで分かっていたのかもしれない。


かといって、彼に同情する気は起きないし、内心を知ろうとも思わない。それだけの恨みがあった。


「ははは、祖国に否定されるとなると、存外堪えるものだ」


彼が万年筆を置いた時、左手で押さえたままだった書類は、新しい作戦の提案書のように見えた。


「そろそろ潮時かもしれないな」


──相手側の出した降伏提案書に調印されたのは、二日後だった。



「台湾も、今は忙しいでしょうか」


紙の上に筆を走らせる。『〜日は空いていますか?』大変な時期だからこそ、台湾に会いたいと思った。


戦後処理に入ってからは休む間もなく、十分に眠れない日もあった。けれど、確実に予約を入れられる日もあった。絶対に、台湾と会える日が。

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