TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

俺が風呂からあがってくるとリビングでは女性組がソファーを占領してワイワイ盛りあがっていた。


その輪の中には缶ビールを片手にした慶子 (けいこ) も混ざっている。


会社を作るだ何だと最近忙しそうにしていた慶子なんだが、合宿となると出てくるのな。


まあ、たんに京都が気に入っているだけかもしれないけど。


マリアベルは家族といっしょに居れて嬉しそうだな。デカくなったチャトをみんなで愛でている。


チャトも基地内では標準サイズに戻ってうろうろしているのだ。


茂 (しげる) さんはというと、お風呂あがりにマッサージチェアを堪能中だ。


「あ・ぁ・あ・ぁ・あ・ぁ・あ・ぁ・あ・ぁ・あ・ぁ・・・・」


倒されたリクライニングチェアからは気持ちよさそうな声がもれている。


ググっとお尻までしっかり揉みほぐしてくれるこのマッサージチェア、福岡の秘密基地にも置いているんだけど、茂さんのお気にいりなんだよね。


毎日秘密基地に下りてきては温泉と共に利用している。


(そんなに気に入ったのなら買えばいいのに?)


そう思わないでもないが、母屋には置くスペースがないらしい。


このマッサージチェアは結構デカいから、居間に置かれるとたしかに邪魔になるよね。


んっ? ああ、


こういった家電を動かしている電力はどうしているのかって?


ガソリンで動くタイプの小さな発電機を今は使用している。


どうして今はなのかというと、ダンジョンにお願いすれば100Vの電力ぐらいどうとでもなりそうなんだよね。


これについてはダンジョン・イナリが覚醒したのちに頼んでみようかと思っている。


健太郎 (けんたろう) は何してるのかって?


リビングの端の方で座布団敷いて花札をしている。


花札やトランプは紗月 (さつき) が気を利かせて持ってきているようだ。座布団もかな。


それでもって健太郎を中心にシロ、ヤカン、タマが座布団のまわりに集まって『おいちょかぶ』をしているのだ。


(シロの奴、また器用に札をめくっているなぁ)


賭けているのは袋に入った小さなキャンディーかな。


どうやらシロが一人勝ちしているみたいだ。シロのよこには沢山のキャンディーが置かれている。


うんうん、健太郎もそれなりに合宿を楽しんでるみたいでよかった。


しっかり子分の面倒を見れてるようで、シロも偉いぞ。


健太郎の肩をポンッと叩き、牛丼3つとちゅーるをその場に出して俺は自室へと引きあげた。






そして次の朝。


ぺしぺし! ぺしぺし!


『おきる、あそぶ、はしる、うれしい、おやま、さんぽ』


うっ、ううん、……もう朝か。


「おいメアリー起きろ、散歩に行くぞ」


いつの間に潜り込んだのか、となりで眠っていたメアリーを起こし俺は顔を洗って出かける準備をする。


自室を出た後、とりあえずリビングに行ってみたが……。まだ誰もいない。


キッチンで朝餉の準備をしていたキロに一声掛け俺たちは表にでた。


大岩まえの参道はまだ夜が明けたばかりで薄暗い。


――うっ、寒!


さすがに10月ともなれば山の朝はすこし肌寒いな。


「まずは末広の滝まで出て、そこから麓へ下っていこう。本殿でお参りしたらお山をぐるりと一回りしてみようか。ヤカン先導をたのむな」


「はい、ヤカンにおまかせください!」


声を弾ませながらヤカンは嬉しそうに前を走りだす。


その後ろをシロとメアリーが続く。


パンパン!


本殿にて朝の参拝を済ませたあとは、下りてきた方とは逆に荒神峰 (こうじんみね) の方をまわって山頂を目指した。


散歩が終わると訓練場に集まって朝稽古で汗をながす。


ここでは剣や槍の指導、それと模擬戦が主になるかな。


朝食を済ませたら、いよいよ特訓開始!


とはいえ、やってる事といえばいつもの通りで、ダンジョン探索を行ないながらの実践訓練である。


レベル上げを効率的におこなう為、しっかり組分けしてからダンジョンへ臨んでいく。


まず、初心者である茉莉香 (まりか) は低階層からのスタート。


俺とシロがしっかりとサポートに付く。


続いて茂さん・紗月・剛志 (つよし) さん・久実 (くみ) さん・楓 (かえで) ・慶子の6人はパーティを組んでもらって7階層から。


ひとりだけハイレベルな健太郎はタマと共に10階層からのスタート。サポート兼連絡係としてヤカンに同行してもらう。


それでもってダンジョンには入らないメアリー・マリアベル・キロの三人は、みんながダンジョン探索をしている間に山を下りて買い出しをおこなってもらう手筈だ。


チャト?


チャトはご飯食べたあと表の大岩の上でまるくなっている。陽ざしがあたる岩の上はぽかぽかしていてとても気持ちよさそうだ。






「じゃあ俺たちも行くか。準備はいいよな?」


「いつメンもいいけどぉ、ゲン様とシロたん一緒なのもチョベリグ!」


(いつメン? あぁいつものメンバーね)


「おお、チョベリグとか懐かしいなぁ。それって平成ギャルじゃなかったっけ?」


「ウィウィ、また流行ってんだよー。わたしたちの母親世代のヤツ」


あー、なるほど。


今じゃ親子でギャルとかもあるみたいだしね。


みんなをそれぞれの階層へ送った後、俺はシロと茉莉香を連れて4階層へ飛んだ。


今日は魔法の訓練もやっていく。まずは魔力回路を広げるところからだな。


「茉莉香、こっちに来てシロの背中に片手をのっけてくれ」


「ほーい。ん~と、これでオケ? うわぁシロたんふかふかじゃん」


「よし、じゃあそのまま体内の魔力をまわしてみてくれ。魔力操作の訓練でいつもやってるだろ」


茉莉香はその場で目を閉じると、体内で魔力循環をはじめた。


「うんうん、いい感じだ。じゃあシロ、アシストのほう頼むな」


(り!)


「あっ……、あっ……、ああぁぁぁあああぁぁぁぁん。なにこれなにこれ! しゅき!」


「おおい、ちょっ、ストップストップ!! ……それって大丈夫なのか?」


「ウィウィ、ゲン様。これスゴすぎ。体中がムニュムニュポッポしてよき!」


(ムニュムニュポッポ? なんじゃそりゃ?)


すこし顔が赤くなってるけど、本当に大丈夫か?


「ん……、じゃあもう一回いくぞ」


「あっ……、来てます来てます。ああっ……、ああぁぁぁあああぁぁぁぁん。これこれしゅきしゅき!」


茉莉香はヘナヘナとその場にへたり込んでしまった。


シロの魔力に当てられたのだろうか? 茉莉香は恍惚とした表情をうかべている。


ダメじゃねーかよ。






マリカ・カトウ Lv.4


年齢 17

状態 通常

HP 2424

MP 4141

筋力 14

防御 11

魔防 30

敏捷 13

器用 12

知力 26

【特殊スキル】 付与魔法(U)

【スキル】 魔法適性(聖、炎、氷、毒)魔力操作(4)

【称号】 退魔士、付与術士、

【加護】 ユカリーナ・サーメクス



シロを介しておこなった魔力回路の拡張により茉莉香の魔力操作は一気に4まで上がった。


すごく伸びたよなぁ。


やっぱ退魔士の家系ってのがおおきく関係しているかもな。


ユニークスキルの付与魔法なんてのもあるし、こうなってくるといろいろと試してみたくはなるよなぁ。


でも、まずは攻撃魔法からだよな。


俺はインベントリーから魔法バトンを取り出しそれを茉莉香に手渡した。先端にお星さまがついてるやつだ。


この魔法バトン、実に20種ほどのバージョンが存在する。(マリアベルのせいで)


お星さまのやつだけでも7種だな。それからハート型も数種ある。あとはミッキーだろう、キティちゃんだろう、くるみや小麦ちゃんのものだってあるな。


…………はぁぁぁ。


それじゃあ氷魔法からいってみますか。


アシストはシロに任せ、茉莉香はアイスバレットを放ちながらダンジョン内を進んでいく。


うん、なかなか様になってきたぞ。


次は炎魔法もいってみよう。


ヴァーンボールを試していく。


――凄!


ヴァーンボールはファイアーボールの上位互換。


見た目でいえば赤い炎か青い炎かぐらいの違いでしかないけど、着弾したときの爆発力は段違いだ。


初心者の魔法とはとても思えない威力である。


そのぶんMPの消費が大きく数は撃てないだろうが、切り札としては申し分ない。


休み休み撃っているにも関わらず、氷魔法と炎魔法のレベルは既に3まで上がっている。


シロのアシストだってもういらないぐらいだ。


氷魔法も炎魔法も特殊魔法に分類されるもので、習得するにもレベルを上げるにもそれなりに努力と時間を要するものである。


それなのに……、


「いえーい! ゲン様ピース。あーしってすごくない!?」


「…………」


調子にのってらっしゃる。一人称もあーしになってるし。


たしかに今の成長速度は異常だな。


それだけに魔法が暴走しないよう魔力制御には十分な注意が必要になってくるのだ。


今回の合宿ではそのへんも頑張ってもらいましょうかね。


それから茉莉香が使う得物についてだが。


彼女は後衛の魔法職なので、魔力効率が上がるよう魔法杖を持たせようと思っている。


この魔法杖であるが、


こちらのほうもラインナップはドドーンと40種類取り揃えている。(マリアベルのせいで)


それでもって実際に使用したのはたったの3本。3本なのだ。


残りはきれいに箱へ収められコレクションルームに保管中ですな。


(いつ日か、彼らに日の目があたることを願っております)


そして此度、豊島園の跡地にできた【スタジ○ツアー東京】に行きたいなんてことをいっていた。


ダイ○ゴン横丁にあるオリバンダーの杖店なんかに行ったら、魔法杖のラインナップがまた凄いことになるんだろうなぁ……。(遠い目)


「ゲンさま、あーしも剣にぎって前衛でビシバシいきたいし」


「…………」


てなわけで茉莉香には鋼鉄のショートソードにポリカーボネート製のラウンドバックラー(280mm)を持たせている。


あっ……、魔法バトンも持っていくんだ。


しっかり腰ベルトに差し込んでいる。お星さまが気にいったのかな。


……杖はいりませんか?


しばらくは単体のコボルトかゴブリンしか出てこないので、これで様子を見てみましょうかね。


魔法剣士を目指すのなら踏み込みの練習もしないといけないし。


明日からは朝稽古も参加ということで。






おっと、もうすぐお昼になるな。一旦基地へ戻らないと。


俺はダンジョン・マップを開いてみんなの位置を確認する。


現地で点呼をおこない人数確認しながら転移を繰り返した。


秘密基地へ戻ってきたみんなは自室へ向かいシャワーと着替えを済ませると再びリビングに集まってきた。


買い出しにでた三人はまだ帰ってきていないようだ。


そこで昼食のほうは山を下り麓で好きなものを食べようということになった。


みんなが集まったところで転移場所をどこにしようか相談すると、


せっかくなので山道をてくてく歩いていきたいという。


まぁレベルアップしているみんなだ、麓までならあっという間だろう。


途中で茉莉香が遅れだしたのでシロに乗せて下山させた。


そしてここからは各自で自由行動。


3時までにはお山に戻るようにと伝えその場で解散した。


さ~て、何を食べようか?


ド定番でいくと【きつねうどん】や【いなり寿司】になるのかな。


………………


そして3時から同じメンバーでダンジョン探索を行ない秘密基地に帰ってきたのは夜の7時。


夕食は昨日とおなじで祇園へ繰り出すことになっている。


お店の方はキロが手配してくれているので、こちらから転移してお店に向かうだけだ。


この日は90分かけてゆっくり焼肉食べ放題を堪能した。


えっ、これからカラオケに行くの?


みんなまだまだ元気いっぱいだな。


しかし茉莉香だけは、


「みんなゴメーン、あーし今日は限界みたい」


ふらふらしながらみんなに手を合わせる茉莉香、今にもまぶたが落っこちそうだ。


「じゃあ私もいっしょに戻ろうかしら。明日もあるんだからみんなもほどほどにね」


「「「「はーい!」」」」


慶子は茉莉香と一緒に基地へ戻っていった。


………………

…………

……


そして次の朝。


朝稽古を終え朝食をすませると、各々は防具を身につけダンジョンへ潜っていく。


こうして3泊4日でおこなわれた強化合宿は無事に終了した。


ダンジョン・イナリは覚醒前ということもあり、潜れる階層に制限はあったがみんな楽しくレベル上げができたようである。


それに集めた魔石やポーションは慶子が適正価格で買い取っており、


『お小遣いまでもらえた!』とみんなニコニコ笑顔で帰っていった。


なるほど、慶子の奴ちゃっかりしてるよなぁ。


もしかしたらこれが本来の目的だったりして?

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚