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この物語はフィクションである。
20☓☓年4月5日。
昔からバドミントン家庭で育った私は、小学校のクラブチームに所属した。
「市立菜の花小から来ました。小学3年の青瀬遥です」
そう言って頭を下げると、ところどころから拍手が聞こえる。
「3年生の人手あげて〜」
私が所属したクラブチームの代表である坂本さん。この方は高校のころに全国大会に行っており、実力のある凄腕コーチだ。
ぱっと見このクラブチームは10人程度。最近できたばかりの新規チームである。
「じゃああそこに並んでもらえる?」
先ほど手をあげていた人の隣に立つ。3年生は私で2人目。もう1人は男子みたい。
「今日もいつも通り練習していきましょうか」
坂本さんの指示でランニングがはじまる。10分間走というのか、ひたすら10分間走るだけの簡単なメニュー。
だが…そこまで体力が持つかが重要。はじまって3分程度だが、もう息切れしている人がいる。
「ファイト〜!」
1人がそう声をあげると、他の人たちも続けて「ファイト〜!」と声をあげる。
すると、ピー、とタイマーの鳴る音がする。
走っていた人たちはみんな倒れ込んで顔が赤くなっている。つらそう。だけど、楽しそうに笑っていた。
「いいチームでしょ」
その光景を見ていた坂本さんが近寄ってくる。
「はい、今まで見たどこよりも辛くて、どこよりも楽しそうです」
自然と笑みがこぼれる。ほんとに楽しいチームだ。
「あ、遥ちゃんだっけ?私神崎奈々!よろしくね!」
こちらに手を差し伸べてくる。
「うん、よろしく」
そこからは奈々ちゃんがメニューについて教えてくれたり、コツを教えてくれたりして、アップメニューを一通り終えた。
やっぱりどこのチームも同じようなメニューばっかりなんだな、と思っていたのもつかの間。
さっきまで疲れた顔をしていた人も次々と立ち上がってキャプテンである、飯塚悠斗の元へと駆け寄っていった。
「じゃあ奈々と俺で、彩乃と心葉。小学生は…」
次々と指示を出す飯塚さんについていけないでいると、奈々ちゃんが駆け寄ってきてくれた。
「ここからトムジェリ!毎日白熱してるんだよ」
トムジェリとは、対角線上からスタートして相手チームの背中をタッチしたら勝ちとなる協力ゲーム。
さすがの私でも知ってるけど、毎日やるなんて聞いたことない。
「同じくらいの速さの人でじゃんけんして2チーム合計同じくらいになるようにしてるんだ〜!」
だからじゃんけんしてるんだ。私は誰と…
「遥と透な」
そう言われて私に近づいてきたのはさっき並んだとき隣にいた私と同じ3年生。透って言うんだ。
「透くん?よろしく」
「あぁ、よろしく。言っておくけど俺速いからな。お前とじゃんけんとか信じらんねぇ」
胸元に手を当て自信満々かのように鼻を鳴らす。
「そ。とりあえずじゃんけんしよ」
こういうタイプは大の苦手なので早めに終わらせようと手を出す。何も言わずのってくれて2回のあいこの末私が勝った。
「勝ちこっち〜!」
飯塚さんが手をあげている。奈々ちゃんとは別れちゃったな。
「あ、君が遥?俺飯塚悠斗。よろしく」
名前なんて知ってたけど。なんて言えず
「飯塚さん、よろしく」
と復唱する。
「悠斗でいいよ。んじゃ順番決めるか」
辺りを見渡すと、中学生が1人少なく感じる。
「向こう強くね?これ勝ち目ゼロ説」
男みたいな口調のこの人は齋藤彩乃ちゃん。さっき名前を教えてもらった。
「いけるだろ、…多分、まぁ粘るだけ粘ろうぜ」
上を脱いで半袖になっていく人たちを見守りながら話を聞くだけ聞く。今日は偶数だから順番が大事らしい。
「じゃあこれでいくか、」
悠斗くん、佐久くん、彩乃ちゃん、モモちゃん、私の順番に決まった。
佐久くんは小学2年生の1個下で、一番遅いから一番速い悠斗くんの次らしい。佐久くんのカバーを彩乃ちゃんがして、小学6年生のモモちゃん、そして速さ不明の私。
「よーいドン!」
坂本さんの合図で両者走り出す。速い。向こうのトップバッターは奈々ちゃんらしく悠斗くんと同じくらい。
佐久くんはめちゃめちゃ前で待機していて、悠斗くんがその分走ってる。これっていいのだろうか。
「頑張れ〜!」
モモちゃんが声をあげる。そういえばモモちゃんと佐久くんは兄弟らしい。熱が籠もるのも当たり前か。
順番がよかったのかリードは少しされたぐらいで彩乃ちゃんにまわる。彩乃ちゃんも速い。リードをなくしてくれて、次はモモちゃん。遅くもないし速くもない。
「次遥ちゃんね」
通常位で待機して相手を見ると先程じゃんけんした透くん。速いとか言ってたけど。
「頑張れ!」
モモちゃんからバトンを受け取り、全速力で走る。ちょうど真ん中地点で横を見ると、私が大幅にリードしているようだった。
「え、遥ちゃん速いね!?」
私が走り終えると、彩乃ちゃんが近寄ってくる。確かにこちらのチームがリードしてるみたい。
こうして5周ほど走ると、彩乃ちゃんが背中をタッチしてこちらの勝利。飛び跳ねて勝利を喜んでいた。
「遥ちゃん、早かったなぁ」
坂本さんにも褒められて、案外悪い気はしないかも。
こうしてアップメニューのすべてを終えた。