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#魔道具職人
こはる
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限定ガチャの現場を見たあとは、そのままパフォーマンスのスペースへ。
これは昨日発表した、誰でも何かを観せられる――そんなことを実現するために作られた場所だ。
人魚の演奏会と『創星剛鍛祭』の開催時間は決まっているから、私たちはその隙間時間を使って行ってみることにした。
近くには露店もたくさんあるし、軽く何かを食べていくのも良さそうだ。
「アイナ様……! 飴が……綺麗です……!」
パフォーマンスよりもまず露店に目がいったのは、セミラミスさんだった。
そこでは飴細工の職人が、その場でいろいろな形の飴を作っているようだ。
見ても楽しいし、きっと食べても美味しいのだろう。
「素敵ですね。何か買っていきます?」
「はわ……。で、でもお昼前ですし……」
「こういうお祭りのときくらいは、好きなときに好きなだけ買いましょう?
あまり無い機会なんですから、参加するならたくさん楽しまないと!」
「そうですか……? そ、そうですよね……!」
ぱぁっと顔を明るくしたセミラミスさんは、露店に近付いて、並んでいる飴細工をひとつずつ眺め始めた。
たまに職人から話し掛けられていたが、何とか頑張って話を続けているようだ。
「……凄い。セミラミスさんが話してる……!」
「あ、あはは……」
私の本音に、キャスリーンさんも苦笑せざるを得ない。
……そもそもキャスリーンさんが苦笑するのだって珍しい。
苦笑キャスリーンさん、可愛い。
そんなことをまったり思っていると、セミラミスさんが私たちの方へと戻ってきた。
顔を見れば意気消沈していて、さらに泣き出しそうになっている。
「はぅ……」
「え? ちょ、ちょっと、どうしたんですか!?
もしかして、何か嫌なことでも言われました!?」
「ふぐぅ……。アイナ様ぁ……。
……お財布、忘れちゃいましたぁ……」
「…………あ、そっち?」
酷く心配してしまったものの、原因はただのうっかりミスだった。
でもそれくらいなら、そこまで泣きそうにならないでも良いのに……。
「お財布……あっ!!」
突然言葉を慌てさせたのはキャスリーンさん。
軽く自身のバッグを覗いてから、恐る恐るといった表情で私の顔を見てくる。
「……え? もしかして――」
「申し訳ございません、私も忘れてしまいました……」
キャスリーンさんはキャスリーンさんで泣きそうだ。
セミラミスさんはともかく、まさかキャスリーンさんまで。
こういうミスはしない人だと思っていたんだけど――
……忘れ物キャスリーンさん、可愛い。
ちなみに私は、お財布はアイテムボックスにも入れてるから、忘れようが無かったりする。
お財布自体、いくつか持ってるしね。
「二人ともうっかりさんですね……!
それじゃ今日は、私が奢っちゃいましょう!」
「「えっ」」
「お財布を取りに戻る時間はもったいないし、遊び終わってからお金を返してもらうのも何だか嫌ですし。
お金のことを考えながら遊びたくも無いので、今日はパーッと出させてくださいな」
「で、でも……!」
「申し訳ないです……!」
「まぁまぁ、二人には普段お世話になっていますから。
――それで、最低銀貨10枚ずつ使ってくださいね」
「「えっ」」
私の思わぬ提案に、二人は改めて驚きの声を上げた。
「やっぱり私に出させてるって思いがあると、節約しちゃいそうですから。
そういう気遣いは要らないので、むしろそれこそパーッと使いましょう。
他人のお金で食べるご飯は美味しいですよ!」
「はわ……」
「わ、分かりました……?」
……でも、こういう露店でまとまったお金を使うのって、結構大変なんだよね。
たくさん食べるとか、あとはお土産を買っていくとか……?
となると、エミリアさんはきっと余裕なんだろうなぁ。
「それじゃセミラミスさん!
気に入った飴細工を買ってきてください! お金も渡しちゃいますから」
「あ、ありがとうございます……。いってきます……!」
「セミラミス様。せっかくですので、私にも何か見繕って頂けませんか?」
「……っ!?」
思わぬキャスリーンさんの依頼に、セミラミスさんは一回びくっとしたあと、首を縦に何度も振ってから露店へと戻っていった。
それを見たキャスリーンさんは良い笑顔をしていたけど、それを含めて、微笑ましい光景に見えてしまった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――カニ?」
セミラミスさんが笑顔で見せてくれた飴細工は、カニだった。
カニと言うのは、もちろんあのカニだ。横向きに歩くアレ。
赤色が見事に表現されていて、そしてなかなか丁寧に作られている。
「その……、可愛い……かなって……。あとは、美味しい……ので……」
「う、うーん……? まぁ、可愛いと言えば可愛いんですけど……」
あとは美味しいと言えば美味しい……し?
「あ、その、それで!
キャスリーンさんには、こちらを買ってきました……!」
そう言いながら、セミラミスさんはキャスリーンさんに飴細工をひとつ渡した。
「わぁ、綺麗なお花……!
ありがとうございます!!」
それは白色の、可憐な花の飴細工。
花びらの先端は少し鋭く、全体としては洗練された感じになっている。
葉の緑色も映えていて、私としてもなかなか好きなデザインだ。
飴細工の職人は|厳《いか》ついおじさんだけど、こういうことが出来るおじさんって、何だか凄い格好良いよね。
「なるほど、キャスリーンさんにぴったりですね!」
「食べてしまうのがもったいないくらいです♪」
ずっと保存が効けば、それこそずっと保存しておきたいくらいだ。
しかし飴細工だから無理なわけで――……いや、むしろ保存ができないからこそ、より魅力的に感じてしまうのだろう。
「あの……。それで、アイナ様にもひとつ、買ってきたんです……」
「え? やったー、ありがとうございます!」
セミラミスさんがおずおずと出してきた飴細工を受け取ってみると、それは……丸かった。
飴の透明感が似合わない、その風貌。見覚えはあるけど、まさかこんなところで見ることになろうとは――
「これは……、たこ……焼き……っ!
なんでやねーんっ」
そう、その飴細工は『たこ焼き』を模したものだった。
マーメイドサイドのたこ焼き! それは私が持ち込んだ、異世界の料理!!
……そしてそれを、敢えて飴細工で作るという暴挙。そしてそれを買って、私に差し出すという暴挙。
これにはさすがの私も、ツッコミを入れざるを得ない。
「な、何と言いますか……、その。お茶目な中に、透明感のある力強さを持っている……と、言いますか……。
私の中のアイナ様のイメージと……少し被ってしまいまして……はい」
私のイメージ――
……透明なたこ焼き!!
ちょっと言ってる意味が分からないです!!
「セミラミス様は、深い考えをお持ちなんですね。
私も、独自のアイナ様のイメージを持てるように頑張らなければ……!」
「いやいや! そんなイメージは持たないでいいから!!」
「え? そ、そうですか……?」
「そうです!!」
――まぁ、フォルム自体は可愛いけどさ、たこ焼き。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
おかしなところで盛り上がったあとは、引き続き露店を眺めながら、パフォーマンスも観てまわる。
パフォーマンスの内容自体は、私も知っているものが多かった。
ジャグリング……は、こっちの世界でも普通にあるんだね。
組体操のような、雑技団的な、複数人でやるアクロバティックな演目も多いようだ。
あとは小さな箱に入る軟体人間がいたり、逆立ちして人差し指一本で腕立て伏せをする人もいた。……これは、指立て伏せって言うのかな?
「はー……。いろいろあるものですね」
「そうですね……。
……人間って、不思議な分野で修行を積むものなんですね……」
セミラミスさんはしみじみとそんなことを呟いた。
しかし全員が全員、不思議な分野に進むわけでも無い。
人間は数が多いからこそ、少し変わった分野に進む人も出てくるのだろう。
さすがに石器時代、指立て伏せをやるような人はいなかっただろうしね。
「他人様に見せるものがある方は素晴らしいと思います。
私には一芸がありませんので、そういうものをお持ちの方は、観ていて羨ましくなります」
そう言いながら、キャスリーンさんがじっと私を見てきた。
「……?
私も、そんな芸は持ってないよ?」
「えっ」
「はう……。
アイナ様には……、錬金術があるじゃないですか……」
「錬金術は見世物じゃ無いですよ!?」
――錬金魔法を含めれば、例えばポーションを降らせることが出来る。それなら、花びらとかなら降らせられるかもしれない。
そこまでいけば見世物と認定しても良さそうだけど――
……うーん。でもやっぱり、見世物かと言われると……ねぇ?
コメント
1件
ああ〜もう最高だった!!🥺💕 収穫祭エピ、今回もめっちゃ楽しかったよ!!まずセミラミスさんとキャスリーンさんが揃ってお財布忘れるの可愛すぎません!?😭💦 そしてアイナ様が「今日は奢っちゃいましょう!」ってパーッと出すの、マジ優しくてかっこよすぎる…。でもその後のたこ焼き飴細工がアイナ様のイメージって言われたときのツッコミ、思わず声出して笑った😂✨ 透明なたこ焼き…意味わからんけど可愛い!みんなでお祭り楽しんでる空気がもう画面越しに伝わってきて、癒しと笑顔がいっぱいの回だったよ〜!!次も楽しみにしてるね🌸