テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
人外パロ〜
nmmn、捏造
rdgt
じゃあスタート!
rdは鏡の前に立っていた。
黒い髪、普通の服、どこにでもいそうな人間の姿。
外見だけを見れば、誰も疑わない。
――でも、中身は違う。
rdは自分が青鬼だということを知っていた。
怒りや悲しみが溜まると、胸の奥が冷たくなり、
人を追い詰めてしまいそうな衝動が生まれる。
だからrdは、人と距離を取った。
笑顔を向けられても一歩下がり、
親しくされるほど、逃げるようになった。
「優しいよね、rdって」
そう言われるたび、胸が痛んだ。
それは優しさじゃない。
――誰かを傷つけないための、自己隔離だった。
夜、rdは一人で歩く。
街の明かりの中では、人間のふりができた。
でも、孤独になると青鬼は静かに囁く。
「どうしてお前だけ、耐えている?」
「壊してしまえば、楽になるのに」
rdはその声を、何度も飲み込んできた。
ある日、誰かが泣いているのを見た。
声をかければ救えるかもしれない。
でも近づいた瞬間、胸の奥がざわついた。
――もし、この人を怖がらせたら?
rdは足を止めた。
そして、何もできないまま背を向けた。
それが正しい選択だったのか、今でも分からない。
rdは人間の姿をしている。
だから誰にも助けを求められない。
鬼だと気づかれないから、理解もされない。
それでもrdは今日も生きている。
青鬼を心に閉じ込めたまま、
誰かの世界を壊さないように。
もしこの物語を誰かが知ったなら、
rdはそれだけで救われるのかもしれない。
――人間の姿をした青鬼が、
必死に「人間でいよう」としていたことを。
rdは、ずっと「我慢する人間」だった。
怒っても笑って誤魔化し、
悲しくても「大丈夫」と言い、
怖くても誰にも頼らなかった。
誰かに嫌われるくらいなら、
自分が壊れたほうがいいと思っていた。
rdの周りには、強い人ばかりいた。
声が大きくて、主張できて、感情を外に出せる人間たち。
rdはその輪の中で、静かに息をしていた。
「お前は優しいよな」
その言葉は、褒め言葉のはずだった。
でもrdには、
「お前は黙って耐えろ」
と言われているように聞こえた。
ある夜、rdは一人きりで泣いた。
理由は覚えていない。
ただ、限界だった。
怒り、嫉妬、孤独、恐怖。
押し殺してきた感情が、胸の奥で渦を巻いた。
――どうして、自分だけ。
その瞬間、rdの中で何かが変わった。
感情が、色を持った。
冷たくて、深くて、逃げ場のない青。
rdは誰も傷つけなかった。
誰かに八つ当たりすることもなかった。
だからその感情は、外に出られず、
内側で歪んでいった。
優しさの裏側で、
怒りが牙を持った。
それが「青鬼」だった。
青鬼はrdに囁いた。
「壊せば楽になる」
「怒っていい」
「お前は悪くない」
rdはその声を拒んだ。
でも、消すことはできなかった。
だからrdは、人間の姿のまま青鬼になった。
誰にも見えない場所で、
誰にも知られない形で。
rdが人と距離を取るのは、
冷たいからじゃない。
優しいからでもない。
――自分の中の青鬼を、
誰かに向けたくなかっただけだ。
今日もrdは、何事もなかった顔で笑う。
人間のふりをして生きている。
でも夜になると、胸の奥で青が疼く。
それでもrdは決めている。
この青鬼は、自分が背負う。
誰かの世界を壊すくらいなら、
自分が孤独でいることを選ぶ。
それが、
rdが青鬼になった理由だった。
その日は、いつもより少しだけ疲れていた。
それだけのはずだった。
rdは人混みの中を歩いていた。
笑い声、雑談、無遠慮な言葉。
普段なら聞き流せる音が、その日はやけに胸に刺さった。
「rdってさ、何考えてるか分かんないよね」
悪意のない声だった。
冗談のつもりだったのかもしれない。
でも、その一言で、
rdの中の“青”が動いた。
胸の奥が冷たくなり、
血の流れが止まったような感覚。
視界が少しだけ、暗くなる。
――まただ。
rdは歯を食いしばった。
怒りじゃない。
悲しみでもない。
積み重なりすぎた感情が、形になろうとしていた。
青鬼が囁く。
「聞いたか?」
「また、お前を分かったつもりでいる」
「もう、我慢しなくていい」
rdの指先が震えた。
心臓の鼓動が、耳の奥でうるさく鳴る。
目の前の人間たちは、何も気づいていない。
rdが今、どれだけ危ういかを。
一歩、前に出れば。
声を荒げれば。
感情を解き放てば。
――きっと、何かが壊れる。
rdは立ち止まった。
呼吸が浅くなる。
青が、内側から広がっていく。
「壊せ」
「叫べ」
「お前の苦しさを、分からせろ」
青鬼の声は、甘くて、正しかった。
その誘惑が一番怖かった。
rdは、ゆっくりと目を閉じた。
思い出したのは、
泣いていた誰かに何もできなかった夜。
傷つけないために、距離を取った日々。
――壊したくない。
それだけが、rdを人間につなぎ止めていた。
rdは踵を返し、人混みから離れた。
逃げるように、でも必死に。
誰もいない路地裏で、
rdは壁に手をついた。
青鬼は、まだそこにいる。
消えてはいない。
でも、暴走はしなかった。
rdの背中を、冷たい夜風が撫でる。
それは、まるで
「まだ大丈夫だ」と言っているようだった。
rdは知っている。
次は、もっと危ないかもしれない。
それでも今日も、
青鬼を抱えたまま、人間として生きる。
壊さないために。
壊れないために。
rdは夜の街を歩いていた。
足音が重く、視界の端が滲む。
胸の奥で、青鬼がはっきりと形を持ち始めていた。
「もう限界だろ」
声は、rd自身のものだった。
でも同時に、青鬼の声でもあった。
誰も傷つけたくない。
その一心で耐えてきた。
なのに、耐えれば耐えるほど、
内側の青は鋭く、荒くなっていく。
路地裏で、rdは立ち止まった。
指先が冷たく、感覚が遠のく。
――このままじゃ、だめだ。
そう思った瞬間、
背後から足音がした。
「……rd?」
驚いて振り返る。
そこにいたのは、rdをよく知っている人、gtだった。
特別に近いわけじゃない。
でも、何度も同じ時間を共有してきた存在。
「顔、やばいよ」
その一言で、
rdの中の青が暴れた。
逃げろ。
見せるな。
近づかせるな。
rdは一歩下がった。
青鬼が喉元まで迫る。
「来ないで」
絞り出した声は、震えていた。
相手は立ち止まった。
追いかけなかった。
ただ、静かに言った。
「……じゃあ、ここからでいい」
その距離が、
rdを救った。
「無理してるでしょ」
「全部じゃなくていい」
「今、壊れそうってことだけでいいから」
その言葉は、
青鬼に向けられたものじゃなかった。
rd“本人”に向けられていた。
胸の奥で、青が揺れた。
rdは、初めて
逃げずにその場に立った。
「……壊れたくない」
それだけ言うのに、
喉が痛くなるほど時間がかかった。
相手は、何も言わなかった。
ただ、うなずいた。
「うん。分かるよ」
その瞬間、
青鬼の声が止まった。
消えたわけじゃない。
でも、暴れなくなった。
rdは気づいた。
止めたのは、
「正しい言葉」でも
「励まし」でもない。
見捨てずに、でも踏み込まれなかったこと。
それが、
青鬼を鎮めた。
夜風が吹いた。
rdの呼吸が、少しずつ戻る。
「……ごめん」
rdがそう言うと、
gtは首を振った。
「生きててくれれば、それでいい」
rdの目に、熱が滲んだ。
でも泣かなかった。
青鬼は、まだいる。
これからも消えない。
それでもrdは知った。
暴走しそうなその瞬間、
止めてくれる誰かがいる世界も、確かに存在すると。
rdは、人間の姿のまま、
青鬼を抱えたまま、
もう一度、歩き出した。
今度は――
完全に一人ではなかった。
gt視点
最初に気づいたのは、歩き方だった。
rdは前を見ていなかった。
人混みの中なのに、世界から切り離されたみたいに、
音も光も届いていないように見えた。
――まずい。
理由は分からない。
でも、嫌な予感だけは確かだった。
「rd?」
名前を呼んだ瞬間、
rdの肩がびくっと跳ねた。
まるで、呼ばれること自体が想定外だったみたいに。
振り返った顔を見て、
息をのんだ。
表情はrdなのに、
中身が“別の何か”に引っ張られている。
怒りでも、悲しみでもない。
もっと冷たくて、深いもの。
「顔、やばいよ」
そう言うしかなかった。
下手に言葉を選ぶ余裕なんて、なかった。
rdは一歩下がった。
拒絶じゃない。
――恐れている。
その瞬間、分かった。
rdは「誰かを遠ざけている」んじゃない。
自分を止めようとしている。
「来ないで」
その声は、脅しじゃなかった。
助けを求める声でもなかった。
警告だった。
ここから先に来たら、
自分が壊れるかもしれない、
誰かを傷つけるかもしれない、
そういう必死さ。
だから、近づかなかった。
一歩分、距離を残して立ち止まる。
「じゃあ、ここからでいい」
rdの目が、少し揺れた。
正直、怖かった。
何が起きているのか分からない。
でも、ここで見なかったふりをしたら、
rdはきっと一人で壊れる。
「無理してるだろ」
言葉は、慎重に選んだ。
正論も、慰めも、今はいらない。
「全部言わなくていい」
「壊れそうってことだけでいいから」
rdの唇が、かすかに動いた。
でも、すぐに閉じた。
その沈黙が、答えだった。
「……壊れたくない」
その一言は、
叫びよりも重かった。
だから、うなずいた。
励まさなかった。
否定もしなかった。
「うん。分かるよ」
その瞬間、
空気が変わった。
rdの中で、
何かが引き返したのが分かった。
見えないのに、確かに。
青い何かが、
一歩、奥へ戻った感じ。
「……ごめん」
rdはそう言ったけど、
謝る理由なんてなかった。
「生きててくれれば、それでいいんだよ」
それは願いだった。
責任でも、義務でもない。
rdは泣かなかった。
でも、目が少しだけ潤んでいた。
その夜、確信した。
rdは強いんじゃない。
壊れないように、必死なだけだ。
そして、
一番危ないのは、
誰にも気づかれないことだ。
だから決めた。
次も、もしあの目をしたら、
理由が分からなくても、
距離を間違えないで、立ち止まる。
止めるんじゃない。
押し返すんでもない。
――一緒に、踏みとどまる。
それが、
あの夜、できた唯一の正解だった。
終わり!ごめん長くなっちゃった🙇♀️
すいません💦
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!