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初めまして、わっこと申します
普段は別のところで活動しているのですが、ノベルを書いてみたくなり新しくアカウントを作成しました。
試験的な運用のため突然削除する場合がございます。
拙い点も多いかと思いますが、温かい目で見守っていただけたら幸いです。
shk side
「‥‥‥んぅ……ぁ」
もうすぐ4月になろうとする日の昼頃、カーテン越しにほのかな陽気を浴びて目を覚ます。
昨日も遅くまで起きてゲームをしていた。ある程度練習はできたから、今晩あたり配信をしてみてもいいかな~と思いながらカレンダーのアプリを開く。
うん、今日はグループの配信もないし大丈夫だ。
そろそろ起きないとまた眠気が来てしまうし、布団から出なければ…と頭ではわかっているのだが、体がなかなか動いてくれない。ならば仕方ない、もう少し布団にいても誰も文句は言わないだろう。
「…‥もう4月か」
2月からmnpsとして活動を始め、今までと同じようで違った環境の中今日まで止まることなく走り続けてきた。
メンバーとの会話も慣れてきたし企画は楽しいし、こうして新しい場所で自分が続けたかった活動ができていることを幸せに思う。…本当に、いいメンバーに恵まれた。
しかし、そんな生活の中で時々思い出す奴がいる。
「…‥‥きんとき」
wtは活動休止という形で全員で一度止まり、各々が新しい道へと進むこととなった。休止してからすぐ…1月中はやり残したことも多く何回かメンバー同士で集まっていたものの、最近はめっきり会う機会も減ってしまった。
収録して、配信して、企画会議して…なんて日々が嘘だったかのように。
俺も、彼も新しい活動に専念しているからお互いに忙しい。
かといって俺が突然彼の家に遊びに行ったり、電話をかけたりなんかしたら迷惑だろう。
付き合ってなんていないのに「声が聞きたくなった」なんて言ったら、呆れられる
…これはきっと、俺の片想いだから。
この感情にきんときを巻き込んでしまってはいけないと、ずっと前から心の奥底にしまっていた。
しかし、直接話すのと彼の動画や配信を聞くのとはまた違うもので、どんなにwt時代の動画を見ても2人でやった配信を見ても心が収まることはなくて。
今までは抑えられていたその感情が、突然動かされてしまっただけで。
「‥‥‥‥っ、うぁ‥‥‥ッ」
一つ、また一つ目から大粒の涙が溢れてくる。ぽたぽたと落ち、布団にじんわりと広がっていく。
こんなことで泣いてはいけないのに、こんな感情を彼に抱いてはいけなかったのに。そう思えば思うほど涙は止まらなくなってしまった。
何も不自由な生活はない。ただ、ただ今まで当たり前だった彼のことを感じられなくなってしまっただけ。
歌手としてオリジナル曲が公開されて、ちょっとだけ遠い存在になっちゃったなぁなんて思っただけ。
「寂しくなんか……ないのに‥‥‥ッ」
それなのに、どうしてこんなにも辛いのだろうか
ひとしきり泣いた後、時計は気づけば14時になっていた。
目が覚めた直後はあんなに配信をやる気でいたのに今はもうすっかりなくなってしまった。
身体を起こすかと思った直後、突然通知音が鳴った。
慌ててスマホの画面を確認しようとすると、また一件ピロンと軽快な音が鳴る。
グループ内の業務連絡だろうか、はたまた誰かのゲーム相手募集か。
そんなことを考えながら送信主を確認すると、
「‥‥‥はっ?」
他でもない、きんときからのメッセージだった。
いやまて、ただきんときからメッセージが来ただけだ。ただの業務連絡かもしれない。
高ぶる気持ちをおさえながら、トーク画面を開く。
トーク画面には二言、
”シャークん、久しぶり”
”今って通話できたりする?”
と、そう書かれていた。
「‥‥‥な、なんでなんで、えっ」
正直頭が混乱していて何も考えられていないが、とりあえず既読を付けたからには何かしら送らないとと思い
”大丈夫”
と返す。
すると彼は画面を開いたままだったのか、すぐに既読が付いた。
そしてそれと同時に通話の通知音が響く。
…ザザッ
『もしもし、おはようしゃけ』
それは、ずっと聞きたかった声だった。
「あー、おはよう……、ってそんな感じの時間でもないけど」
『でもシャケはさっき起きたばっかりでしょ?』
それはまぁそうなのだが。きんときに見透かされているような発言に少しドキッとする。
「…で、こんなに突然どうしたの」
「普段LINEで通話なんてしないじゃん」
『あはは、確かに。いつもはディスコだったもんね』
『今日はただ……』
「…ただ?」
『‥‥久しぶりにシャケの声が聞きたいなって思ったから、かな』
「…‥‥え?」
きんときは今、なんて言った?俺の声が聞きたかった…?
『動画追ってても、配信見てても、やっぱり実際こうやって話すと違うな~って』
「あぁ‥‥‥それは、そう、だろ」
突然のメッセージに通話、それだけで十分すぎるほど驚いているのに、衝撃の言葉に動揺を隠せない。
『そんな深い意味はないって。ほんとにただ元気してるかな~ってだけ』
その一言に安心すると同時に、心がズキッと痛んだ。
所詮メンバーの一人、特別な感情なんてあるはずがない。
ぐるぐると頭を巡らせていると、黙ったままの俺に対してきんときが声を出す。
『シャケさ、気のせいだったらいいんだけど、もしかして泣いてた?』
「え」
なぜバレた、声色か?少し掠れていたからか…?よりにもよって一番バレたくない奴にバレるなんて思わなかった。
いやまだ誤魔化せるはずだ…
「き、気のせいじゃない?泣いてるわけないじゃん」
『そっか、それだったらいいんだけどさ、なーんか声が前泣いてたときみたいな感じだったからさ』
『しばらく俺と話せなくて寂しくて泣いちゃってたのかな~なんてね』
なんで、なんでこいつはこんなに図星を突いてくるのだろうか。
怖いくらいに的中するきんときの言葉にまた返せないで黙ってしまった。
『シャケ、本当に大丈夫?』
彼の優しい声が、響いた。
それはまた俺の感情を溢れさせるのに十分すぎた。
「ッ、そうだよ……ッ!!!今までずっと隣にいたのに、いつも話してたのに突然それがなくなって‥‥‥ッ!!」
「‥‥‥ずっとずっと、会いたかったけどめいわくかなって、めんどうだなっておもわれたらって、」
「きんとき‥‥っ‥‥‥っあ‥‥」
まただ。また、涙が頬を伝っていく。
『……そっかそっか、ありがとう』
『いっぱい、辛い思いさせちゃってごめんね』
「きんときは悪くない…ただ俺が…‥‥」
『いや、俺が悪いよ』
『だってシャークんのこと好きだったのに、今日まで何も動けなかったんだもん』
それはずっときんときに言われたかった言葉だった。
嬉しいのか、怖いのか、わからない涙がずっと流れ続ける。
『ねぇシャークん、今から家にお邪魔してもいい?』
『無理って言われても行くけど』
「…うん」
『ありがとう。じゃあ、またあとで。』
一言そう返すと、通話は切れた。
きんときを待つ間も涙は止まらなかった。
10分ほどたったころ、ピンポーン、と家のインターホンが鳴る。
早すぎるだろ、と思いながら涙は見せたくないので顔をぐしっと乱暴に拭ってから玄関に向かう。
ドアを開けるとそこには、
「よ、久しぶり」
なんて言いながら爽やかに笑うきんときの姿があった。
きんときをリビングに通そうとすると、廊下の途中でピタッときんときが止まる。
どうしたのかと後ろを向くと、真剣な顔をしているきんときが立っている。
「あのさ、さっきのことなんだけど改めてちゃんと言いたくて」
「何?」
心臓の鼓動が速まる。
沈黙の後、きんときがゆっくりと口を開く。
「シャケのことがずっと好きでした。もしも、もしもシャケが良ければ付き合ってもらえませんか」
「…‥‥っあ」
「‥‥‥もちろん、嫌だったら嫌って言っていいから。俺はこれを伝えたくて今日ここに来た」
「断られたらちゃんと諦めるし、今まで通りの友人でいてもらえたら嬉しいな」
今まで通りの、友人。
その言葉にまたズキッと心が痛んだ。今ここで彼に自分の気持ちを伝えないといけない。
伝えなければ、一生変わらないままだ。
「……シャケ…‥‥ッ」
「……俺も、きんときが‥‥…」
「きんときのことがずっと………ッ」
言葉が、出てこない。言わないと、いけない。
なのに。
俺が固まっているのを感じたきんときが、そっと俺を優しく包む。
「大丈夫、ゆっくりでいいから」
あたたかい体温に、心が落ち着いていく。
「きんときが、好き」
「ずっと、ずっと一緒にいたい‥‥‥ッ」
絞り出せたのはこれだけだったが、きんときには十分に伝わったようだった。
ぎゅっと先ほどよりも力強く、でも優しく抱擁する。
それに応じるように自分もきゅっと彼の背中に手を回す。
「いっぱい話そう、寂しさなんて感じないくらいに」
「うん」
「ゲームもしよう、ボルダリングも行こう、買い物も…シャケと一緒だったら何しても楽しいからさ」
「うん」
「ずっと、側にいるから。一生、絶対に離さないから。」
「……うん」
先程までの寂しさが嘘だったかのように、今、幸せに包まれている。
「きんとき、ありがとう」
と小さく呟くと、彼はふわっと優しく笑んだ。
「愛してるよ、しゃけ」