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「kn?」
不思議そうに首を傾げる黒髪の彼に
名を 呼ばれ、はっと意識を戻した。
「ごめん、何か言ってた?」
彼は首を横に振ると、俺を見つめた。
「いや、何も言ってねえけど。
…なんか、体調悪かったりする?」
そう 顔を歪める彼には1番
心配はさせたくなかった。
「病院のベッドで寝込んでる奴 が
何言ってんだかって話だよ…。」
肩を竦めて明らかなため息をつくと、
彼は元気そうに持ち前のギザギザと
した特徴的な歯を見せて笑った。
「それとこれとは別だろ。見舞いに
来てる奴が体調悪いのは違う。」
その言葉にそれもそうか と頭を掻き、
なんとなく、軽く謝っておいた。
「そうだな、ごめん。」
少し、俺のせいで気まずく
なってしまった気がした。
橙色だった空はいつの間にか
紫がかっていたことに、
窓に目を逸らして気がついた。
「あ、ごめんshk。俺もう帰らないと」
「明日、また来るから。」
手を振って笑うと、彼も
また手を振り返してくれた 。
…力の無くなりかけた、その手で。
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彼の居た病院を後にすると、
どうしようもない脱力感に見舞われた。
(…shk、余命宣告受けてから
もうどれくらい経ったんだっけ。)
元々彼は病弱だったと聞いてはいたが、
知り合って数ヶ月経った辺りに聞いた
「余命宣告」は、どうやら
もう一月経とうとしているらしい。
「遅くても今年中には死ぬんだっけ。」
…まだ仲がとても良いという わけではないけれど、それなりに情は湧いている。
少なからず、死んでほしくはないと
思っている。まだ仲良くなれるのに。
…あと、少し。
あと少しで彼は死ぬ。
「何か思い出とか作りたいんだけどな。」
こんな俺では、どうやら力にはなれなさそうだ。…でも、何か彼を楽しませる手口だけは見出してみたいと思った。
「明日、一回聞いてみようかな。」
そんなことを呟いて、俺はもう
すっかり暗くなった道を辿った。
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