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ついに夜になった。 食事は本来なら食堂で食べるべきだが、疲れたからという理由で、部屋でゆっくりと|摂《と》らせてもらった。
その後、ギデオン専用の風呂に入って来いと言われ、「いよいよ|夜伽《よとぎ》…違う!仕事の準備か…?」と緊張しながら風呂に行き全身を洗う。アンの全身も丁寧に洗いながら、「おまえはどこへ行こうがずっと一緒だからな」と言うと、アンが即座に「アン!」と返事をした。まるで当然だと言わんばかりの態度に、リオは頬を|緩《ゆる》ませた。
頭から被る形の丈の長い上着だけを着て、ギデオンの部屋に戻る。いや、一応下履はつけている。つけてはいるが、ズボンを履いてないからスースーして、なんとも心もとない。
先に風呂を済ませてソファーに座っていたギデオンが、リオに気づき「ここへ」と誘う。
リオと同じ服装で、既に酒のグラスを手に持っている。
リオは渋々隣に座り、「酔ってる?」と紫の瞳を見上げた。
「いや、飲み始めたばかりだ。リオにはこれを」
「ん、ありがとう」
水が入ったグラスを渡されて、リオはひと口飲む。
「あれ?おいしい」
「そうか」
透明だから水だと思っていたが、柑橘系の香りがして、少し甘味もあり、とても好みの味だ。
リオは半分くらいまでゴクゴクと飲んで、膝の上に抱いたアンを見て「あ!」と声を出す。
「なぁ、アンにも水をあげたい」
「そこに用意してあるぞ」
ギデオンの目線を追うと、ソファーの横の床に布が敷かれ、その上に水の入った皿が置いてあった。
「ありがとう」と笑って、リオはアンを皿の近くに下ろす。
アンは喉が渇いていたらしく、勢いよく水を飲み始めた。
リオがアンの傍にしゃがみこみ、柔らかい毛を撫でていると、「リオ」と呼ばれる。
いよいよ仕事か…とリオは素直に隣に座り直して緊張しながら待った。だが、いつまで待ってもギデオンが何も喋らない。ひたすら黙って酒を飲んでいる。
ついには|痺《しび》れを切らしたリオが、「ちょっと!」と口を開いた。
ギデオンは静かにグラスを机に置くと、顔をリオに向けて「なんだ」と聞く。
「いや、なんだじゃないだろ。仕事だよ。仕事の内容は夜に話すって言ったじゃん。まさか並んで酒を飲むのが仕事じゃねぇだろうし。俺、どんな仕事か、ずーっと気になってんの。早く教えろよ」
「そうだな」
ギデオンが深く息を吸い静かに吐き出す。
常に冷静沈着なギデオンの緊張しているような態度に、一体何をさせられるのかと不安になる。
ギデオンは、正面からリオを見つめると、|掠《かす》れた声を出した。
「リオ、俺と…一緒に寝てくれ」
「嫌だ」
打てば響く速さで、リオの口から拒絶の言葉が出た。