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第一章 「 なーんてね 」
教室の窓から差し込む午後の光が、
机の上に 斑点を作っていた。
私は その光に手を伸ばしてみたけど、届くはずもなく
ただ指先で ぼんやりと、空をなぞるだけだった。
大森「ねえ、ちょっと いい?」
大森君の声が、私の肩越しに 降ってきた。
振り返ると、彼の目はいつも通り澄んでいてーー
だけど今日のそれは、
少しだけ緊張を 含んでいるように見えた。
水戸「いいよ、どうしたの?」
私は少し照れくさくて、視線をそらす。
大森君は にっこりと笑って、
私の手をそっと 握った。
大森「ずっと、…碧依のことが 好きだった。」
教室の空気が、一瞬止まった気がした。
心臓が跳ねる。
BGMのように 窓の外でチャイムが鳴ったけど、
世界はその音だけに 静まり返ったように感じられた。
水戸「えっ ほんとに…?」
私の声は震えていた。
恥ずかしさと、嬉しさと…
少しの不安が 混ざった音だった。
彼は手を離さず、にやりと笑った。
大森「なーんてね」
困惑した。彼は まっすぐ私を見つめて笑っている。
照れ隠しみたいな、軽い冗談だと思った。
肩の力がふっと抜ける。私も笑って、
ちょっとだけ小声で
水戸「もう、びっくりさせないでよ。」
と返した。
でも、心のどこかで あの笑い方の端々に…
何か掴みきれないものが ある気もして、
無意識に眉を ひそめていた。
その日の放課後、二人で帰り道を歩きながら
大森君はいつも通りに冗談を交えつつも、
私の歩幅に 合わせてくれる。
手をつなぐと、
手のひらの温かさが じんわりと心に広がる。
大森「でもさ、ほんとにさ 好きだよ。」
小さな声で彼が言う。
今度は冗談じゃなくて、真剣な眼差し。
僕は無言で頷いた。
夕焼けが2人を オレンジ色に染める。
この頃の 私は、まだ何を知らない。
“それ”が、 後で全く別の意味で
脳裏に 刻まれることになるなんて——
登場人物 プロフィール 一覧
A.
名前:大森 元貴
年齢:中学3年生 15歳
優しく 気遣い上手
B.
名前:水戸 碧依
年齢:〃
内気な性格で、大人しい
C.
名前:若井 滉斗
年齢:〃
クラスの中心に立つ 人気者
大森の 幼馴染
D.
名前:藤澤 涼架
年齢:〃
誰にでも優しく 好かれている