・VTA時代捏造
・本作品は二次創作であり、ご本人様とは一切関係ありません
・本編中ライバー様のお名前は伏せません
「俺、運命とか嫌いなんだよね」
「はぁ?」
ヒーロー活動を終えた帰り道。お互い無言で本部へ戻ろうとしていた矢先の星導の意味不明な発言で、思わず素っ頓狂な声が出てしまう。
「確かに宇宙…俺的な視点で言えば全ての現象は絶えず繰り返されてるけどさ、でもそれは運命って名前じゃないじゃん?」
「お、おお…?」
まずい。何言ってるかさっぱりわからん。適当に返事をして流すことにした。
「『天国でも一緒』とか『生まれ変わってもまた会える』とかさ?そんなのないよ、どこにも。目に見えないものに縋ったって意味ないのに」
体は前を向いたままどこか食い気味に語る星導の顔を見上げる。大きく割れた右半分からはいつも通り謎だらけな、いつかのどこかの宇宙だけが窺えた。
「勝手に期待して、死んで、そこまでしたのに生まれ変わってまた会えなかったら俺は嫌だな」
「今のお前には関係ないだろ」
「あはは、そうでした」
あっけらかんと笑う星導の横で僅かに俯く。初めは聞き流そうと思っていたのに、気づけばまたもや彼のペースに呑まれていた。
「俺らは…死んでもまた会えるかね」
「あれ、小柳くんはそっち派なんですか?困ったなぁ、こればっかりは同調してあげれないや」
「別に同調とかいらんけど」
もしこの宇宙に運命や巡り合わせの類があったとして、生まれ変わった俺達がまた出会うとして。俺達は初めからまた“あの時”のように仲良くできるだろうか。
星導はもう一度、俺を“ぴょん”と呼んでくれるだろうか。
(生まれ変わったら名前も変わるか)
それでもいい。俺とこいつの関係値が今のような歪なものにならなければ、この際なんだっていい。
姿も記憶も何もかも俺の知らないものに変わってしまった星導に『はじめまして』と言われたあの日が忘れられない。彼の背後で花弁を散らしていた桜の淡く儚い夜明け色がひどくおぞましかったのを、俺は今でも覚えている。
(それ以前の記憶だって、俺はずっと、)
「小柳くん?」
頭上から星導の不思議そうな声が降ってくる。どうやら考え事をしている間にかなり前かがみになっていたようだ。顔を上げたと同時に星導が馬鹿にするような目で嘲笑ってくる。
「どうしたんですか小柳くん、もしかしてさっきの傷が痛むとか?え~、あんなに強がってたのに実は結構痛かったりするんですかぁ?」
「うっせーな、痛くねぇし。そもそも顔割れてる奴が言えたことかよ」
「あはは、俺のこれは痛くも痒くもないので。それより小柳くんったらそんなにすぐ生まれ変わりたいんですか?生き急いでもいいことないですよ?」
今死なれちゃ困ります。
まだ一緒にいたいですし。
そう言ってうっすらと笑みを浮かべた星導の透き通った目は遥か向こうで沈み始めた西日を映し出していた。
「さ、早いとこ戻りましょうか。報告書書かなきゃだし」
「あー…眠いんだけど」
「出発前にライが『今日という今日こそは書くまで帰さない』って言ってましたよ。小柳くん家帰ったら即爆睡ですもんね」
「どうもすいやせんしたぁ」
「思ってないでしょ、怒られても知りませんから」
軽口を叩き合いながら帰路を辿る。道中、先程の星導の言葉がずっと俺の頭を支配していた。
死なれちゃ困る。
まだ一緒にいたい。
「こっち曲がるんでしたっけ?」
「うん」
それ、俺の目ちゃんと見て言ってほしかったんだけど。
「すみませんね、記憶喪失なもんで」
「気にしてねーよ」
やっぱり、言ってほしくないかも。
スクロールお疲れ様でした!
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