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「だからね、二人とも未だに婚約者もいないでしょう? ね?」
ね?っとちょっと可愛らしく言われても困る。そして、初耳だ。クロディルドの息子達といえば無論、王太子と第二王子なのだが……そう言われると二人共に、年頃なのにも関わらず婚約者や浮ついた話一つ聞かない。だがまさかリディアと結婚させようとしている為だとは誰が思うのか……。
「王妃様、ご冗談が過ぎます」
流石のリディアも間に受ける事はなく、何時ものクロディルドの軽口だろうと思った。
「あら、私は本気よ。だから貴方が婚約したと聞いた時は、結婚する前にどうにかして奪還させなくちゃってね、考えてたのよ。でも、私が手を下すまでもなく無事婚約破棄してくれたから良かったわ」
もしクロディルドが話している事が真実ならば、色々と怖すぎる……。
リディアもその隣に座っているシルヴィも息を呑む。穏やかな笑みからは、それ以上のものは感じ取る事は出来ないが、話の内容はかなり危うい。
「心配しなくても大丈夫よ、シルヴィ。勿論貴女もどちらかと結婚して貰いますからね」
リディアもシルヴィも目を見開き、驚き過ぎて声が出なかった。
「あらあら、お茶が冷めてしまったわ。ヒルデ、淹れ直してくれるかしら」
「畏まりました」
その後、何事も無かった様にクロディルドはお茶を啜り、何時もと変わらず穏やかに微笑みながら、何気ない話をしていた。やはりあれは冗談だったのかも知れないと、リディアとシルヴィは思い、互いに顔を見合わせると胸を撫で下ろす。
「少し余ってしまったわね」
テーブルの上の菓子は、減ったかどうかすら判別出来ない程変化がない。かなり頑張って食べた筈だが未だに、山の様に積み上げられていた。
「そうだわ! 二人ともお裾分けに行ってきて貰えないかしら」
リディアとシルヴィは大きな籠いっぱいに菓子を詰め、廊下を歩いていた。
「お裾分けって、まさか騎士団へなんてね」
「ふふ、そうね。きっと兄さん達驚くでしょうね! それに実は兄さん、結構甘い物好きだから喜ぶわ」
「リュシアン様、甘い物好きなの? 食べてる所なんて見た事ないけど」
リディアは何度もリュシアンともお茶の席を共にした事があるが、甘い物を食べている姿を見た記憶はない。
「兄さん見栄っ張りなのよ。男が甘い物好きなんて格好悪いからって、人前では食べないの。特にリディアちゃんの前ではね」
「何で、私?」
「ふふ、内緒」
意味ありげに愉しそうに笑うシルヴィに、リディアは不思議そうに首を傾げた。