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10話
本当に…
あそこまでするつもりは、無かったなぁ…
ほんの出来心だった。
ツンニキくんを抱いたあの日、
少し怖い思いをすれば、
すり抜けなんてしなくなると思って。
ダメな事してるって教えてあげるつもりで…
なのに…、
…それが、思いがけないほど可愛すぎて、
目の前でぐちゃぐちゃに泣くツンニキくんが
あの顔が、声が、身体が、
可愛くて…
どうしようもないくらい僕のものにしたいと思った
その後の事はハッキリ思い出せない
気づいたら、恐怖で震えて蹲るツンニキくんがいた
あ…、やってしまった、
と思った。
とっさに震える身体を優しく引き寄せた
すると、抱き締め返してくれた
あんな事したのに、僕を許してくれたんだ
そう考えると胸がぎゅっとなった
好きだ…
これからは優しく接しよう、
下手に手を出さないようにしよう、
この子が心を許してくれるまで待とう、
そう、思っていた…のに。
「…はぁ、」
深くため息をついた
雨林の空はいつも同じ濁りの色
そんな景色を眺めながら考えた
嫌だったのかな…ずっと、
水面をじっと見つめ
あの時ツンニキくんに言われたことを思い出す
「…あんなに、嫌われていたとは…」
確かに、あれだけ付き纏われれば…そう思うよね、
じゃあ…どうすればよかったんだろ、?
最初に好きだって伝えてれば…?
こんな奴に、しかも男に、
そんなこと言われても困るよね…
困らせたらダメだ
これ以上迷惑かけたらダメだ
“「…さようなら。」”
これで良かったんだ…あの子の為には…
「…っ、」
自分で言った言葉が胸を締め付ける
明るくも暗くもない藍色の空
絶え間なく降り続ける雨
雫が頬を伝った
人を好きになるって、こんなにも苦しい
一緒にいるだけで幸せだった
それは、
“僕だけ”だったのかもしれない
「…っ、忘れよ…」
雨音に掻き消されるくらい小さな声で言った