(注意点)
100%妄想です
言葉遣いなど解釈違いでしたらすみません
長文で申し訳ないです
今回はほのぼの回です
大丈夫な方はこのままお進みください
ヒーロー活動というのは戦いや人助けだけではないとは分かっていた。
つもりだった。
今日はついに子供達の前での演劇が任務。
今朝デバイスに映し出された内容を見て4人とも愕然とした。
しかも事前に知らされていれば心の準備ができたのに、まさかの当日、開演1時間前。
慌てて会場へ向かうとすでに親子連れで賑わっていた。
最悪なことに場所がかなり遠かったので、到着する頃には時間的にもうリハーサルもできないほど直前。
まさにぶっつけ本番。
なんでこんなことになったかというと、もともとこの仕事を任されていたのはオリエンスだったのだ。
事前に練習して準備してやる気満々でいたところに、今朝、東の方で大規模な災害が発生し、救助活動が優先されたのだ。
しかし演劇を楽しみに集まってくれた人たちをドタキャンでガッカリさせたくないので、偶然任務のないディティカに本部からの無茶振りがぶん投げられた。
オリエンスなら得意とし楽しめる仕事ではあるが、今回ディティカにはおそらく超絶向いてない。
東のやつらは赤ちゃん役すらも進んでこなせる輩たちなのだが、西はそうはいかない。
台本のタイトルはなんと「シンデレラ」。
4人は絶望の表情に変わる。
一体誰がこれに決めたのか。
女性が1人もキャストにいないのだから、せめて桃太郎などにして欲しかった。
バッドエンドの未来しか見えない。
東の人たちはわざわざガチの女装で挑むつもりでいたのだろうか。信じられない。
そもそもキャストが足りない。
誰かが2役やらないといけない。
あいつらイカれてんのかと呟きながら、焦って大急ぎで打ち合わせをする。
それはさておき開演のブザーと共に司会者が舞台に登場していた。
なるべく長引かせて欲しい!と伊波がアイコンタクトとジェスチャーで司会者に懇願した。
薄い台本をパラパラめくって役振りをしていくが、叢雲は「これなんて読むん?このセリフ誰?」などと心配を煽る発言を連発。
問題は主人公のシンデレラ。
小柳「俺は絶対無理だからな。」
叢雲「当たり前やろ。星導は?髪長いからカツラいらんやん。」
伊波「こんなデカいプリンセスがいてたまるか!」
星導「俺、魔法使いと継母やるので無理です。」
小柳「ずるいだろ無難なやつばっか!」
叢雲「僕セリフ多い役は覚えられん。」
みんなで押し付け合いをしたが、結局シンデレラは消去法で伊波となった。
そしてさらに消去法で小柳が王子様役となり、星導は手を叩きながら爆笑する。
叢雲はシンデレラの姉役に落ち着いた。
司会の人はもう限界、とばかりに、舞台袖の4人へチラチラ視線を送る。
そして「始まり始まりー!」という言葉の後、舞台は暗転。
素早く背景がセッティングされた。
ナレーターも司会者の人なので、引き続き優しい声で物語の冒頭を語り出した。
以下()は小声での会話とする。
星導「まぁシンデレラ、掃除を言いつけたのに全然できてないじゃない。いつになったら終わるのかしら?」
叢雲「ちょっとぉ、ほらぁ、あそこも汚いわよぉ!早くサオで掃いてちょうだい!」
星導(サオ?竿?!違うホウキ!箒!)
伊波(なんでオネェ口調だよ?!)
叢雲(あれホウキって読むんか、ちょ、いいから進めろて!)
出だしからしっかりやらかし、小柳は舞台袖で「お粗末過ぎる」と呟いた。
なぜなら格好もなかなかお粗末な仕上がり。
ドレスこそ着ているがカツラをかぶる時間までは無かった。
星導はそのままで良いとして、伊波は地毛を無理やりツインテール、叢雲は前髪をちょんまげのように結んだだけ。
オカマ口調も相まって歌舞伎町を匂わせる状態だった。
星導「のんびりやってたらお夕飯抜きですからね。返事は?」
伊波「はい、ごめんなさいお母様お姉様。精一杯がんばりますのでお許しください。しくしく。」
叢雲「きみ、もうちょい真面目にやった方がええで。必死さが足りん、ですわよぉ!」
星導(そんなセリフありました?!)
叢雲(あかん、セリフ全部飛んでもうた)
伊波(早いって!!)
この先、叢雲に喋らせてはやばいと思い、星導が舵を切った。
星導「そういえば今晩、お城の王子様が妃を探すために舞踏会を開くそうです。私達は行きますけど、あなたは留守番ですからね。」
伊波「はい、わかりました。いってらっしゃいませ。」
そこで舞台は暗転し、すぐに明点すると伊波1人になっていた。
伊波「いいなぁ、私もお城の舞踏会に出てみたかったなぁ。でも無理ね、こんなボロボロなドレスじゃ。それに、馬車を呼ぶお金も無いわ。」
伊波の名演技の裏で、星導が慌てていた。
星導「魔法使いの衣装は?!え!無い?!小道具すら忘れた?!どうすんのこれ?!」
小柳「無いもんはしゃーない。アドリブでなんとか繋いでこい。」
そう言うと星導の背中をドンと押して舞台に飛び出させた。
緊急事態を察した伊波が手探り状態で言葉を発する。
伊波「えーっと、お母様?どうかしましたか?舞踏会には行かないんですか?」
星導「私は、、えーー、、私はお母さんの双子の妹です!職業は魔法使い!可哀想なあなたに魔法をかけて、素敵なドレスと馬車をプレゼントしてあげましょう!」
伊波「?!?!あ、、ありがとうございます!私を舞踏会へ連れてってくれるんですね!」
星導「任せてください!えーっと、なんだっけ、、あ、、アバダケダブダ!!」
伊波(オイ!!おま、それ違っ)
舞台は呪文の直後に暗転した。
数秒後に明点すると、綺麗なドレスとガラスの靴に早着替えして頭にティアラを載せた伊波と、カボチャの馬車が置かれていた。
星導「0時までには帰ってくださいね。魔法が解けてしまいますから。」
伊波は戸惑いつつもお礼を言いながら馬車に乗り、お城へ向かう演出に切り替わった。
舞台袖で、叢雲と小柳は声を殺して肩を震わせて笑っていた。
小柳「展開がえぐい、、。」
叢雲「あの呪文って殺すやつやん、。」
お城に到着したシンデレラは、王子様にダンスに誘われ、楽しく踊る、、というシーンなのだが、、。
小柳「おいそこのお前、、じゃねぇや、、あなた、一緒に踊ってくれませんか?」
伊波「ブフッw、、はい王子様、謹んでお受け致しますわ。一緒に踊りましょう。」
小柳の言い間違えプラス棒読みに吹き出しかけるが、なんとか持ち堪えた伊波。
しかし、舞踏会ダンスなんて踊ったこともないので、お互いの足を踏みまくりながら、ドタドタとヤバめな動きを披露する。
舞台袖の星導たちはもう声を抑えることもせずにゲラゲラ笑った。
伊波「いけない!もう0時だわ!帰らなくちゃ!」
走り出す伊波を小柳が追う。
小柳「待ってください、せめてお名前を!」
と言ったところで、伊波が盛大にドレスの裾を踏んでずっこけた。
「おぶぁ!」という情けない声が響き、ガラスの靴を片方落とすだけのはずが、両方の靴、ティアラ、髪飾りなど、諸々落として駆け抜けて行った。
舞台袖からも笑い声が聞こえるが、舞台上の小柳もこのハプニングに耐えきれず、客から顔を背けて口を覆って笑いを堪えていた。
それを慌てて隠すかのように舞台は暗転した。
少しの間があり明点すると、街中の風景が広がっていた。
小柳が町の人々にガラスの靴を履かせて回る仕草をしていた。
ついにシンデレラの家に辿り着き、声をかける。
小柳「この靴は舞踏会での落とし物なのだが、持ち主を探している。心当たりはあるか?」
星導「舞踏会には出てました。私かもしれません。履いてみてもいいですか?」
そう言うと許可を待たずして足を突っ込んだ。
星導「うわ、小さすぎて入りませんね。では、私の娘に履かせてみましょう。」
星導は叢雲の背中をぐっと押して靴に近づける。
叢雲は靴を手にとり、自身の足に履かせてみた。
叢雲「あ、ピッタリやこれ。」
星導(違う違う!ブカブカ想定!)
叢雲「あ!そうか!違うんやった!こ、これ大きすぎてブカブカですわぁ!」
奥で掃除をしているシンデレラにスポットライトが当たった。
小柳「あそこのものにも試してもらいたい。」
星導「あれはただの小間使いです。試す価値も無いですよ。」
言葉を無視して伊波にガラスの靴を履かせると、見事なまでにピッタリとハマった。
星導「そんなまさか!」
小柳「おまぇ、、あなた!があの時のお方だったのですね」
伊波「はい。ダンスご一緒していただきありがとうございました。」
伊波がペコリと王子様にお辞儀をすると、舞台に幕が降りた。
ナレーター「王子様とシンデレラは結ばれ、お城で幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。」
そこで終了となるはずが、偶発的に敵がその場に沸いたのだ。
小柄ながらも、大量に沸いた敵は会場を囲って埋め尽くした。
観客全員が戸惑い、声を上げざわめいた。
パニックを避けるためにも、演劇の一部として楽しませようと伊波が動いた。
伊波「あらぁ!私達の結婚をぶち壊そうとする過激派が襲って来たわ!返り討ちにしてやりましょう!」
そう言うと、どこから取り出したのか、巨大なハンマーを掲げて敵に振り翳す。
ことを察した小柳も刀を構えた。
小柳「邪魔するやつは全員切り捨てる。」
舞台袖の2人も飛び出した。
星導「えー、、っと、継母の従姉妹です!職業ゴーストバスター!宇宙人パワーで敵を殲滅します!」
叢雲「僕はえーっと、シンデレラの妹です!忍者ですわよぉ!」
4人は敵を次々と倒していった。
最後の一体を倒し、4人でペコリとお辞儀をした。
会場のお客さんはそれをもパフォーマンスだと信じて拍手が溢れた。
4人は会場を後にし、拠点へと向かった。
小柳「まじで疲れた、、もうこういうのやりたくないわ、、」
星導「こっちのセリフですよ!継母に魔法使いに継母の従姉妹!1人3役とか勘弁してほしいです。」
叢雲「従姉妹が宇宙人ってどうなん?物語崩壊しとらん?」
伊波「妹が忍者も終わってるから。でもとりあえず、会場がハッピーエンドで良かったよ。」
数日後、拠点にお礼と感想のお手紙が複数届いていた。
内容が「シンデレラがハンマー振り回しててかっこよかった。」
「継母がエイリアンになったの衝撃だった。」
「妹が忍者なの驚いた。すごい。」
「王子様はお侍さんだったんですね、かっこいいです。」
と、物語とは関係ない内容のお手紙が届き、複雑な気持ちで報告書を作成した。
そしてオリエンスには、もうこの類の任務は回さないで欲しいと、報告書と共にメッセージに付け足していた。
スタッフが録画していた演劇を見て、腹が捩れるほど爆笑したオリエンスは、あえて返事を返さなかった。
こういうのもアリだろと心の中で思った。
コメント
2件
絵面を想像したら思わず笑ってしまいましたw相変わらず最高です!!ギャグセンス最高ですね!次回も楽しみです!