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夜の空気はひんやりしていて、夏の終わりを静かに告げていた。天は、ひとり静かな道を歩いていた。
理由は特になかった。ただ、部屋にじっとしていると、何かに押しつぶされそうで――
少し風にあたりたくなっただけ。
「……ん?」
ふと、前方に見覚えのある背中が見えた。
電柱の灯りに照らされた、制服姿の少年。
その歩き方、肩の揺れ方――すぐにわかった。
「……陸?」
声をかけると、少年は小さく肩を動かして振り返った。
「……あ、天にぃ」
目が合った瞬間、陸の顔にふわっと笑みが浮かぶ。
「びっくりした……こんな時間にどうしたの?」
「なんとなく。部屋にいるのが息詰まって、ちょっとだけ歩こうと思って」
「……俺も。全く一緒だね」
天は静かに陸の隣へ歩み寄る。
自然と並び、何も言わずに歩き出す。
言葉がなくても、不思議と安心できる距離だった。
「……なんか、天にぃと偶然会えるの、嬉しい」
「僕も。変な話だけど……こうやって、ただ隣にいるだけで、ちょっと安心する」
「ふふ……俺も、そう思ってたとこ」
風が吹き抜けるたびに、陸の髪がふわりと揺れる。
天はその様子を、横目で静かに見つめていた。
「今日、なにかあった?」
「んー……特には。なんか、漠然と苦しくなる日ってあるでしょ」
「あるね……僕もそんな感じだった」
「……なんでだろうね。何が原因ってわけでもないのに」
「そういう時は、無理に元気出さなくてもいいと思うよ」
陸は少し驚いたように天を見上げ、それから静かに笑った。
「天にぃって、やっぱり優しい」
「優しくしてるつもりはないけど……陸が、大事だから」
「……ありがとう」
言葉は短いけれど、その一言に陸の気持ちがたくさん詰まっていた。
でも――その少し後、天の耳に微かな違和感が届いた。
「……けほっ……」
歩きながら、陸が小さく咳き込んだ。
顔をそっと背けて、すぐに何事もなかったように笑う。
「ん、大丈夫」
「喉、乾いた?」
「ううん。ただの癖みたいなもん」
天はそこで深く追及しなかった。
だがその後、陸の歩幅が少し小さくなっているのに気づく。
「……陸?」
「っ、は……っ……っ」
突然、喉を絞るような息遣いが耳に届いた。
振り向くと、陸が胸を押さえて、その場にしゃがみ込んでいた。
「陸っ!?」
天はすぐに駆け寄って、陸の隣に膝をついた。
呼吸は浅く、ひどく乱れている。
かすれた咳と、吸い込んだ空気が喉で止まる音――
「……っ、ごめ……天にぃ……ちょっと……苦しい、だけ……」
陸の肩が小刻みに震えていた。
焦点の合わない視線、震える指先。
でも、それでも必死に笑おうとするその姿に、天は胸が締めつけられた。
「……いいよ、謝らなくていい。陸、無理しないで。僕がいるから……落ち着いて、深呼吸しよ」
「っ……うん……っ」
天はそっと陸の背中に手を当てて、呼吸のリズムを一緒に整えるように言葉をかける。
「大丈夫」「僕がいる」「ゆっくりでいい」
その声に、陸は小さく頷いた。
「……全然、気づけなかった……ごめん」
「……俺が、隠してたから。天にぃは悪くない……」
陸の声は震えていたけれど、確かに安心が混ざっていた。
そのことが、今は何よりも大切だった。
❤️🔥今回あんまり面白くないかも、、、❤️🔥
すいません!!笑笑
リクエスト等ございましたら
コメントにお願し致します!!