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あまね🍡💠
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重厚な扉がゆっくりと開く。
その先には、静かな空間が広がっていた。
壁一面には数え切れないほどの写真が飾られている。
歴代の育成プログラム修了者たちだった。
災害現場。
能力犯罪の制圧。
海外での救助活動。
一枚一枚の写真には、それぞれの功績が記されている。
湊はゆっくりと歩きながら写真を見つめた。
「この人たちが……。」
日下部が静かに頷く。
「能力を、人を守るために使い続けた者たちだ。」
「彼らは強かった。」
「だが、それ以上に優しかった。」
その言葉に、湊は写真から目を離せなかった。
部屋の奥には一つのモニターが置かれていた。
日下部はリモコンを手に取り、映像を再生する。
画面に映し出されたのは、見覚えのある交差点。
物流事故。
大型トラック。
悲鳴。
そして、一人の少女。
「……。」
湊は息を呑んだ。
映像は、あの日の出来事を映していた。
能力者たちは状況を見ていた。
どう助けるか。
どの能力を使うか。
その一瞬。
画面の中で、一人だけ飛び出した人物がいる。
朝霧湊。
映像は、湊が少女へ飛び込む瞬間で止まった。
静寂が流れる。
日下部がモニターを見つめたまま口を開く。
「君は、あの時何を考えて飛び出した?」
湊は映像を見つめる。
少し考え、
静かに答えた。
「何も考えてません。」
「助けなきゃって思ったら……。」
「体が勝手に動いていました。」
日下部はゆっくり頷いた。
「それでいい。」
その一言は、とても穏やかだった。
「能力を持つ者は、能力で助けようとする。」
「炎なら炎で。」
「風なら風で。」
「念力なら念力で。」
「だが君は違った。」
日下部は湊を見る。
「君は能力ではなく、人を見ていた。」
湊は言葉を失う。
「能力は、人を助ける手段だ。」
「人を助ける理由にはならない。」
その言葉が、静かな部屋に響いた。
湊はその意味を考え続ける。
今まで誰にも言われたことのない言葉だった。
日下部は窓の外を見る。
訓練場では能力者たちが汗を流していた。
「能力は便利だ。」
「人々の生活を変えた。」
「多くの命も救ってきた。」
少し間を置く。
「だが。」
「能力だけでは人は救えない。」
「最後に人を動かすのは、人の心だ。」
その言葉を聞きながら、湊は静かに考えていた。
自分は特別なことをしたつもりはない。
ただ、助けなければいけないと思った。
それだけだった。
「能力者じゃない僕に……。」
湊は静かに口を開く。
「能力者じゃない僕に、何ができるんですか?」
日下部は少し笑った。
「その質問をする時点で、君は能力に縛られている。」
「えっ?」
「君はあの日。」
「能力がないから助けなかったか?」
「……。」
「違う。」
「能力がなくても助けた。」
湊は何も言えなかった。
日下部は湊の肩へ静かに手を置く。
「だから私は君を選んだ。」
「しかし。」
その表情が少しだけ厳しくなる。
「育成プログラムは優しい世界じゃない。」
「ここには全国から選ばれた能力者が集まる。」
「能力がない君は。」
「能力者以上に努力しなければならない。」
静かな沈黙。
「それでも来るか?」
湊はゆっくりと目を閉じた。
あの日の少女の姿が浮かぶ。
「助けたい。」
あの時、そう思った気持ちは今も変わらない。
湊は静かに目を開いた。
迷いはなかった。
「……はい。」
日下部は小さく頷く。
「その返事で十分だ。」
窓の外では、能力者たちの訓練が続いている。
能力があるか、ないか。
そんなことよりも、大切なものがあるのかもしれない。
その答えを知るために。
湊は、新たな一歩を踏み出した。
第14話 選ばれた理由 完
コメント
1件
うわ、めっちゃ好きな回だったわ…! 「能力じゃなくて人を見てた」って日下部さんの言葉、グッときたよ。 湊が「何も考えてなかった」って正直に言えたのも、そのまんまの良さが出てて好き。 能力者じゃない自分に悩む湊の気持ち、すごく伝わってきた。 「それでも来るか?」からの「はい」、短いけど重みがあったなあ。 これからが本番って感じで、続きが気になる🔥