この作品はいかがでしたか?
30
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「子供たちはこっちにいるんだな?」
「ああ、多分シーザーに連れ戻されてるだろうからな。あっちがビスケットルームで、なおかつ俺たちが避難場所にしていた雪山からこの研究所に入ってくる出入り口がこの辺にあるはずなんだ」
俺とチョッパーは走りながら辺りを見回す。
「ここから出して!」
「モチャの声だ」
「ジェイデンの言う通りだ……」
「モチャ!」
「えっ…? 狐のお兄ちゃん…?」
「そこを動くな! 行くぞ烏融、抜刀――灰神楽ッ!」
俺は刀を下から上に振り上げ、研究員を斬り倒す。
「チョッパー、モチャに鎮静剤を! 多分幻覚を見て俺たちを正常に認識できていない」
「わかった」
チョッパーがモチャに鎮静剤を打つ。
「どうだ?」
「正気に戻った」
「私、今まで何を…」
「お前、ここの扉を叩いてたぞ」
「そうだ。私、ここから出ようとして……」
「なあ、せっかく助け出したのに、お前何でここにいるんだ?」
「私たちは、マスターが用意してくれた空飛ぶガス風船で研究所に戻って来たの。でも、お兄ちゃんとお姉ちゃんが研究所に戻っちゃだめだって……」
「当たり前だよ! 他の子供たちは?」
「みんなビスケットルームに戻ったよ。そこにはキャンディがあるから」
「ダメだよ! そのキャンディを食べちゃ!」
「えっ?」
「大変だ、早くビスケットルームに行こう!」
「あぁ」
俺たちは急いでビスケットルームの方へと向かう。道中、子供たちの声が聞こえる。
キャンディのあるビスケットルームまでの道を鉄の扉を閉めて入ってこれないようにする。
「モチャ、友達を助けたいなら手伝ってくれ」
「わかった」
「モチャ、ジェイデン、押さえててくれ」
チョッパーが扉の取っ手部分を鉄の棒で塞ぎながら、モチャに絶対にビスケットルームに行かせちゃいけない、と言い聞かせる。
「ねえ、なんでキャンディを食べちゃダメなの?」
「それはな……あのキャンディが猛毒だからだ」
「え?」
チョッパーは出来るだけ優しい言葉でキャンディに入っているドラッグの危険性をモチャに説明した。
このままキャンディを食べ続ければ、大人になれないまま死ぬ。その言葉を聞いたモチャの瞳からぽろぽろと涙が溢れる。
「……わかった! もうキャンディは誰にも食べさせない! みんなでお家に帰るんだ!」
「そうさ。……ンッ、このままじゃ扉が破られる。モチャ、ジェイデンと一緒に行くんだ!」
「うん、でもチョッパーちゃんは?」
「おれはここで子供たちを止める。お前は、ビスケットルームのキャンディを処分するんだ」
「わかった!」
「行くぞモチャ!」
「うん!」
俺とモチャは扉を押さえているチョッパーを置いて、ビスケットルームへと走る。
だが、途中で数人の研究員たちが俺たちの前に立ちふさがるが、俺はすぐに斬り伏せる。
「悪いなモチャ、嫌なもの見せて」
「ううん、大丈夫!」
その目には涙が浮かんでいるのに、強い子だ。
「あった! キャンディだよ!」
「よし、モチャひとまずあれを持て! 俺は後ろの子供たちをどうにかする」
「わかった!」
俺が刀を抜かずに、後ろを見ると、後ろに大きな手があった。ロビンだ。
「…モチャ、走れ! R棟の方へ行くぞ!」
出入り口に差し掛かった瞬間、強烈な冷気が入ってくる。クッソ、モネか!?
後ろから子供たちと、麦わらの一味が合流する。
「狐のお兄ちゃん! 出口が閉じちゃったよ!」
「ウフフフッ、何も心配しなくていいわよ」
「モネさんだ…。モネさん、お願い助け「モチャ!」狐のお兄ちゃん…?」
「モネは良い人なんかじゃない。しっかりキャンディを抱きしめてろ」
「え…?」
「あら、酷い言い草ね。私はただ、喧嘩はやめていつもの様に仲良く分けて食べなさいと言っているだけでしょう?」
「それがよくねえっつってんだよ」
「ちょっと! 何してくれてんのよ!」
「そうだ! おれたちゃお前なんかに構ってる暇ねえんだ!」
「つれないことを言うのね。私はあなたたちのことはよく知ってるわよ。世間を騒がす麦わらの一味。会えて嬉しいわ」
モネが薄く笑みを浮かべる。
ロギア系、ユキユキの実の能力者。体を雪と化し、周囲に自在に雪を降り積もらせる事ができる『雪人間』だ。
「さむーい! 部屋中が吹雪に…コート脱いだ後でユキユキの実って何よ!」
「ナミさん、俺のコート着てていいから」
走るナミに俺はコートを脱いで渡す。それから俺は刀を抜き、モチャの前に移動する。
「モチャ、道は俺が切り開く。お前はただキャンディを抱えて走れ、いいな?」
「わっ、わかった!」
俺はモネが作った雪の壁を斬り崩しながら、モチャと共にR棟の方へと逃げる。
モネの目にまた涙が溜まっていく。
「優しいモネさんまでうそだった……全部、うそだったんだよ!」
「でも、俺たちは嘘じゃない」
俺の言葉にモチャの目が大きく見開かれる。そして彼女は、キャンディの入った袋を抱きかかえる。
「キャンディ寄越せ!」
「独り占めはダメなんだぞ!」
「だめっ、苦しいけど、これだけはだめなの!」
「ン、子供たちの動きが止まった。ロビンさんたちが追いついたかな。もう少し頑張ってくれモチャ!」
「うんっ! 私頑張る! みんなのために頑張るよ! 誰にも渡さない!」
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