テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
俺はつかさが嫌いだ。
柚木司、俺の双子の弟。
小さい頃からずっと一緒にいて、どんな時も離れなかった。
離れられなかった。
つかさは昔からわけがわからなかった。
戯れに虫の脚を捥ぎ、それを自慢げに俺に見せつけ笑う。
どうして、と聞いても意味がないことはわかっていた。
つかさには悪意がないから。
俺のことも虫と同じくらいの価値にしか見えていないのかもしれない。
つかさはいつも俺を殴った。
つかさが俺に暴力を振るう時の瞳が嫌いだった。
嗜虐と好奇の色が滲んだ琥珀色の瞳。
時にそれは淀んだ黒にも感じられた。
どうして、つかさは他の子みたいにできないのだろうか。
普通に遊んで、普通に笑って、普通に生きる…
ただそれだけの事がどうしてできないのだろうか。
ずっとずっとわからなかった。今もわからないままだ。
何度も逃げようとした。 でも全て無駄だった。
つかさは俺を逃がしてなんてくれない。
むしろお仕置と称していつもよりも酷く殴る。
逃げても、泣いても、もがいても、
つかさはそれを見て楽しそうに笑うのだ。
俺は逃げることを、恐怖することを諦めた。
土籠先生、俺の担任の先生。
先生はいつも放課後に俺のケガの手当てをした。
うんざりする程に聞かれた。誰にやられているのかと。
言うことはなかった。言ってもどうにもならないとわかっていた。
俺が傷つく度に俺よりも悲しそうな顔をする先生が嫌いだった。
俺だって痛いのは好きじゃない。 誰が好んで殴られるものか。
それに、知ってるんだ。全部わかってる。
せんせーが俺のことホントに心配してるのも、俺のケガが誰のせいなのか知ってるのも…
だってそうだろう。あんなにも分かりやすい例もなかなかない。
つかさは休み時間に俺を呼び、人気のないところで殴った。
つかさと教室を出て、ケガをして帰ってきたら誰もがつかさのせいだと思うだろう。
どうして、先生は俺にわざわざ聞くのだろうか。
俺には分からない大人の事情があるのだろうか。
まぁ、どうでもいいけど。
女子生徒に見つかった。甲高い悲鳴をあげて、足を震わせている。
ああ、しまった。早く自分も刺しておけばよかった。
くだらない考え事をしていたせいだ。
もう冷たくなったつかさを見ながら、胸に包丁を突き刺した。
熱い。
つかさの上に倒れ込んだ俺は、どんな顔をしていたのだろう。
笑っていたのか、泣いていたのか、それとも無表情だったのか…
それは俺にもわからない。
だんだんと視界が暗くなってきた。人間って随分脆いんだな。
俺はゆっくり目を閉じた。
コメント
2件
また面白い話を書いて、毎回神すぎるんだって!