煙草の苦い匂いが俺の恋を表している 。
🚬ー ー ー
好 矢 澪 月
コノヤ リョウガ
🚬 ー ー ー
「 俺 、硝子の事好き 」
気まづい沈黙と、煙草の灰が空間にある 。
背けていた瞳を茶色の瞳と合わせる 。
珍しく頬を赤く染めた硝子はその小さな口を精一杯大きく開けた 。
振られる 。
🚬 ー ー ー
「 あっっちぃ …. 」
夏真っ只中 。
此教室で過ごす初めての夏 。
「 なぁ 、傑 、澪月じゃんけん負けた奴がコンビニにアイス買いいかね ? 」
悟が団扇で扇ぎながら言ってきた 。
「 いーけど、悟いつも負けんじゃん 」
「 悟はドMなんだよ 」
「 そ 、 そーなのか 」
お前らぜってぇ負けねぇ !!
なんてフラグ立てて 、
「 見たか澪月 ! 」
このクソガキに負けた。
「 じゃあ!俺は練乳イチゴアイスで! 」
「 私は冷蔵庫にまだあるから良いかな 」
五条の練乳イチゴアイスと、俺のソーダアイス
そして 、
「 しょーこ 、アイス何がいいー? 」
さっきまで鼻で笑って眺めていた硝子に五条が聞く 。
少し悩んだ素振りを見せて 、
「 あ〜 、さっぱりしてて良い感じので 」
俺が想像しているアイスであっている筈 、だから、
「 え ?!何それ俺そんなアイスしらないよ 」
段々硝子の所へ近づいて 、
「 一緒に行こ 硝子」
手を差し伸べれば 、ちょこんと小さな手を乗せてきた 。
🚬 ー ー ー
「 あっっつ 」
外は思ったよりじめついていて 、汗が額から垂れる 。
ふと頭に浮かんだのは、悟と傑 。
「 悟達みたいに2人乗りする?自転車 」
「 え? 出来んの? 」
「 うん 」
駐輪場まで戻り自転車をパクる 。
硝子が荷台に乗る時きしんだ音がした 。
古い自転車だから仕方がないと思って顔を見ると恥ずかしそうに照れていた 。
「 これ古いからね 、まあ 硝子は軽いし平気だよ 」
「 ちゃんと掴まれよ! 」
そう言えば小さく頷き 、俺の腰に手を回した 。
( やっば、死にそう )
坂道を下り涼しい風が来ても、俺の熱は下がらなかった 。
坂下のコンビニにはあっという間に着いて 、腰にあった手ももう無くなっていた 。
「 五条確か、練乳イチゴアイスって言ってたよな クソ高いけど 」
そう言う 、硝子の後ろから値段を除くと、360円 。
少しだけ殺意が湧いた 。
「 はぁ?!悟自分で買わないからって 」
「 まぁ、負けたんだししゃーない 」
渋々財布から金を取りだし店員さんに渡す 。
後ろでは硝子はニヤついていて 、面白がっていた 。
コンビニから出て 、坂を見上げる 。
「 帰りの事考えてなかった 」
あの急な坂を下ったのだから上るのは当たり前 。
申し訳なさそうな顔をする硝子に 、
「 平気だよ、硝子ならちょちょいと届ける 」
なーんて格好つけて、荷台を叩く 。
ちょこんと座りまた腰に手が回ってきた。
硝子は俺といると少し態度が違くて、気を使われているのかと考えてしまう 。
「 おぉ、 好矢早い 」
関心する目はキラキラ輝いていて 。
「 可愛い 」
小声で言った言葉は届かなかったらしい 。
「 まぁ、俺男だし 」
「 知ってるよ 」
ガゴンッ
小さな小石に車輪が躓き倒れる 。
倒れて数秒 、さっきの言葉を考える 。
男として見てくれている喜びに顔の熱が収まらない 。
「 ご、ごめん !大丈夫? 」
慌てて硝子の場所に行くと、楽しげに転んでいた 。
「 へーきへーき 、ってやば 五条のアイス蓋取れてる 」
目の前には落ちた赤のいちご 。
「 … 」
お互い黙って顔を見て
「 ぷっははは 」
硝子の一番の笑顔を見れた 。
「 “ 澪月 ”がちゃんと前見ないから 」
初めて呼ばれた澪月呼び 。同級生で初めての名前呼び 。
頭にクエスチョンを浮かべる硝子 。
あぁ 、好きだ 。
「 まっ、押して帰るか 」
🚬 ー ー ー
「 五条!買ってきたぞ 」
五条に見せつけるように、レジ袋を掲げる 。
ゲームしていた手を止めて 、
「 おー!さんきゅー 」
興奮した目つきで駆け寄ってくる五条 。
硝子がレジ袋を私にひひとしてる 。
スプーンを取り出し 、アイスを取りだした瞬間 。
「 しょーこ!!!!! りょーがぁぁぁあ!! 」
素晴らしい反応に笑いが止まらない 。
「 やっばバレた 逃げろ 」
スタートダッシュをする硝子 。
逃げ足だけが速すぎる 。
「 ちょっと俺の事置いてくな! 」
1歩先にいる硝子を見ると 、他の子にはない好きがどんどん芽生えていく 。
🚬 ー ー ー
「 真逆 、硝子と任務とは 」
隣で歩く私服の硝子 。
初めて二人で行く任務 。
「 任務っていうかお使いだけどな 」
「 あ ! 澪月 ! 」
髪を巻いた女の子が俺の名前を呼んでよってくる 。
同じ中学だった 、名前しか覚えていない女 。
愛想と顔だけはいい俺はいつからか、女に囲まれていた 。
「 あ! 美莉亜ちゃん!久しぶりー ! 」
最近していなかった仮面の笑顔 。
「 澪月最近見かけなくて寂しかった 」
俺の腹を殴る女 。
可愛いなんて思わない 。
「 あはは 、寂しん坊なんだ可愛いね 」
口から出た挨拶の可愛いに 、喜ぶ女と 、隣で睨む硝子 。
あぁ、可愛い 。
「 澪月その子達と話すなら私先に買い物してくるから 」
少し早歩きで逃げる硝子 。嫉妬心が初めて見えてつい追いかける 。
「 なんで着いてくんの 」
「 えぇ!澪月行っちゃうの?!」
キンキン声が耳につく 。
「 うん!俺今硝子と買い物中だから 」
少し嬉しそうな顔をした硝子を見て 。
顔はボッと赤くなる 。
「 さっき嫉妬してたでしょ 」
意地悪く聞いてみた 。
「 してない 」
あんな態度をとって嘘をつくとか 、バレないと思ってるのかな 。
素直じゃないところが好き 。
「 ふーん 。 まぁ、そんな所が硝子は可愛いよ 」
つい口に出た言葉に硝子は不機嫌になる 。
「 は ”? 」
「 アンタ女子全員に言ってるの? 」
そんな事ないのに、怒ってるのが可愛い 。
「 んーん、こんなに心の籠った可愛いは 、硝子にしか言ってないよ 」
ボンッと炎が出るほど赤らめに顔 。
こっちまで恥ずかしくなる 。
🚬 ー ー ー
店に入ったら面倒臭い女ども 。
硝子は物を唯カゴに入れる機械のようになって 。
「 あ ! 実弥ちゃん髪切った?可愛い」
「 俺も真理ちゃんのこと好きだよ笑」
別に思っても無い事を口にしてしまうのは悪い癖 。
なにか考え事をしている硝子 。嫉妬してくれてたらなって願ったり 。
「 しょーこ行こ 」
「 先帰ってて、私買い忘れたものあるから」
そう言ってカゴを持ち走り去る硝子を 、ほっとけなくて 。
手を伸ばした時 、
「 私だけに言えばいいのに 」
その一言が俺の頭も心も何もかも狂わせる 。
小刻みに震えていて 、悲しい姿を見てハッとする 。
その細い肩に手を置き 、口を大きく開く 。
「 何で泣いてんの? 」
自分でも屑みたいな質問だってわかってた 。でも知りたかった 。
「 泣いてない 」
潤った瞳で俺を睨む 。
どうにも歯止めが効かないらしい 。
1つ瞬きをして、覚悟を決める 。
「 硝子 、やっぱり今言うね 」
「 俺 、硝子が好き 」
驚きのあまり目を見開く硝子に顔を向けれない 。
3秒間の沈黙があり 、肯定を期待した 。
「 ごめん 、澪月の事そんな目で見たことない 」
うん 。そっか 。心の中は冷静で 、でも体は焦って 。
俺よりも良い人はいるし、硝子が好きだから 、傷つけたくない 。
この話はこれで終わりだ 。
うんだから、最後くらい 。泣かせて欲しい 。
「 そっか!ごめんな困らせて。でも俺諦めるつもりないから、いつも通り接してよ」
「 う、、うん 」
いつも通り 。
自分で言っといて出来やしない 。
煙草吸ってるのも
五条を馬鹿にしてるのも
俺を少しだけ愛おしそうに見てくれてるのも
全部全部大好きだ 。
寮に帰れば夏油がいて 。
「 やぁ、硝子はどうしたんだい? 」
「 嗚呼 、買い忘れがあったらしい 」
「 傘もってるのだろうか 」
俺 、最低だな 。女の子一人を置いていって雨の中1人で … 。
「 まぁ今悟が向かってるから平気だろうけど 」
あ、そうだよ悟でいいんだよ 。
俺なんかより悟の方が 。
「 あ、そうだ 、明日から私たちは一緒に任務だよ 」
顔を見ることが無くなりほっと安堵する 。
俺最低だ 。
「 勘違いなら殴っていいんだけど、硝子の事好き? 」
夏油が言った言葉 、あんまり理解できなくて 。
「 好きとか、そういう次元じゃなくて 、」
しどろもどろになる俺にそっと手を伸ばし、頭を1撫で 。
「 私は澪月の事応援しているよ 」
この言葉に少しだけ救われていた 。
🚬 ー ー ー
硝子と悟が帰ってきた 。びしょ濡れの硝子と濡れてない悟 。
嗚呼お似合いだ 。
「 硝子! 明日私たち任務で3日程いないから 、悟を頼むよ 」
肩を組んで言ってくれた夏油 。
その自然さにいつも通りが出来る 。
「 えぇ 私が五条の面倒見んのかよ 」
気だるそうに言う硝子 。
「 イケメンと一緒なんか最高だろ! 」
別に悟の事そう思ってるけど、頷いて欲しくなかった 。頷いて欲しくなかった冗談 。
頷きはしなかったけど、否定もしなかった 。
「 私、1人でいこうか? 」
夏油が言った 。
「 嫌 、行くよ 」
夏油1人で大変な任務で、俺のせいで死んだ報告なんかゴメンだ 。
硝子のことを忘れられていいじゃんか!何事もプラスに捉えればいいんだよ 。その間 、2人きりの生活になるけどあの二人にはくっついて欲しい 。きっと硝子も好きだろう 。
俺らを呼ぶ時に1番に呼ぶのは毎回悟 。
「 悟!傑!澪月! 」
俺は三番目 。
「 泣くぐらいなら行かなくていいんだよ 」
優しくかける声はいつもの小馬鹿にしてるような感じではなく、ただひたすらに、俺を慰め心配していた 。
「 平気 、いこうか 」
俺は硝子のいる場所へと向かい 、硝子を呼ぶ 。
任務前は皆硝子を呼び救急セットを貰う 。
「 あ!いたいた!硝子ちょっと手伝って 」
「 おう !澪月 」
🚬 ー ー ー
「 明日の任務なんだけど、硝子にも来て欲しい 。」
本命はこれだ 。きっと断られる 。あの時みたいに 。
「 無理よ 、私は皆が怪我した時に直ぐに治療できる場所にいないとだもの 」
硝子がいないとみんなが困る 。彼氏でもないくせに独り占めしようとするのは気色が悪い 。
「 そっか 」
俺は背を向け部屋に戻った 。
🚬 ー ー ー
任務先でも頭は硝子1色で 、夏油の足を引っ張っていた 。
告白なんかするもんじゃない 。
見慣れたドアノブに手をかける 。
「 いい匂い! 」
1番に言ったのはお好み焼きの感想 。
1番に思ったのは硝子の事 。
「 おっかー 」
「 あれ 、なんか日焼けした? 」
2人で可笑しそうに笑っていて 、胸はギュッと苦しかった 。
「 お好み焼きじゃん ! 」
別に匂いで気付いていたことを言う 。
悟は得意げに
「 俺特性 ! 」
と笑った 。
夏油と悟が話していて。
俺は硝子に 声をかける 。
「 硝子ちょっといい? 」
🚬 ー ー ー
俺の部屋に硝子がいる 。
硝子が不思議に
「 何 ? 」
と 聞いてくる 。
「 寂しかった 」
何て本音を伝える 。
顔を押し赤く染まるのを抑えていたのに 。
ぎゅ
硝子にハグをされた 。
「え? 」
今までで一番のマヌケ声 。
それでも気にせず言葉を挟む 。
「 私も寂しかったよバーカ 」
反則だ 。
顔にはもう熱しかなくて、硝子を見ようも目が眩む 。
あの時よりも真剣に
「 あのさ、俺 、硝子の事大好き 。硝子が思っているよりずっと好きで愛してる 。 」
「 俺 、硝子の事好き 」
何回も何百回でも言ってしまう 。
そのくらい愛らしくて 、自分のものになって欲しい 。
ひらりと硝子の服から灰が落ちてきて 、それと同時に
「 ごめんなさい 」
と 振られる 。
返事をしようとした時にはもう唇は塞がれていた 。
好きだ 。好きじゃないなら 、俺の事を期待させないでくれ 。
END
コメント
2件
平然と自転車をパクる呪術師が 面白過ぎて暫く先に進めなかった 硝子は好きじゃなくて愛してるなんだよ!!! そういうことでしょ!??!🤷🏻♀️🤷🏻♀️