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『僕とバッドエンドの物語』
初めに言っておく。
この物語はバッドエンドだ。
「おかあさーん!」
「そんなに走るとまた転ぶわよ?」
「だいじょうぶだよ!ぼくもうおおきいもん!」
「ふふ、そうね、もう大きいものね」
子供の頃、友達のいない僕と一緒に遊んでくれたのはお母さんだった。
いつも明るく、みんなに優しいお母さん。
僕はそんなお母さんが大好きだ。
大好きだったのに…
「おかあ、さん?」
「い、ずく?」
「出久なの、?」
「うん、そうだよ、おかあさん、」
ある日、部屋で遊んでいるとキッチンから物音と悲鳴がした。
行ってみるとそこには、血まみれのお母さんと見知らぬ男がいた。
「おかあさん、」
「君のお母さんはもう、”死んだ”」
…え?
今、死んだって、言った?
「おかあさんが、しんだ?」
「あぁ、すまない」
すまない?すまないだけで許せると思う?許せるわけないじゃん。
「え…ヒーロー、?」
「ん?なんだい?」
「ヒーローは、人を、たすけるんじゃないの?」
「………」
何も答えなかった。ヒーローなのに。
僕の思い描いていたヒーローは、元気で、みんなを助けて、僕らを、人間を笑顔にする。そんなヒーローだった。
それなのに…
「じゃあ、私はここら辺でおいたまさせてもらうよ」
「………」
「ヒーローって、ひどいんだね」
「…?」
「1人の命をころして、こどもの命救ったからもういいや?」
「それで「テレビでこどもの命を救ったあの有名ヒーロー!」って放送されてチヤホヤさせる?」
「………」
ありえない。ヒーローとして、いや人としてありえない。
1人の命のためだけでも救ったのはいいと思う。でも「もういいや」はさすがにやばくない?
ヒーローなんかよりヴィランの方がよっぽどいい。
「…ヴィラン?」
「その言葉を口に出すんじゃない!」
「その言葉は君を汚してしまう!あんなヒーロー殺しは、君に悪影響だ!」
…悪影響?ヒーロー殺し?何言ってるの?このヒーローは。
ヴィランは、ヒーロー殺しなんかじゃない。
あんな人殺しと違って。
そう。これはバッドエンド。
僕がヒーローの道を諦め、ヴィランの道へ進むバッドエンドだ。
コメント
2件
は?何これ好き💢(???)