黄赤桃赤しねた
包み紙を開いて、
丸く、透明で綺麗な飴玉を口に含む
硝子玉みたいに綺麗な飴玉
普通よりも少し大きめで、周りには砂糖が付いていて。
レモン味なのに、酸味はあまり感じられず、
駄菓子特有の甘さが
俺を慰めてくれている気がして
少し、泣いてしまった
昔から、辛いことや悲しいことがあったら飴玉を舐める。
これは俺にとって
元気になるおまじない。
昔、歳の離れたお兄ちゃんが、
泣き虫だった俺に教えてくれた魔法
俺が涙を流す度に見つけてくれて
おまじないをかけてくれたお兄ちゃん。
おんぶされて家まで帰っている時の
桃色のふわふわな髪からする飴玉よりも甘い匂いが、好きだった。大好きだった。
『お兄ちゃん、』
『……さとみ、』
名前を呼んで、口の中で飴玉を転がしていたら
もっと涙が溢れてきて。
交通事故でお兄ちゃんが星となったあの日
慰めてくれる彼の存在を亡くした俺には
もう生きる意味なんてなくて。
泣いても泣いても、もう二度とおまじないをかけてはくれなくて。
お兄ちゃんに会いたくて、
死にたくて、
消えてしまいたくて
だけどそんな勇気なんてなくて。
お兄ちゃんが俺のためにとストックしてくれていた、瓶に詰められた飴玉
いつの間にか少なくなって
今舐めているこれが最後
お兄ちゃんが居なくなり
おまじないの飴玉も消えてしまった今
俺はどうやって生きたらいいの。
『ばか、ばかぁ゛っ泣』
『お兄ちゃんのばか、っ!泣』
俺を、置いていくなんて。
貴方が居ないと駄目なことなんて
貴方が1番わかってたでしょ
立ち直るなんて出来ないよ。
もう一度、その暖かい手で俺の涙を拭って
その大きな手で、俺の頭を撫でて、
低い声で、優しい目で、
おまじないをかけてよ。
しばらく嗚咽をこぼし泣きじゃくっていたら
不意に、体をぎゅ、っと抱きしめられる感覚がした
『……おに、ちゃ、?』
「……お兄ちゃんじゃなくて、ごめんね。」
「ごめん、ごめんね。」
俺を強く抱き締め、 耳元で謝り続ける
親友で、幼馴染の
黄色髪の彼
「僕は何もできなくて、ごめん。」
反応がなかったから、勝手に入ってきたのか
「……僕は、」
「僕は、君のお兄ちゃんの代わりになんてなれない。」
「赤のこと、笑顔にさせる方法も知らない」
「……それでも、赤の」
「君のそばに居ることならできる」
「抱きしめることも、涙を拭ってやることもできる」
「……もう泣かないでよ。」
「赤が泣いてると、僕も苦しいんだ」
そう言って、さらに強く抱き締められた
綺麗な黄色の硝子玉のような瞳に見つめられる
見つめあって、また、俺を優しく包み込むように抱き締めた
この世でいちばん
甘い香りがした
ああ、この人は
何より暖かくって、優しくて
それでもって繊細で、綺麗で
俺を元気にさせてくれる
……
もう、大丈夫
赤『……お兄ちゃん』
『今までありがとう。』
赤『ずっとお墓参り来れてなくて、ごめんね。』
あのね、お兄ちゃん
おれ
一緒に歩きたい人が出来たよ。
お兄ちゃんみたいに大きな手じゃないけれど
何よりも暖かくて、優しいんだ
そんな手で撫でられて、愛されて
俺は幸せ者だね。
晴天の空の下
誰かの笑い声が聞こえた
END
いみふ
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