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凄く上手ですね! 続きが楽しみです!!
(…ひ……あ…ひ……)
───あさひ───
「はっ!」
朝日(あさひ)は肩で息をしながら目を覚ました。
また、いつもの夢だ。
服が汗でびしょびしょで、気持ちが悪い。眉間に皺を寄せながらぼんやりと起き上がる。
テレビを付ける。いつもの天気予報。
いつものパーカーに着替えながら、それを見る。
───今日は、晴れるらしい。
朝ごはんを食べて脳を起こしていると、あの日の事を思い出す。
───お兄ちゃん。───
この部屋は日向にある為、明るくて暖かい。
それが余計にお兄ちゃんとの思い出を呼び起こしてしまう。
ご飯を食べ終え、ふぅっと一息つく。
おなかいっぱいの時の癖だが、今のは気持ちを切り替える意味もあった。
鼻歌を歌いながら支度を済ませる。
(今日から高校生活かあ 。学校なんて久しぶりだなあ。)
少し体が強ばる。
大丈夫、大丈夫。と自分に言い聞かせる。
笑顔で太陽を見上げる。
今度は、いい子でいるから。
───行ってきます、お兄ちゃん。
───全く寝られなかった。
亜狼(あろう)は目を開けた。
満月の夜は、あの日を思い出してしまう。
息が上手く出来なくなって、震えが止まらなくなってしまう。
───あの日、あんな事をしなかったら───
体を起こしてぼうっとしていると、ドアをノックする音がした。
「亜狼起きてる?」
「あか、ねえ」
亜銀(あかね)がドアを開けて顔を覗かせる。
左目を隠した前髪を見て、泣きそうになる。
「あかねぇ、ごめん…ごめん」
「いいんだよ、亜狼が謝ることないから。姉のあたしがしっかりしてないとなのに」
「そんな事言うなよ…」
亜銀はそれを聞いて、少し悲しそうな顔をしたあとに微笑んだ。
「じゃあ、朝ごはん出来てるから」
「ありがとう」
亜銀が階段を降りていく音を聞いて、亜狼は俯いた。
深呼吸をする。
「…よし」
鏡の前に行って、無理矢理笑顔をつくる。
───あかねぇを悲しませないように。
朝が来た。
歌詠(うた)はゆっくりと体を起こす。
窓を開けて、いつもの様に確認する。
───盗聴器が無いか。盗撮されていないか。
2階とは言え、何があるか分からない。
自分の部屋が終わると、窓から身を乗り出して、隣の兄の部屋を確認する。
(見た感じ大丈夫、かな)
そして耳を澄ませる。
あの変な音は、聞こえない。
鏡の前で、綺麗な茶色い髪の毛を束ねる。
「俺…」
やっぱり女に見える。
髪の毛を短くしようか迷うが、これ以上短くしたら落ち着かない。
小さい頃からこの髪型だったからな。
「…お腹空いた」
朝ごはんを食べに部屋から出る。
階段を降りる前に、兄の部屋のドアの前へ。
「兄さん、起きてる?」
この時間には既に起きている事は知っている。
「今日も大丈夫そうだったよ。てか俺、今日から高2じゃん。実感湧かないなあ。」
明るく話す。
───返事は、返ってこない。
いつもの事だ。
「…じゃあ、朝ごはんちゃんと食べてよ、行ってくるから」
───兄さんは俺が守るんだ。