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晃河がそう言うと明日香は嬉しそうに笑う。
「いいよ。実は俺も誘おうと思ってたんだよね」
「なんだ。じゃあ俺から誘わなければよかった」
晃河は頬を赤くしてそう言う。
「ダメだよ。今すごい嬉しかったんだから。いつでもデート誘って?」
明日香がそう言うと、晃河は明日香の胸元に顔をうずめた。
「どうしたの?急に甘えて」
「…寒いの」
「しょうがないな。俺があっためてあげる」
明日香はそういった後、晃河をぎゅっと抱きしめた。
「暖かい?」
「…ん。暖かい」
夕方の2人きりの部屋は暖かい空気に包まれた。
外の景色は枯れ葉が風に舞い、冬休みの訪れを告げていた。教室では先生の2学期最後の挨拶が行われる。
「それじゃあみんな、良いお年を〜」
先生のその言葉に生徒たちも「良いお年を〜」と返す。
明日香は荷物をまとめて立ち上がる。
「じゃあ颯人。良いお年を〜」
「うん。良いお年を」
颯人が手を振りながらそう言うと、明日香も手を振り返し、晃河の元へ向かう。
「帰ろ」
明日香のその言葉に晃河はうなずき、2人並んで教室を出る。夕日が沈む中、2人は分かれ道で向かい合う。
「じゃあ、またね」
「うん」
晃河がそう言うと、明日香は振り返って歩き出す。そんな明日香の手を晃河はパッと掴んだ。
「ん?」
明日香が振り返ると、晃河は明日香をぎゅっと抱きしめた。
「ちょっ、晃河。誰かに見られたらやばいって」
「…ちょっとだけだから」
「わかったよ」
明日香はそう言って晃河の背中に手を添える。
「もしかして、寂しくなっちゃった?」
「…うん。冬休み入るから」
晃河のその言葉に明日香はふふっと笑う。
「明後日クリスマスだからすぐ会えるじゃん」
「いいのっ」
晃河は少し拗ねたようにそう言う。
「ほんと晃河は可愛いね」
明日香はそう言って晃河の頭を撫でた。それから少しして、晃河は明日香から離れる。
「もう大丈夫。じゃあ、またクリスマスにね」
「うん。またね」
明日香がそう言って手を振ると晃河も手を振り返した。
そして、クリスマス当日。夕日が沈んだ頃、2人はイルミネーションを見るために街中を歩いていた。
「やっぱりカップルだらけだね」
「そうだね。俺たちもそうだし」
明日香はそう言ってニコッと笑う。
「知ってる人いたらどうしよう」
「ん〜、その時は…全力で逃げる?」
「なんか余計に怪しいじゃん。それ」
「あぁ…そっか。まぁ、そん時はそん時だな」
しばらく歩き、クリスマスツリーが見えてくる。
「見て!見えてきたよ」
晃河は指をさしながら嬉しそうにそう言った後、歩くスピードを早くする。そんな晃河に明日香もついて行く。
少しして晃河はクリスマスツリーのイルミネーションを見て立ち止まる。
「おぉ〜」
目をキラキラさせてクリスマスツリーを見ている晃河を明日香は笑顔でじっと見ていた。しばらく見ていると、晃河が気づいて明日香を見る。
「何見てんの」
「いや、目キラキラさせて可愛いなって思って」
明日香のその言葉に晃河は頬を赤らめて辺りを見回す。
「…あっち行こ」
晃河はそう言ってイルミネーションのされた木が両側に並んでいる道を指さす。
「いいよ。行こっか」
イルミネーションがされてキラキラしている道を2人並んで歩く。
「綺麗だね」
「そうだね。綺麗」
晃河はそう言ってニコッと笑う。しばらく歩いていると、ふと晃河が自分の両手にはーっと息をかけて手を擦る。
「寒い?」
「うん。手袋、持ってこれば良かった」
晃河がそう言うと、明日香は晃河の右手を自分の左手で包み込み、上着のポケットに入れる。
「これで寒くないでしょ?」
「…うん」
晃河は顔を赤くしながらそう返事をする。少し歩くと、ふと晃河が呟く。
「手、繋ぐの今日が初めてだね」
「そうだね。本当は一緒に帰ってる時とかに繋ぎたかったんだけど、バレたらやばいかなってずっと繋げなかったんだよね」
「今は大丈夫なの?」
「大丈夫。ここに知ってる人なんてそうそう…」
そこで明日香は言葉を止め、手を繋いだままポケットから手を出した後、晃河の手を引く。そのまま木の方へ駆けていき、木の裏へ回る。そして繋いでいた手を離し、晃河を優しく木に押し付ける。
「ちょっ、急に何」
「しーっ」
明日香はそう言いながら人差し指を鼻に近づける。晃河はこくりと頷き、木の陰から何かを見ている明日香を見つめる。少しして、明日香は安心したようにふぅ〜っと息を吐いた。
「何?誰かいたの?」
「うん。同級生居たから」
「マジか。バレてないかな?」
「うん。多分大丈夫」
「良かった〜」
晃河はそう言って安心したような表情を浮かべる。
「夜ご飯、食べよっか。予約してあるから」
明日香がそう言うと、晃河は嬉しそうに笑う。
「ありがとう。ちょうどお腹空いてたし、楽しみ」
「それなら良かった。じゃあ行こっか」
明日香はそう言って晃河の手を握り、歩き出した。
お店に着き、席に座る。晃河にメニュー表を見せながら明日香が言う。
「ここのチキン、美味しいんだって」
「チキンか〜!クリスマスっぽいね」
「でしょ?」
「うん。明日香センス良すぎ!」
晃河がそう言うと、明日香は嬉しそうに笑った。
「あとね、ここチキン専門なんだけど…」
明日香はメニュー表をペラペラとめくり、指を指して言う。
「クリスマス限定でケーキを販売してるの」
「おぉ〜。美味そ〜!」
晃河は目を輝かせてそういうが、メニューの注意書きを見て不安そうな顔をする。
「でもこれ、予約必須って書いてあるよ」
「晃河、安心して。店予約する時にケーキも予約しといたから」
明日香がドヤ顔でそう言うと、晃河は再び目を輝かせる。
「も〜!明日香、出来る男〜!」
晃河がそう言うと、明日香は照れたように頭をかいた。
「まぁ、晃河の為だし?」
「俺のため…」
そう言って明日香は嬉しそうに笑う。
「ほら、チキン頼も。どれにする?」
そして2人はチキンを頼み、チキンが運ばれてくる。ケーキはチキンを頼んだ際に食後かどうか聞かれたので「食後でお願いします」と頼んでおいた。
運ばれてきたチキンを見て、晃河は目を輝かせた。
「うわ〜!美味そ〜!」
「だね!早く食べよ〜」
「いただきます!」
「いただきま〜す」
手を合わせてそう言い、2人はチキンを頬張る。
「美味っ」
明日香がそう言い、晃河の顔を見る。晃河は目をつぶって「ん〜」といいながら幸せそうな顔をしている。そんな晃河を見て、明日香はふふっと笑った。
しばらくして2人はチキンを食べ終える。
「ふぅ〜、食った食った」
「だね、もうお腹いっぱい」
「まだケーキあるけど、大丈夫?」
「大丈夫。デザートは別腹だから」
晃河はそう言ってニヤッと笑った。
「それじゃあ、そろそろ頼もっか」
晃河がその言葉に頷くと、明日香はケーキを頼む。店員さんが去ると、明日香はカバンからラッピング袋を取り出す。
「ケーキ待ってる間に、これ」