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初恋

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初恋

1 - 初恋

♥

42

2023年11月28日

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「寒…ッ」

少し早めに、出されたこたつに潜り込み、ぼーっと空を眺める。

例年より早く各地で初雪が観測されるほどの気温。

ここでの初雪はまだだが、今すぐにでも降り出しそうだ。

「さすがにアイツも…」

風邪をひくのも個人の自由。ただの幼馴染の、

「俺には関係ない…か…」

足元から、温かさを感じ始め、だんだんと眠くなり始める。

猫になったらずっと暖かい家の中で過ごせるのにな…

冬がなかったら、ずっと暖かいのにな…

そんなことを眠気にさらわれた脳内で考える。

その家の前で、インターフォンを押すのをためらっている少女がいた。

意を決したかのような表情をし、下を向きながら、何度も見えないままで押す場所を間違えながら、やっとでベルが鳴る。

ピンポーン

明るい音とともに部屋の中にいる少年の目が数ミリでとじそうな寸前で急に眼を見開く。

「チッ誰だよ。わざわざあんな外に…」

「ハーイ…」

ガチャ

「やっほ!澪(

みお

)!」

俺の気持ちとは真逆な明るい声が、ドアが開いた瞬間に聞こえた

少年の顔が少しゆがみ

それと同時に急いでドアを閉めようとする

「え、ちょっ!まって!」

閉める勢いに逆らう力が、強すぎて玄関のドアが大きく開くと同時に外の空気が温かい室内に入ってくる。

「さっむ!」

これまでに聞いたことがないような裏返った声で言葉を発す

「はぁ?まだ十月よ?そんなんじゃ今年生きてけないでしょ!」

「大丈夫ですー。今年は初とは ち が っ て !勉強をしますので、家にいるから大丈夫でーす」

「なんで私と違ってなの!」

「ドアを開ける力が男子より強いバカ力のやつは勉強大嫌いだもんねー?」

起きてから大声を発さなかった口が精一杯の罵倒を浴びせる。

少し俯き、小刻みに揺れ始める。

「あれあれ?勉強ができないことで今更悩んでいるんですか?」

「べっつに?ていうか私も女子なので、しかも中三!立派な女性ですよ??」

「立派な女性は、こんな時期まで、半袖半パンじゃありませーん」

「いいんですー。はぁだるっ!せっかく澪の大好きなリンゴ持ってきてあげたのになー」

その単語を聞き少年の目に少し光りが入る

そういい乱暴につかんだビニール袋を押し付けてくる

夏でもいつでもあんな格好をしているのに雪のように白い手で、

「初(

うい

)の親に感謝です。感謝ー」

「私も持ってきてあげたんだから感謝しなさいよ!」

「はいはーい。寒いからじゃあn…」

ふと初を見ると、顔や耳が赤くなっている。

「?お前寒いの?顔と耳真っ赤じゃん。」

「!!//いいでしょーが」

「風邪ひかれちゃ困る」

手袋も何もしていない冷たくなっている手を掴んで家に連れ込む

「うわあっ!」

バタンッ

────

先ほどの玄関との寒暖差が激しく、

部屋の中が暑いような錯覚が起きる

「…ょ…!…っと!ちょっと!」

「あーごめんどした?」

「手。離してくんない?」

「あ、ごめん。」

先ほどの玄関での言い争いが嘘かのように部屋の中に静寂が流れる。

「何で家に入れてくれたの?どうせ近所なんだから、心配されなくてもすぐ家に帰って暖まれるのに」

…言われてみるとなんでだろ。別にお隣のおばちゃんが来ても寒そうだから家に入れる。とかはないし…。

「…わかんない。」

「あっそ、じゃあもう帰ってもいい?勉強しないとなんだけど」

「え!!!?勉強!?」

さっきまで勉強できないからなーっていじってたやつがそんなことを言い始めるからびっくりした。

「何でそんなに驚くの!?」

「え、いや意外だなーって。」

誰でも驚くだろ。勉強と運動どっちが好きかって問うたら即答で運動って返すやつが勉強をしないとって言い始めたら。

「私も頑張ってるの!目指してるとこあるし」

「あ、そうだよな、ごめん。ちなみにさ、どこ目指してる?」

「デリカシーないね。雪雫高。」

「え、同じ…。もしかしたら来年もお前といるの?」

「嫌ですか??幼馴染と一緒だったら嬉しいもんかと」

普通はそうなのか…初もってこと?俺感覚鈍ってるのかな

「へーそうなんだ。ま、息抜きも大事だから、こたつ入って待ってろ」

「?うん。」

さっき手から奪い取った…貰った、のほうが人聞きがいいか。

りんごを一口サイズに切り分ける

こういうのって兎の形にできたよな…

あとは…花とか?

椛の花が最初に思い付いたから、切ってみた。

秋っぽくていいかも…色合いも…

「わ、下手…。」

理想通りにいかないものだと今更気づく。

まだりんごの季節。秋なんだな。

今でこんなに寒かったら、受験当日は手がかじかんで何も書けないんじゃないか?

「まだぁー。何してるのー」

「あ、はーい」

急いで切り分けたものをお皿に乗せ、向かう。結果工夫したのはあの二つだけだったな。

「一応客人だけど、俺は召使じゃないんだから。」

「へへっいいのいいの~!」

「あ、さっきのりんごだ!え、食べてもいい?」

「食べてもいいから持ってきてるんだよ。さすがに目の前で食うだけは気が引けるしな。」

「飯テロって性格悪いよ。」

「…ま、食えば。」

「あ、いっただきまーす」

一番上にある椛に気づかずそれを手に取り口の中に放り込もうとする。

「ちょっ!それ、模様あるんだよ。頑張った。へたくそだけど…」

りんごを掴む手が止まり、顔の正面に持ってくるとじっと眺める。

「…?」

「何かわかんないよな。下手すぎて」

「椛でしょ?」

「何かわかるし、細かいところまでできるんだねすごーい」

「あ、わかる?よかったぁ…」

なんか褒められると自信作のように感じてきた。

初といると楽しい気がする。

クラスの男友達と話してるときとは違うけど、何か違う感情がある。

…別にいいや。楽しいからな。

こんなことをクラスのやつらに言ったら、馬鹿にされるんだろうなww

らぶらぶーって…。

ぁ…もしかして…俺初のこと…?

あぁ、もういいやそんなこと考えてたら、変な空気になるし。

ってか褒めてもらえたよな!やったね!嬉しい。

こたつの足元のほうを見て小さくよしっといいながらガッツポーズをする少年。

その向かいにいる少女は、隠せてないのになと思いながら、優しく見る。

その表情は親のような優しさではなく、__が、相手が恋しいような表情をしていた。

小さく微笑みながら少女は小さく言う。

「隠せてないのに、面白い…」

その先の感情には気づいていないよう。

あぁ、何で澪といると楽しいんだろう。

今日だってお母さんがここに届けに来る役を自らとってここに来たのに。

インターフォンも小さい頃は当たり前に押せたのに。

りんごって聞いた時のあの嬉しそうな顔も…好き…

……す、好き?

私が?澪に対して?

…そ、んなわけ…な、い…よね?

…最悪。変なこと考えちゃったじゃん。

「どした?初。」

そんなことを考えてた本人に急に話しかけられ、変な声で答えてしまう。

「んぇ?な、なにも?」

明らかな挙動不審だ。怪しまれる。

「へー。そーなの?」

何にも気づいていないようないつもの顔でこちらを向いてくる。

これ、わざとじゃなくて、本当に気づいてないな…

逆にこんなに鈍感なら心配する。

「ありがとな。りんご。余ったらいつでも持ってきて!」

「えー澪にあげるためには持ってきたくないなぁー」

「…じゃあ親宛でもいいから!」

「結果絶対澪が大体食べるんでしょ?」

「~ッいいだろ!別に…」

「はいはい。もしあったら来ますよー。あ、その代わり勉強教えてよね!」

「塾でも行けば?」

相変わらず冷たく返してくるんだな。

私の恋かもしれないことは認めないけど、よくわからない先生とかと一緒に勉強するよりも、澪といたほうが楽しいし?

「えー先生とかといると、楽しくなくなるもーん。しかもここにりんご持ってきてそのまま勉強したら、食べれるし!」

「お前もそれ目当てだろw?」

「wいーでしょ!」

たのしい。二人でいるのが、一緒に笑いあっているのが。

このままずっと続けばいいのに。

────

…家に帰ってきたけど、さっきの感情はなんだったのかわかんないし、気になりすぎる。

恋ってやつなのかな?初めてだしわかんないけど、クラスメイトは結構彼氏?とかいる人も中三になって増えてきたし、話を聞く限り、一緒にいて楽しいって思うことがあるって…。

やっぱり、そうなのかな?

さっきまでは認めたくないっていうか信じられなかったけど、改めて考えてみると思い当たる節が結構ある。

これまで、恋だってことは自覚しなくとも、好きだっていうアピールをしてきたのかもしれない。

でもいつから?澪と出会ったのは幼稚園のころからだし、たぶんその時は、友達として大好き!って意味のことは言ってたかも…。

ちゃんと友達 以 外 として好きだと思い始めたのっていつからだろ?

あ、もしかして、小学校のあの時なのかも

 

─────

「…ハァッ、ね、まってぇ…。」

「__が走るのが遅いのが悪いんだよ!」

「だってぇ…。」

あの頃は澪のほうが足が速かったから置いていかれてたな。

皆で、 3 人 で、ずっと一緒に行動してた。

家もみんな近くて、すぐ遊べる距離だったから3人ともすぐに家にランドセルを置いて遊びに出かけていた。

「今日もここで遊ぼう!」

「えーなんでーいっつも同じじゃん!」

「澪大好きだねーここの林檎畠」

「夏休みとかに来たら林檎を食べてたり、虫がいっぱいいて、いっぱい集められるんだ!誰も来ないから俺の秘密基地なんだ!」

秘密基地なら私たちにも言っちゃだめだよね?

聴こうと思って口を開く前に、

「えーじゃあなんで私たちにも秘密基地を教えてくれるの?」

「えーっとね…。えーっと、えーっと…!大事なお友達だから!」

「そーなの?」

「うん!だから僕たちずーっとお友達ね!」

 

‘‘やくそく!‘‘

 

私と澪のもう一人の幼馴染。

 

元気にしてるかな?

翠(

すい

)__。

小学校五年生の時に引っ越しちゃったから…4年位前かな?

結構経ってるし、めっちゃ背が高くなってたり、かわいくなってたりするのかな?

その時までは、ポストに手紙を入れあうってのが私たちの中ではやってたからもう連絡手段はないけど、またいつか

逢えたらいいな_。

 

なんて…今どこにいるかもわからないのに。

 

また3人で遊びたい。

 

ピンポーン

 

「わ。やばいやばい!」

誰かあの突然な訪問に驚きながらも、バタバタとインターフォンのもとへ走る。

「はーい」

「すみません。宅急便でーす」

「今行きます」

誰のだろ?お母さんのかな?なんかおすそわけでもくれないかな。

自分の名字の印鑑を持ち、近くにあったお母さんのサンダルを履いてカギを開ける。

ガチャ

「はーい」

ドアを開けると帽子を深くかぶった人がいた。

顔は見えないけど、女の人っぽい。

「すみません。初さんっていますか?」

あれ?宅急便じゃないのかな?

「初って私なんですけど…?」

「!」

驚いているような動きをする。

私ってこんな人と知り合いだったっけ?

「え、あの…どなたでs…」

「初!」

「わ、ぶっ」

急にその人が私に抱き着いてきた。

え、ほんとに誰?私知らない人に今ぎゅーってされてるんだけど??

「え、あの、…」

「おい!誰だ?お前」

「あ、澪!」

近くをたまたま通ったであろう澪にたまらず助けを求める。

本当は頼りたくなんかないけど。

「澪?」

その人は澪という言葉に反応して澪の顔を見る。

顔を確認すると澪にも同じように抱き着いていった

「ちょ、!やめ…」

さすがに耐えきれなくなったから、大きい声で言ってみた。

「あの!!誰かは知りませんけど急に何ですか??通報しますよ!」

その言葉を聴くと同時にその人の力が弱まったのか、澪が逃げ出す

「…?あれ?私名前言ってなかったっけ?」

急にきょとんとした顔でこちらを見てくる彼女。

「あ、お名前まだなので、お聞きしてもいいでしょうか…?」

多分大人の女性にすごい失礼なことを聞いてしまったから、敬語で質問をしてみる。

へーこういう時に授業で習った敬語を使うチャンスが来るんだな…。

「もう!何でよけるのかと!嫌われたと思ってたのに…。私、翠!初と、澪の幼馴染だよ!覚えてる??」

翠…?あの…?走るのが遅くて私たちの中で一番背の低かった翠?

「え!?あの翠!?」

「どの翠かは知らないけど…4年前かな?に引っ越した翠だよ!」

「あんなチビだった!?」

澪も私と同様驚いている。

「だぁ~れがチビだって~?」

「wwごめんって!」

「wwやーい澪。怒られてやーんの!」

「こらぁ!初もだからなぁ~!」

「あははwwごめんごめーん」

さっき考えてた通りまた3人で笑いあえる日が来た。

嬉しいな…。

「ww…!お前wやめろよッw!」

澪も楽しそうでよかった。

やっぱり好きな人が喜んでいるところって見ると嬉しいのかな?

久しぶりに3人が集まったからかいつも以上に笑顔だ…。

それとも…。3人が集まったからじゃなくて…、もしかしたら…翠が好きだから…とか…?

いや、いや。ま、まさかね…。

違うと思う。いや、違っていてほしい。違っていることを願いたい。

いやだなぁ…ずっと好きだったかもしれない人が本当は違う人をずっと好きだったらって…

しかもその相手が幼馴染なんて…こんな悲しいことある?

勘違いであることを信じたいよ…

でも、確か、翠が引っ越す前にも確か…

────

「ごめんね。ずっと一緒って言ってたのに…」

「翠が謝ることじゃないよ。仕方ないよ。」

「私たちは離れてても友達だしね!」

本心では泣きそうなほどだったけど、笑顔で別れたかったし、これで一生の別れってことじゃなかったから、えがおでばいばいじゃなくてまたねって言った。

その時澪は、クラスのやつらに馬鹿にされるからってこれまで私たちとはぐ?をしなかったのに、私がたまたま見たときに、二人ははぐしてた。

その時はこんな感情なかったから特に深くまで考えてなかったけど…。

いま、澪に対してこの感情を抱いてる身からしては、思い出して結構心がいたい。

でも、もし叶わぬ恋なら、今のうちに諦めておくっていうのも一つの手かなとは思う。

「ハー…どうしてそんな人に恋心を抱いちゃったったのかな…。」

「…ぇ…ぇ!…う~い!ちゃん!」

「うわぁっ!あ、翠じゃん!どーしたの?ニコッ」

「…べつに~初どした?なんか嫌なことでもあったの?なんでも相談しなよ!」

うげっ…なんでわかるんだろ。しかも一番気づかれたくない人に…

「ん~?なにもないよー?」

できるだけ平然を装って話してみる。もしかしたらこれで何もなかったって思ってくれるかも…

「…おりゃぁー!」

「!ふむっ!?」

なんか急にほっぺ引っ張られたんだけど!?

「ww!にゃにぃ!やぇてぇww」

「言えてないよ~!もう!無理しちゃだめだよ?あと!初隠そうとしても無駄だよ!顔に出やすいんだから。っていうかなんでも頼ってよね!私たち、」

‘‘親友であり幼馴染なんだから’’

嬉しいようで今はあまりうれしくない言葉だった。親友、幼馴染本当はいつでも信頼できて頼りになるようなはずなのに、今回だけは縛られる言葉のように聞こえちゃった。

せっかく翠が励ましてくれてるのに、それに対しても嫌だと考えちゃうなんて。

私って最悪…。

「もー!まぁ~た思いつめたみたいな顔して!ほら!行くよ!」

「おわぁ!」

翠は私の手を掴むと、家の中に連れ込んだ。

澪は何かを言おうとしたのか口を開いたのを見たけど、それよりも翠に引っ張られて何も見えなかった。

…そして今は翠の部屋らしき場所で一対一で向かい合うように座らされている。

もう一つも逃げ場はないようだ。

「…で!なんなの?さっきから悩んでるっぽかったけど、何があったの?」

言い訳…をしたとしても時期に真実を言うときは来るだろう…。

「私が今からすごい問題発言をしても、ひかない?」

翠に変な感じで見られたくないから、一応の保証で言っておく。

「うん!なんでも大丈夫だよ!初のことだから何でも受け入れる!」

さっきまで嫌な感じで見ていたけどいい友達を持ったと思う。

「じゃあ言うよ?誰にも言わないでね?とくに澪!」

「OK!まかせな!」

「私ね澪のこと……好きかもしれない。」

すごい驚いた表情をしたことは少し俯き気味の私の視界の隅でもわかる。

そこから私は経緯を話した。

数日前に家に行ったときにこの感情が芽生えたこと。

3人でいたころの話からいつその感情が芽生えたか考えてみたこと。

そこから……あの、翠が引っ越す前のあの出来事のこと。

私の主観でしかないけど、考えを伝えてみた。

全て言い切って、少し静寂が訪れる。

「…翠……やっぱりごめん。こんなこと言っちゃって。」

「大丈夫だよ。ねぇ初……」

少しいうのをためらっているから、あぁ私の初恋は両想いの間に割り込んでいたから終わりなんだなって思った。

「大丈夫だよ。何を言っても。」

「…わかった。初…勘違いしてるよ…」

「…え?」

意外な返答に一瞬思考が停止した。

ん??勘違い?え、いやどこで?

「え?どこで?」

「…全部だよ。本当、初って天然なのか何なのか…」

呆れたような声色で言われる。

ぜんぶ?

「顔に?がめっちゃ表れてるよ。」

「初はどこからどうして、私と澪が両思いだって考えたわけ?w」

「え、だって引っ越しの時、二人はぐしてたから…」

「wしてないよww多分初が言ってるのは、あれかな?気合い入れてけよ!みたいなときに澪が私の肩をバンッってたたいてた時のことかな?」

「え?肩?」

「そう!もしかしたらなんだけど、初からしたら澪の背中か何かしか見えてなくて、その先で何してたか見えてなかったんじゃない?」

…確かに…それを聞くと別のことが起きていたようにも考えられる…

なにも、澪は純日本人だから、外国みたいに、はぐであいさつをするようなことはないし、もしするとしても、二人の間で恋ができてたとしても、そんな公の場でしないはず…。一応常識人だし…。

ってことは…。

「勘違い!?」

「そうだって!w言ってるじゃん!」

「…はぁぁぁっよかったぁ…」

「wwあははっほんっと初って面白いよね。」

「え…。じゃあさ?翠にはそういう気持ちは一つもないってこと?」

「うんっ!まったく!それは澪に失礼か…wでも大丈夫!安心して」

「告ってきな☆」

すごい怪しい顔なのか何なのか知らないけど、にやにやした?ニコニコした顔でそっと背中を押してくる。

これは翠なりの行って来いっていう合図なのかな?

もう一人の幼馴染にも押されたんだ!

行くしかない!

「ありがと!翠!おかげで勇気が出たよ。行ってくる!」

「wいってらっしゃーい」

勇気が出たと筋肉のポーズをした少女はその後勢いよく立ち上がり、家を出て行った。

その場に残された少女は、出て行った少女の姿が見えなくなると、呟いた。

「明らかに初のことを好きそうな動きをしてたのに。それでもわからないって鈍感じゃんw」

そういい少女が駆けていった方向に手を合わせ瞳を閉じ、頑張れと小さく独り言を言った。

───

「…ハァッ」

もう少しで、澪の家…。」

あの日、恋に気づいた日にも押した、見慣れている、インターフォン。

呼吸を整えながらゆっくりと震える指でチャイムを押す。

あの頃にはまだ降っていなかった雪も降り始め、少し世界が変わっている。

まだ本降りと入ってないが、山や、畑などの開けた場所や人通りの少ない場所には少しながら雪が積もったままである。

心臓がどきどき鳴る。

「はーい」

インターフォンに出たのは澪ではなかった。いつもは名を名乗ることも軽く言えるが言葉が詰まってしまう。

どうしたのかと理由を聞かれたらどうしよう。なんて答えればいいんだろう。

そんなことを考えながらも、今から気持ちを伝える人の名前を言う。

「澪…いますか…?」

恐る恐る。平然でいないと…そういうが心臓は意思に従わない。

「ん?いないよ?少し前初ちゃんの家に行くって言ってからそれっきり帰ってきてないけど…」

いないという言葉を聞いて心臓の揺れが少し収まる。

「え、あ、そうですか。ありがとうございます。では失礼します!」

緊張しているのか知らないけどすごい早口で応答してしまう。

…でも、家にいないんだったらどこだろ、さっき私は家から飛び出してきたけど、家の近くにはいなかった。

最後に見たのは翠と戯れてるとき…。

他に澪が行きそうな所…。

あ、あそこ…。

小さいころからの澪の秘密基地。

私たちにしか教えてくれていない秘密の場所。

絶対あそこだ…。

少し小走りになりながら目的の場所へ向かう。

何で小走りなの?さっきまで緊張してインターフォンさえ押すのにためらってたのに。

今では、緊張もあるけど、早くこの気持ちを伝えたいのかな…。

秘密基地までの細道は人通りが少ないからか雪が積もっている。

そこには少し私より大きめな、靴の跡、歩幅もでかい。

場所はあっていたみたい…。

この気持ちを伝える…。今日で、全て伝えきってしまおう。ここまで来たんだ。

入口の細道をゆっくり歩いていき、林檎畠につく。

そこには見慣れた、人影が見えた。あちらを向いているようで、まだ私には気づいていない。

今更だけど、こういうのって何て言えばいいんだろ…。

私は、あなたが好きです?

ストレートすぎるかな?

ああもう!今更考えても仕方ない!意味は同じなんだから!

伝える。スキを。澪に。

深呼吸をする。外気はもう冷たい。冷たい空気が体内に入って、心の熱を冷ましているように感じ、

ゆっくりと澪のほうへ歩みを進める。

一番大きな林檎の樹の下に澪はいた。

もう少しで手が届きそうなほどの、距離。

子供のころとは違った、大きくなった背中に指先で、つんつんする。

それに反応して、彼は振り返る。

今までいやというほど見てきた顔。なのに今だけは特別に見える。

「ん。どうした…?」

まだ気づいていないのかな?私はここまで苦労して、この気持ちにたどり着いた。

こういうのって言ってもらったほうが嬉しいけど、いいや。澪にはそんなことできないし。

さっきまでは、早く言いたくて仕方なかったのに、今となってはまた緊張が激しくなってくる。

何度も深呼吸をする。それを不思議そうに、いや、何か決意をしたように少年…青年は見つめる。

ふー最後の最後までかっこ悪いまま終わりたくない。

最後だけでも、俺から気持ちを伝えるんだ…

多分ここまで来たんだから、初も同じ…。

覚悟を決めていうんだ!俺!

「あ、あのさ…。」

静寂を切り裂いたのが青年だったことを少し意外そうな顔で青年を見つめる少女。

「俺、初のことがさ…。」

「好きなんだ…。よかったら俺と付き合ってください…。」

青年の顔には言い切ったという安心と言ってしまったという後悔が入り混じっていた。

少女はまだ状況が理解できていないようで、少し固まった様子だったが、我に返り、口を開いた

「私でよければ…。お願いします…!」

青年は開いた口が塞がらないというように…先ほどの少女同様固まっていたが、

「え、いいの?」

といった。

「え?ダメだった…?」

どちらもが抱えている疑問をぶつけあい、少しの静寂の後お互いの顔を見て顔を少し赤く染めながら笑いあった。

白い世界に、頬の赤い青年男女。林檎畠の道は、二人のもとへ向かっていた。

秋の赤い実は、冬でも、二つの赤い実となりできていた。

 

※楓(林檎に彫ったもの)の花言葉

 →『調和』『美しい変化』『大切な思い出』『遠慮』

※雪雫(高校名にて)

 →英訳…スノードロップ(花言葉…「希望」「慰め」「切ない恋愛」)「寒…ッ」

少し早めに、出されたこたつに潜り込み、ぼーっと空を眺める。

例年より早く各地で初雪が観測されるほどの気温。

ここでの初雪はまだだが、今すぐにでも降り出しそうだ。

「さすがにアイツも…」

風邪をひくのも個人の自由。ただの幼馴染の、

「俺には関係ない…か…」

足元から、温かさを感じ始め、だんだんと眠くなり始める。

猫になったらずっと暖かい家の中で過ごせるのにな…

冬がなかったら、ずっと暖かいのにな…

そんなことを眠気にさらわれた脳内で考える。

その家の前で、インターフォンを押すのをためらっている少女がいた。

意を決したかのような表情をし、下を向きながら、何度も見えないままで押す場所を間違えながら、やっとでベルが鳴る。

ピンポーン

明るい音とともに部屋の中にいる少年の目が数ミリでとじそうな寸前で急に眼を見開く。

「チッ誰だよ。わざわざあんな外に…」

「ハーイ…」

ガチャ

「やっほ!澪(

みお

)!」

俺の気持ちとは真逆な明るい声が、ドアが開いた瞬間に聞こえた

少年の顔が少しゆがみ

それと同時に急いでドアを閉めようとする

「え、ちょっ!まって!」

閉める勢いに逆らう力が、強すぎて玄関のドアが大きく開くと同時に外の空気が温かい室内に入ってくる。

「さっむ!」

これまでに聞いたことがないような裏返った声で言葉を発す

「はぁ?まだ十月よ?そんなんじゃ今年生きてけないでしょ!」

「大丈夫ですー。今年は初とは ち が っ て !勉強をしますので、家にいるから大丈夫でーす」

「なんで私と違ってなの!」

「ドアを開ける力が男子より強いバカ力のやつは勉強大嫌いだもんねー?」

起きてから大声を発さなかった口が精一杯の罵倒を浴びせる。

少し俯き、小刻みに揺れ始める。

「あれあれ?勉強ができないことで今更悩んでいるんですか?」

「べっつに?ていうか私も女子なので、しかも中三!立派な女性ですよ??」

「立派な女性は、こんな時期まで、半袖半パンじゃありませーん」

「いいんですー。はぁだるっ!せっかく澪の大好きなリンゴ持ってきてあげたのになー」

その単語を聞き少年の目に少し光りが入る

そういい乱暴につかんだビニール袋を押し付けてくる

夏でもいつでもあんな格好をしているのに雪のように白い手で、

「初(

うい

)の親に感謝です。感謝ー」

「私も持ってきてあげたんだから感謝しなさいよ!」

「はいはーい。寒いからじゃあn…」

ふと初を見ると、顔や耳が赤くなっている。

「?お前寒いの?顔と耳真っ赤じゃん。」

「!!//いいでしょーが」

「風邪ひかれちゃ困る」

手袋も何もしていない冷たくなっている手を掴んで家に連れ込む

「うわあっ!」

バタンッ

────

先ほどの玄関との寒暖差が激しく、

部屋の中が暑いような錯覚が起きる

「…ょ…!…っと!ちょっと!」

「あーごめんどした?」

「手。離してくんない?」

「あ、ごめん。」

先ほどの玄関での言い争いが嘘かのように部屋の中に静寂が流れる。

「何で家に入れてくれたの?どうせ近所なんだから、心配されなくてもすぐ家に帰って暖まれるのに」

…言われてみるとなんでだろ。別にお隣のおばちゃんが来ても寒そうだから家に入れる。とかはないし…。

「…わかんない。」

「あっそ、じゃあもう帰ってもいい?勉強しないとなんだけど」

「え!!!?勉強!?」

さっきまで勉強できないからなーっていじってたやつがそんなことを言い始めるからびっくりした。

「何でそんなに驚くの!?」

「え、いや意外だなーって。」

誰でも驚くだろ。勉強と運動どっちが好きかって問うたら即答で運動って返すやつが勉強をしないとって言い始めたら。

「私も頑張ってるの!目指してるとこあるし」

「あ、そうだよな、ごめん。ちなみにさ、どこ目指してる?」

「デリカシーないね。雪雫高。」

「え、同じ…。もしかしたら来年もお前といるの?」

「嫌ですか??幼馴染と一緒だったら嬉しいもんかと」

普通はそうなのか…初もってこと?俺感覚鈍ってるのかな

「へーそうなんだ。ま、息抜きも大事だから、こたつ入って待ってろ」

「?うん。」

さっき手から奪い取った…貰った、のほうが人聞きがいいか。

りんごを一口サイズに切り分ける

こういうのって兎の形にできたよな…

あとは…花とか?

椛の花が最初に思い付いたから、切ってみた。

秋っぽくていいかも…色合いも…

「わ、下手…。」

理想通りにいかないものだと今更気づく。

まだりんごの季節。秋なんだな。

今でこんなに寒かったら、受験当日は手がかじかんで何も書けないんじゃないか?

「まだぁー。何してるのー」

「あ、はーい」

急いで切り分けたものをお皿に乗せ、向かう。結果工夫したのはあの二つだけだったな。

「一応客人だけど、俺は召使じゃないんだから。」

「へへっいいのいいの~!」

「あ、さっきのりんごだ!え、食べてもいい?」

「食べてもいいから持ってきてるんだよ。さすがに目の前で食うだけは気が引けるしな。」

「飯テロって性格悪いよ。」

「…ま、食えば。」

「あ、いっただきまーす」

一番上にある椛に気づかずそれを手に取り口の中に放り込もうとする。

「ちょっ!それ、模様あるんだよ。頑張った。へたくそだけど…」

りんごを掴む手が止まり、顔の正面に持ってくるとじっと眺める。

「…?」

「何かわかんないよな。下手すぎて」

「椛でしょ?」

「何かわかるし、細かいところまでできるんだねすごーい」

「あ、わかる?よかったぁ…」

なんか褒められると自信作のように感じてきた。

初といると楽しい気がする。

クラスの男友達と話してるときとは違うけど、何か違う感情がある。

…別にいいや。楽しいからな。

こんなことをクラスのやつらに言ったら、馬鹿にされるんだろうなww

らぶらぶーって…。

ぁ…もしかして…俺初のこと…?

あぁ、もういいやそんなこと考えてたら、変な空気になるし。

ってか褒めてもらえたよな!やったね!嬉しい。

こたつの足元のほうを見て小さくよしっといいながらガッツポーズをする少年。

その向かいにいる少女は、隠せてないのになと思いながら、優しく見る。

その表情は親のような優しさではなく、__が、相手が恋しいような表情をしていた。

小さく微笑みながら少女は小さく言う。

「隠せてないのに、面白い…」

その先の感情には気づいていないよう。

あぁ、何で澪といると楽しいんだろう。

今日だってお母さんがここに届けに来る役を自らとってここに来たのに。

インターフォンも小さい頃は当たり前に押せたのに。

りんごって聞いた時のあの嬉しそうな顔も…好き…

……す、好き?

私が?澪に対して?

…そ、んなわけ…な、い…よね?

…最悪。変なこと考えちゃったじゃん。

「どした?初。」

そんなことを考えてた本人に急に話しかけられ、変な声で答えてしまう。

「んぇ?な、なにも?」

明らかな挙動不審だ。怪しまれる。

「へー。そーなの?」

何にも気づいていないようないつもの顔でこちらを向いてくる。

これ、わざとじゃなくて、本当に気づいてないな…

逆にこんなに鈍感なら心配する。

「ありがとな。りんご。余ったらいつでも持ってきて!」

「えー澪にあげるためには持ってきたくないなぁー」

「…じゃあ親宛でもいいから!」

「結果絶対澪が大体食べるんでしょ?」

「~ッいいだろ!別に…」

「はいはい。もしあったら来ますよー。あ、その代わり勉強教えてよね!」

「塾でも行けば?」

相変わらず冷たく返してくるんだな。

私の恋かもしれないことは認めないけど、よくわからない先生とかと一緒に勉強するよりも、澪といたほうが楽しいし?

「えー先生とかといると、楽しくなくなるもーん。しかもここにりんご持ってきてそのまま勉強したら、食べれるし!」

「お前もそれ目当てだろw?」

「wいーでしょ!」

たのしい。二人でいるのが、一緒に笑いあっているのが。

このままずっと続けばいいのに。

────

…家に帰ってきたけど、さっきの感情はなんだったのかわかんないし、気になりすぎる。

恋ってやつなのかな?初めてだしわかんないけど、クラスメイトは結構彼氏?とかいる人も中三になって増えてきたし、話を聞く限り、一緒にいて楽しいって思うことがあるって…。

やっぱり、そうなのかな?

さっきまでは認めたくないっていうか信じられなかったけど、改めて考えてみると思い当たる節が結構ある。

これまで、恋だってことは自覚しなくとも、好きだっていうアピールをしてきたのかもしれない。

でもいつから?澪と出会ったのは幼稚園のころからだし、たぶんその時は、友達として大好き!って意味のことは言ってたかも…。

ちゃんと友達 以 外 として好きだと思い始めたのっていつからだろ?

あ、もしかして、小学校のあの時なのかも

 

─────

「…ハァッ、ね、まってぇ…。」

「__が走るのが遅いのが悪いんだよ!」

「だってぇ…。」

あの頃は澪のほうが足が速かったから置いていかれてたな。

皆で、 3 人 で、ずっと一緒に行動してた。

家もみんな近くて、すぐ遊べる距離だったから3人ともすぐに家にランドセルを置いて遊びに出かけていた。

「今日もここで遊ぼう!」

「えーなんでーいっつも同じじゃん!」

「澪大好きだねーここの林檎畠」

「夏休みとかに来たら林檎を食べてたり、虫がいっぱいいて、いっぱい集められるんだ!誰も来ないから俺の秘密基地なんだ!」

秘密基地なら私たちにも言っちゃだめだよね?

聴こうと思って口を開く前に、

「えーじゃあなんで私たちにも秘密基地を教えてくれるの?」

「えーっとね…。えーっと、えーっと…!大事なお友達だから!」

「そーなの?」

「うん!だから僕たちずーっとお友達ね!」

 

‘‘やくそく!‘‘

 

私と澪のもう一人の幼馴染。

 

元気にしてるかな?

翠(

すい

)__。

小学校五年生の時に引っ越しちゃったから…4年位前かな?

結構経ってるし、めっちゃ背が高くなってたり、かわいくなってたりするのかな?

その時までは、ポストに手紙を入れあうってのが私たちの中ではやってたからもう連絡手段はないけど、またいつか

逢えたらいいな_。

 

なんて…今どこにいるかもわからないのに。

 

また3人で遊びたい。

 

ピンポーン

 

「わ。やばいやばい!」

誰かあの突然な訪問に驚きながらも、バタバタとインターフォンのもとへ走る。

「はーい」

「すみません。宅急便でーす」

「今行きます」

誰のだろ?お母さんのかな?なんかおすそわけでもくれないかな。

自分の名字の印鑑を持ち、近くにあったお母さんのサンダルを履いてカギを開ける。

ガチャ

「はーい」

ドアを開けると帽子を深くかぶった人がいた。

顔は見えないけど、女の人っぽい。

「すみません。初さんっていますか?」

あれ?宅急便じゃないのかな?

「初って私なんですけど…?」

「!」

驚いているような動きをする。

私ってこんな人と知り合いだったっけ?

「え、あの…どなたでs…」

「初!」

「わ、ぶっ」

急にその人が私に抱き着いてきた。

え、ほんとに誰?私知らない人に今ぎゅーってされてるんだけど??

「え、あの、…」

「おい!誰だ?お前」

「あ、澪!」

近くをたまたま通ったであろう澪にたまらず助けを求める。

本当は頼りたくなんかないけど。

「澪?」

その人は澪という言葉に反応して澪の顔を見る。

顔を確認すると澪にも同じように抱き着いていった

「ちょ、!やめ…」

さすがに耐えきれなくなったから、大きい声で言ってみた。

「あの!!誰かは知りませんけど急に何ですか??通報しますよ!」

その言葉を聴くと同時にその人の力が弱まったのか、澪が逃げ出す

「…?あれ?私名前言ってなかったっけ?」

急にきょとんとした顔でこちらを見てくる彼女。

「あ、お名前まだなので、お聞きしてもいいでしょうか…?」

多分大人の女性にすごい失礼なことを聞いてしまったから、敬語で質問をしてみる。

へーこういう時に授業で習った敬語を使うチャンスが来るんだな…。

「もう!何でよけるのかと!嫌われたと思ってたのに…。私、翠!初と、澪の幼馴染だよ!覚えてる??」

翠…?あの…?走るのが遅くて私たちの中で一番背の低かった翠?

「え!?あの翠!?」

「どの翠かは知らないけど…4年前かな?に引っ越した翠だよ!」

「あんなチビだった!?」

澪も私と同様驚いている。

「だぁ~れがチビだって~?」

「wwごめんって!」

「wwやーい澪。怒られてやーんの!」

「こらぁ!初もだからなぁ~!」

「あははwwごめんごめーん」

さっき考えてた通りまた3人で笑いあえる日が来た。

嬉しいな…。

「ww…!お前wやめろよッw!」

澪も楽しそうでよかった。

やっぱり好きな人が喜んでいるところって見ると嬉しいのかな?

久しぶりに3人が集まったからかいつも以上に笑顔だ…。

それとも…。3人が集まったからじゃなくて…、もしかしたら…翠が好きだから…とか…?

いや、いや。ま、まさかね…。

違うと思う。いや、違っていてほしい。違っていることを願いたい。

いやだなぁ…ずっと好きだったかもしれない人が本当は違う人をずっと好きだったらって…

しかもその相手が幼馴染なんて…こんな悲しいことある?

勘違いであることを信じたいよ…

でも、確か、翠が引っ越す前にも確か…

────

「ごめんね。ずっと一緒って言ってたのに…」

「翠が謝ることじゃないよ。仕方ないよ。」

「私たちは離れてても友達だしね!」

本心では泣きそうなほどだったけど、笑顔で別れたかったし、これで一生の別れってことじゃなかったから、えがおでばいばいじゃなくてまたねって言った。

その時澪は、クラスのやつらに馬鹿にされるからってこれまで私たちとはぐ?をしなかったのに、私がたまたま見たときに、二人ははぐしてた。

その時はこんな感情なかったから特に深くまで考えてなかったけど…。

いま、澪に対してこの感情を抱いてる身からしては、思い出して結構心がいたい。

でも、もし叶わぬ恋なら、今のうちに諦めておくっていうのも一つの手かなとは思う。

「ハー…どうしてそんな人に恋心を抱いちゃったったのかな…。」

「…ぇ…ぇ!…う~い!ちゃん!」

「うわぁっ!あ、翠じゃん!どーしたの?ニコッ」

「…べつに~初どした?なんか嫌なことでもあったの?なんでも相談しなよ!」

うげっ…なんでわかるんだろ。しかも一番気づかれたくない人に…

「ん~?なにもないよー?」

できるだけ平然を装って話してみる。もしかしたらこれで何もなかったって思ってくれるかも…

「…おりゃぁー!」

「!ふむっ!?」

なんか急にほっぺ引っ張られたんだけど!?

「ww!にゃにぃ!やぇてぇww」

「言えてないよ~!もう!無理しちゃだめだよ?あと!初隠そうとしても無駄だよ!顔に出やすいんだから。っていうかなんでも頼ってよね!私たち、」

‘‘親友であり幼馴染なんだから’’

嬉しいようで今はあまりうれしくない言葉だった。親友、幼馴染本当はいつでも信頼できて頼りになるようなはずなのに、今回だけは縛られる言葉のように聞こえちゃった。

せっかく翠が励ましてくれてるのに、それに対しても嫌だと考えちゃうなんて。

私って最悪…。

「もー!まぁ~た思いつめたみたいな顔して!ほら!行くよ!」

「おわぁ!」

翠は私の手を掴むと、家の中に連れ込んだ。

澪は何かを言おうとしたのか口を開いたのを見たけど、それよりも翠に引っ張られて何も見えなかった。

…そして今は翠の部屋らしき場所で一対一で向かい合うように座らされている。

もう一つも逃げ場はないようだ。

「…で!なんなの?さっきから悩んでるっぽかったけど、何があったの?」

言い訳…をしたとしても時期に真実を言うときは来るだろう…。

「私が今からすごい問題発言をしても、ひかない?」

翠に変な感じで見られたくないから、一応の保証で言っておく。

「うん!なんでも大丈夫だよ!初のことだから何でも受け入れる!」

さっきまで嫌な感じで見ていたけどいい友達を持ったと思う。

「じゃあ言うよ?誰にも言わないでね?とくに澪!」

「OK!まかせな!」

「私ね澪のこと……好きかもしれない。」

すごい驚いた表情をしたことは少し俯き気味の私の視界の隅でもわかる。

そこから私は経緯を話した。

数日前に家に行ったときにこの感情が芽生えたこと。

3人でいたころの話からいつその感情が芽生えたか考えてみたこと。

そこから……あの、翠が引っ越す前のあの出来事のこと。

私の主観でしかないけど、考えを伝えてみた。

全て言い切って、少し静寂が訪れる。

「…翠……やっぱりごめん。こんなこと言っちゃって。」

「大丈夫だよ。ねぇ初……」

少しいうのをためらっているから、あぁ私の初恋は両想いの間に割り込んでいたから終わりなんだなって思った。

「大丈夫だよ。何を言っても。」

「…わかった。初…勘違いしてるよ…」

「…え?」

意外な返答に一瞬思考が停止した。

ん??勘違い?え、いやどこで?

「え?どこで?」

「…全部だよ。本当、初って天然なのか何なのか…」

呆れたような声色で言われる。

ぜんぶ?

「顔に?がめっちゃ表れてるよ。」

「初はどこからどうして、私と澪が両思いだって考えたわけ?w」

「え、だって引っ越しの時、二人はぐしてたから…」

「wしてないよww多分初が言ってるのは、あれかな?気合い入れてけよ!みたいなときに澪が私の肩をバンッってたたいてた時のことかな?」

「え?肩?」

「そう!もしかしたらなんだけど、初からしたら澪の背中か何かしか見えてなくて、その先で何してたか見えてなかったんじゃない?」

…確かに…それを聞くと別のことが起きていたようにも考えられる…

なにも、澪は純日本人だから、外国みたいに、はぐであいさつをするようなことはないし、もしするとしても、二人の間で恋ができてたとしても、そんな公の場でしないはず…。一応常識人だし…。

ってことは…。

「勘違い!?」

「そうだって!w言ってるじゃん!」

「…はぁぁぁっよかったぁ…」

「wwあははっほんっと初って面白いよね。」

「え…。じゃあさ?翠にはそういう気持ちは一つもないってこと?」

「うんっ!まったく!それは澪に失礼か…wでも大丈夫!安心して」

「告ってきな☆」

すごい怪しい顔なのか何なのか知らないけど、にやにやした?ニコニコした顔でそっと背中を押してくる。

これは翠なりの行って来いっていう合図なのかな?

もう一人の幼馴染にも押されたんだ!

行くしかない!

「ありがと!翠!おかげで勇気が出たよ。行ってくる!」

「wいってらっしゃーい」

勇気が出たと筋肉のポーズをした少女はその後勢いよく立ち上がり、家を出て行った。

その場に残された少女は、出て行った少女の姿が見えなくなると、呟いた。

「明らかに初のことを好きそうな動きをしてたのに。それでもわからないって鈍感じゃんw」

そういい少女が駆けていった方向に手を合わせ瞳を閉じ、頑張れと小さく独り言を言った。

───

「…ハァッ」

もう少しで、澪の家…。」

あの日、恋に気づいた日にも押した、見慣れている、インターフォン。

呼吸を整えながらゆっくりと震える指でチャイムを押す。

あの頃にはまだ降っていなかった雪も降り始め、少し世界が変わっている。

まだ本降りと入ってないが、山や、畑などの開けた場所や人通りの少ない場所には少しながら雪が積もったままである。

心臓がどきどき鳴る。

「はーい」

インターフォンに出たのは澪ではなかった。いつもは名を名乗ることも軽く言えるが言葉が詰まってしまう。

どうしたのかと理由を聞かれたらどうしよう。なんて答えればいいんだろう。

そんなことを考えながらも、今から気持ちを伝える人の名前を言う。

「澪…いますか…?」

恐る恐る。平然でいないと…そういうが心臓は意思に従わない。

「ん?いないよ?少し前初ちゃんの家に行くって言ってからそれっきり帰ってきてないけど…」

いないという言葉を聞いて心臓の揺れが少し収まる。

「え、あ、そうですか。ありがとうございます。では失礼します!」

緊張しているのか知らないけどすごい早口で応答してしまう。

…でも、家にいないんだったらどこだろ、さっき私は家から飛び出してきたけど、家の近くにはいなかった。

最後に見たのは翠と戯れてるとき…。

他に澪が行きそうな所…。

あ、あそこ…。

小さいころからの澪の秘密基地。

私たちにしか教えてくれていない秘密の場所。

絶対あそこだ…。

少し小走りになりながら目的の場所へ向かう。

何で小走りなの?さっきまで緊張してインターフォンさえ押すのにためらってたのに。

今では、緊張もあるけど、早くこの気持ちを伝えたいのかな…。

秘密基地までの細道は人通りが少ないからか雪が積もっている。

そこには少し私より大きめな、靴の跡、歩幅もでかい。

場所はあっていたみたい…。

この気持ちを伝える…。今日で、全て伝えきってしまおう。ここまで来たんだ。

入口の細道をゆっくり歩いていき、林檎畠につく。

そこには見慣れた、人影が見えた。あちらを向いているようで、まだ私には気づいていない。

今更だけど、こういうのって何て言えばいいんだろ…。

私は、あなたが好きです?

ストレートすぎるかな?

ああもう!今更考えても仕方ない!意味は同じなんだから!

伝える。スキを。澪に。

深呼吸をする。外気はもう冷たい。冷たい空気が体内に入って、心の熱を冷ましているように感じ、

ゆっくりと澪のほうへ歩みを進める。

一番大きな林檎の樹の下に澪はいた。

もう少しで手が届きそうなほどの、距離。

子供のころとは違った、大きくなった背中に指先で、つんつんする。

それに反応して、彼は振り返る。

今までいやというほど見てきた顔。なのに今だけは特別に見える。

「ん。どうした…?」

まだ気づいていないのかな?私はここまで苦労して、この気持ちにたどり着いた。

こういうのって言ってもらったほうが嬉しいけど、いいや。澪にはそんなことできないし。

さっきまでは、早く言いたくて仕方なかったのに、今となってはまた緊張が激しくなってくる。

何度も深呼吸をする。それを不思議そうに、いや、何か決意をしたように少年…青年は見つめる。

ふー最後の最後までかっこ悪いまま終わりたくない。

最後だけでも、俺から気持ちを伝えるんだ…

多分ここまで来たんだから、初も同じ…。

覚悟を決めていうんだ!俺!

「あ、あのさ…。」

静寂を切り裂いたのが青年だったことを少し意外そうな顔で青年を見つめる少女。

「俺、初のことがさ…。」

「好きなんだ…。よかったら俺と付き合ってください…。」

青年の顔には言い切ったという安心と言ってしまったという後悔が入り混じっていた。

少女はまだ状況が理解できていないようで、少し固まった様子だったが、我に返り、口を開いた

「私でよければ…。お願いします…!」

青年は開いた口が塞がらないというように…先ほどの少女同様固まっていたが、

「え、いいの?」

といった。

「え?ダメだった…?」

どちらもが抱えている疑問をぶつけあい、少しの静寂の後お互いの顔を見て顔を少し赤く染めながら笑いあった。

白い世界に、頬の赤い青年男女。林檎畠の道は、二人のもとへ向かっていた。

秋の赤い実は、冬でも、二つの赤い実となりできていた。

 


※楓(林檎に彫ったもの)の花言葉

 →『調和』『美しい変化』『大切な思い出』『遠慮』

※雪雫(高校名にて)

 →英訳…スノードロップ(花言葉…「希望」「慰め」「切ない恋愛」)

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