テラーノベル
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最悪の気分
――暗転。
フィクションでよく見る表現が笑えるほど相応しかった、今目の前で起こっていることが非現実的だからなのか。それとも本当に心神喪失にでもなっていたのか。
そんな事はどうでもいい。いや、どうでもいい事を考えるくらい今の私はどうかしている、のか
というのも受験に合格した時にも感じなかった、暴力的なまでのドーパミンの波が脳の判断機能を侵食している。昂る訳では無いが思考が纏まらない、ああ、そう、鈍っている
法廷の冷厳を取り返した空気を肺に満たす度に沸々と何かの感情が湧いてきた。言語化する術を知らない複雑なもの、認めたくないと言えばいいもの
惰性に濡れていた私の脳を刺す歪な肯定感、自分を説得して妥協していた自我をゴミ箱から漁ったことで顕現したそれは留まるところを知らない
それは不快ではなかった、ただ快感とは言いたくなかった
裁判官を殺したことに満足を感じている、むしろ正しい事をしたとすら思えることへの抵抗だった
目線を下すと視界を汚すのは。本来床にあるはずではない物、私の羨望であり理性であり理想である法廷を汚した物、即ち死体。
指先が微弱に痺れる、誰かに操作されている様な心地を手のひらにのしかかっている木槌を振り下ろした時の重みが、潰された肉塊から弾けた異臭を放つ生ゴミの汁が、砕かれた頭蓋の軋む悲鳴が塗りつぶす。
私の有罪を叫んでいる。
ドラマで見るには焦ったり、隠蔽しようとするものだがただ真実がじっくりと染みるのを感じてはただ立っていた。
……あぁ、俺は人を殺したんだな
事実を述べただけだ、そこに罪悪感は無かった
これは本心などでは決して無い、脳内麻薬のせいだ、きっと。
あくまで俺は正しい事をしただけだ
その自己暗示が皮肉なことに見知った陳述と重なるのを知りつつ眼の前の現実にシャッターを下ろした