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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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ナジュミネたちが移動した先は、新築側にある大きな窓があって外が見える大部屋だった。特に使用用途が決まっていないレクリエーション用の部屋で、だいたいは椅子を持ち寄ってゆっくりと話す憩いの場になっている。


「さて、と。ここなら、旦那様とユウの話は聞こえないだろう」


 ナジュミネは椅子をささっと7つ取り出し、それぞれに手渡してからざざっと座る。


「いろいろと気遣えるのがすごいわね」


 リゥパは受け取った椅子に座りながら、ナジュミネを素直に称賛する。


「さすが、姐御」

「さすが、姐さん」


「姐御? 姐さん?」


 コイハとメイリが椅子に座った後に、拍手をする。サラフェは呼び方に違和感を覚えて、不思議そうな顔をする。


「……やっぱり、その呼び方はナシにしないか?」


 ナジュミネはメイリとコイハにそう訊ねてみるが、2人とも首を横に振る。


「決まったことを覆すなんて、ナジュミネらしくないわ」


「うぐっ……絶対に楽しんでいるのだろうが、反故にできぬ妾自身が恨めしい……」


 リゥパが面白そうにからかい、ナジュミネは真面目ゆえにそう言われると何も言えなくなってしまった。


「ま、アイスブレイクも終わったところで」


「勝手にアイスブレイクに使うな……妾の炎で温めてやろうか?」


 ナジュミネが少し怒りの気配を匂わせるが、リゥパは気にした様子もない。


「やーん、怖いー……っと、本題に移りましょうか。サラフェとキルバギリーは言いたいことがあるのでしょ?」


 サラフェとキルバギリーはリゥパの言葉に頷く。その後、サラフェが口を開く。


「……そうですわね。コイハさん、メイリさん」


「…………」

「んー?」


 コイハがサラフェとキルバギリーを睨み付け、メイリは話を進めるためにか、柔らかな態度で返事をする。


「昨日からのサラフェの非道な行いについて、本当にごめんなさい。傷付けてしまったこと、本当に申し訳なく思っています」


「私もサラフェと同罪です。とても申し訳ないことをしました」


「…………」

「別にいいよー」


 メイリはそう言うと決めていたようで返事が早い。コイハは驚きのあまり、目をぱちくりとさせながら、メイリの方を見つめる。


「は? メイリ? 正気か?」


 コイハの問いに、メイリはうんうんと首を縦に振る。


「……そりゃ、痛かったし、死ぬかと思ったし、最初は絶対許すもんかって、僕も思ったんだけどね」


「なら」


 コイハは言葉が続かなかった。メイリが彼女を見つめながら、優しい表情をしたまま首を横に振ったからだ。


「結局、誰も死んでないじゃない? 急に襲撃を受けたけど、何でだか、他の子どもとかにほとんど目もくれずに、僕とコイハを執拗に追いかけてきてさ」


「そりゃ、そうだが……」


 コイハはメイリの話を聞くも納得できない様子で再度サラフェとキルバギリーを見る。彼女たちは沈痛な面持ちでメイリの言葉を聞き逃さないように黙って聞いていた。コイハは再度メイリの方を向くと、メイリが話を続ける。


「それに、それでダーリンに会えたしね♪ たしかに、樹海の偏屈魔王の噂は聞いていたけど、普段は優しくて、あんなにカッコいいし、獣人族とか、半獣人族とかをバカにしていないどころか、お嫁さんに欲しいなんて……一生のうちにそんな出会い、絶対ないもんね。すっごい久々にドキドキしたというか、恋をしているというか」


 メイリの顔がすっかり乙女の顔になる。ムツキを思い出して、彼女の顔が緩んでいる。


「まあ、そりゃそうだけど……しかし、なんでこんな初対面で、その、簡単に受け入れられているんだろうな」


 メイリの話を聞いてから、コイハは自分の心境に正直戸惑っており、彼女自身、なぜこの話をすんなりと受け入れられるかが分からなかった。


「そこらへんの話について、説明しておきたいわね」


「そうだな」


 ナジュミネとリゥパがこれまでの自身の経験などもふまえて、ユウのこと、ムツキのこと、自分たちが今の生活に至ったことを隠さずに説明した。その説明に、残りの4人全員が驚きを隠せない。


「え。つまり、創世神ユースアウィスが俺とメイリとサラフェをハビーのハーレムに入れるために、そういう運命にしたってことか?」


「推測ではあるが、かなりその可能性は高い」


 コイハの疑問に、ナジュミネとリゥパは首を縦に振る。


「それに、僕たちがすぐにダーリンを好きになったのも、女神様の操作もあるけど、ダーリンのスキルもあるの?」


「それもあるってだけ。私もナジュミネもきっとそれがなくても好きになっていたわよ」


 ムツキの友好度上昇、親密度上昇のスキルについても、説明を受けていた。


「そもそも、ムツキさんはユースアウィス様直々の最高傑作?」


「マスターは人族でありながら、神のようなものなのですね」


 ムツキが異世界の魂を基にユウに造られた人族だということも説明した。


「ま、そういうことね。つまり、さっきから言っていたように、女神様のお導き、ってわけ」


 リゥパは最後にそうまとめる。


「はー……神様のワガママかよ……それじゃ、サラフェは無理やり悪役になっただけじゃねぇか……。キルバギリーも似たようなもんだろ」


「だったら、なおのこと、許してあげないといけないんじゃない? それに、一緒のハーレム仲間なんでしょ? 仲良くしなきゃね」


 コイハもメイリも今の話を聞いた後では、サラフェを非難しきれない。むしろ、運命を最も大きく変えられたであろう1番の被害者だとさえ思っている。


「もし仮にユースアウィス様によるものだとしても、サラフェたちはあなたたちを傷付け」


 サラフェはキルバギリーと顔を見合わせた後に、それでも自分たちに非があるような話をし始めた。


「やめろ!」


 サラフェの話を止めたのは、コイハだった。

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