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___なんの取り柄もない平凡な私が、幸せな未来を創れるの?___
〜転生したら霊媒師だった件〜
__「青空がきれいだなあ」五月のある日、学校に行く途中。どこまでも澄んだ青い空を眺めながら、いつもの道を歩く。私は星守 愛梨。中学二年生にしてやんちゃで好奇心旺盛なことを除いたら、どこにでもいる普通の女の子。
「あっ、愛梨!」
声が聞こえて、ぱっと振り返る。 幼馴染の霊元 星汰だ。
「あ、星汰。おはよー。」
「おはよ、愛梨。」
私は、幼稚園の頃からずっと星汰と一緒にいる。家も近いから、学校にはいつも一緒に登校してるんだ。いつも笑顔で誰にでも優しい、自慢の幼馴染なんだよ。
「今日はテストの成績と順位が返される日だよね。」
「わーっ、俺絶対点数低いよ。」
星汰が頭を抱えて言う。
「私もだよー、お父さんに怒られちゃう。」
私は、小学生の頃から勉強が得意な方ではなかった。頭を使って何かするよりも、体を動かして何かする方が、私にとっては合ってるみたいで。
「愛梨の父さんって厳しいよな。」
星汰がぽつりとつぶやいた。私の体がビクッとはねる。あんな低い点数を取ったら、また……。
「…まあ、ね。お父さんもお母さんも厳しいけど……。」
なのに妹には優しいんだよって言いかけて、口を止めた。
「けど、なに?」
星汰が不思議そうに尋ねてくる。
「いや、別に、厳しくするのも私のためなのかなって、思っただけ!」
暗い顔にならないように、笑顔をつくって答える。星汰はまだ、不思議そうにしているけど。
両親は、私にはいつもものすごく厳しい。でも、妹の愛白にはとっても優しい。それは、私には何も取り柄がないのに、愛白はなんでもできるから。自分でも、私のために厳しくしてくれているんだとわかってはいるけど、ちょっと悲しい。
「そっか、ならいいけど。」 「…愛梨、さっきの話するとき、暗い顔してたからさ。」
あ…、やっぱり、バレてたんだ。
「えっ。そうだった?」
とりあえず誤魔化してみる。そんなに顔に出てたかな?
「うん。だからちょっと…ね。」 「愛梨には笑っていてほしいんだ。」
星汰はそう言いながら、悲しそうに笑う。星汰が時々見せる、この悲しい笑顔。それを見ると、なんだか胸がきゅっと締め付けられる感じがするんだ。
「星汰…。」
星汰は小さいときから優しい。困っている人がいたら助けるし、どんなことでも親身になって相談に乗ってくれる。私が両親のことを相談したら、きっと一緒に考えてくれるのだろうけど……。星汰にばかり迷惑をかけるわけにもいかないし。厳しくされているのだって、私が我慢すればいいだけ。
「そ、そういえばさ。真弓さんは? 元気にしてる?」
真弓さんって言うのは、星汰のお姉さん。星汰は、訳あってお姉さんと二人暮らしをしている。
「姉さんは__、うん、元気にしてるよ。」 「…あはは、こないだね、また愛梨ちゃんに会いたいー! って言ってたよ。」
「そっかー。」
「愛梨、最近俺ん家に遊びに来ないね。」
「うん。いろいろ忙しいから時間がなくて。」
昔はよく、星汰の家に遊びに行ってたな。お泊まりしたこともあったっけ。中学生になってからは、星汰と一緒にいる時間も、昔より減った気がする。
「今度遊びに来なよ。成績危ういんだろ?」
少しいじわるそうな笑みを浮かべて、星汰が言う。
「あ、危ういって、ちょっとひどい! …まあ、そうなんだけど。
「今度、俺ん家で一緒に勉強しよ? 俺も、愛梨がいた方がはかどる!」
「えっ。なにそれ。」
星汰にしては珍しいセリフだなあと思いながらも、誘ってくれたことが嬉しい。
「『瑠璃色の星』も、最近読んでないし…、あっ!」
「どうしたの?」
急に大きな声を出されて、びっくりする。
__『瑠璃色の星』は、私と星汰が大好きな小説。この小説の主人公は、「レグルス・モッツァレラ」という魔王様。と、「ツグミ・カマンベール」という、天使様。二人をめぐって事件が起こったり、敵が出てきたり、もちろん、悪役も__
「『瑠璃色の星』のゲームが発売されるんだって。」
星汰が、目を輝かせてそう言う。
「えっ、『瑠璃色の星』のゲーム!?」
何それ、聞いてない! どんなゲームなんだろう……。
「そう。『瑠璃色の星』のキャラクターたちのゲーム。『チェイシング・ザ・スターズ』って言うんだって。」
「ええーっ! うそ、ほしい! 『瑠璃色の星』のゲームだなんて、絶対ほしいに決まってるじゃん!」
私の憧れの、キャラたちのゲーム!? これは、買うしかない!
「あははっ。愛梨ならそう言うと思ってたよ。」「それにこのゲーム、「ルセイ」が主人公なんだ。」
ルセイって言うのは、魔王様が助けた人で、魔王様の従属なの。いつも明るくて前向きで、そう__
…星汰みたいな人。
「ルセイが主人公なんだ、よかったじゃん! 星汰、ルセイのファンだもんね。」
「うん。俺、『瑠璃色の星』のキャラクターの中で、ルセイが1番好き。可愛いところがあるのにめちゃくちゃかっこいいし、仲間思いですっごく優しいから!」
…やっぱり、星汰のことだよ。
「わかる。小説ではあまり目立たない位置づけのキャラだけど、ゲームで主人公になってくれてうれしい!」
ゲームでのストーリー展開は、小説とは少し違うみたい。
小説は、魔王様と天使様が二人で幸せになって終わるんだけど、ゲームは__
主人公も悪役もみんなが幸せでいられるようにって、ルセイが奮闘する話らしい。
「…俺もルセイみたいに、目立った特技はなくても、誰かのために頑張ったり、家族や友達を大切にできる人になりたいなー。」
星汰がそうつぶやいたのを聞いて、私はとっさに行ってしまった。
「星汰は、十分かっこいいし優しいよ?」
ニコッと笑ってそう言うと、星汰はどこかおどろいたような顔をして、ぱっと目をそらした。少し、耳が赤くなっている。
「ほんと? ありがと。」
「うん。」
沈黙が流れる。次に口を開いたのは、星汰だった。
「…え、えーと、愛梨は「アイボリー」が好きなんだっけ?」
「えっ。う、うん。」
アイボリーって言うのは、『瑠璃色の星』の悪役の一人。魔王様と仲の良い天使様のことを恨んで、意地悪しちゃうの。でも、本当は__
「アイボリーは、悪いことをしてしまうこともある悪役だけど、本当は孤児院の仲間を大切にしている優しい人。不器用だけど一生懸命で、周りのみんなに感謝ができる素直でまっすぐなところに惹かれたの。」
「そっか、確かに。アイボリーは主人公ではないけれど、自分の意思と感情を貫いて、いつも光り輝いていたよね。」
「うん。失敗してもめげずに頑張るところや、一つ一つのことに一生懸命になれるところ、どんなことにでも挑戦するところ、アイボリーらしくてすごくいいなって思うんだ。」
アイボリーは悪役。話の最後には、魔王様によって殺されてしまう。天使様の命を奪おうとしたから。でも、私は、アイボリーは本当はそんなことしたくなかったんじゃないかって、いつも思ってしまう。みんなが幸せになれる世界を、つくれたらいいのにって。
「…私も、アイボリーみたいになりたいなあ。 あっ、悪いことはしたくないけどねっ?」
無意識につぶやいたあと、誤解を生まないように慌てて否定する。
「あはは、わかってるよ。」
むーっ、星汰に笑われたー!
「でも、愛梨はすごく頑張り屋さんだし、どんなことにでもチャレンジするでしょ。…たとえ失敗してもあきらめない、アイボリーと同じじゃない?」
星汰にそんなことを言われて、顔が一気に赤くなったのが自分でもわかる。少し悔しい。
「そっ、それは好奇心旺盛なだけだからっ!」
「そうかもね?」
「もうっ!」
星汰ってば、いじわる!
「…あ、学校に着いちゃった。」
私と星汰は、クラスが違う。中庭を挟んで、反対側。次会えるのは、おそらく放課後だろう。
「じゃあ、また放課後ね! 星汰。」
「うん、またね。愛梨。」
そう言って私は自分の教室がある方へ歩いて行った。こんな何気ない日々が、ずっと続くと思っていたのに、
これから、あんなことが起こるなんて__